2日にセブン-イレブン、イトーヨーカ堂等の親会社であるセブン&アイ・ホールディングスが2015年2月決算を発表した。決算内容を見ると、絶好調のセブンと、不振きわまるヨーカ堂の混合であることがわかる。

連結営業利益は前年比1.1%増の3,433億円とわずかながら最高益を更新した。事業別の内訳を見ると、コンビニエンスストア事業の営業利益が前期比7.5%増の2,767億円で会社計画を67億円上ぶれたのに対し、スーパーストア事業は同34.8%減の193億円で会社計画を134億円下ぶれた。金融関連(セブン銀行など)は好調で、前年比5.1%増の471億円であった。

コンビニ業界はセブン一強の様相、打つ手がことごとく当たる

コンビニ業界は、セブン一強の様相を呈している。最近、打つ手がことごとく当たっている。鈴木会長の言葉では「本部主導でない現場主導」の強さが出ている。入れたてコーヒーは、コンビニ各社が一斉に参入したが、セブンの価格設定、セルフサービス方式が最大のヒットとなった。当初、レジで店員に入れてもらう方式をとっていたローソンも、セブンと同じセルフ方式を導入し始めている。

セブンのビジネスモデルの強さは、現場の声・販売データを重視し、需要密着の商品開発を続けていることにある。売れない商品は徐々に販売スペースが縮小し、最後には撤去される。代わりに新しい商品が常に入ってきて、売れればスペースが拡大する。

小売業において、5年・10年の長期に起こる需要の構造変化を、前もって正確に予測することは難しい。セブンは毎日の販売データを見ながら、商品戦略を毎日少しずつ見直していくことで、結果的に5年・10年の大きな構造変化にも的確に対応している。

実際、セブン-イレブンに置いてある商品構成は、過去10年でがらりと変わった。20代の若者が外で食べる商品が減り、代わって40代・50代の女性が家庭食用に買っていく製品を増えている。その効果で、少子高齢化が進む日本で、セブン-イレブンは今でも成長を続けている。

「セブン・プレミアム」の"ブランド"もセブンの強みに貢献

「セブン・プレミアム」というブランドを作り上げたことも、セブンの強みに貢献している。セブン・プレミアムは前年度販売が8,000億円を超え、今期1兆円を目指す。現場の声を重視した商品戦略のブランド化に成功したことが、家庭の主婦層とりこみに効果を発揮している。

セブンの強みは、海外でも通用するビジネスモデルとしたことだ。アメリカのコンビニ子会社(セブン・イレブン・インク)は、日本のセブン-イレブンの経営スタイルを導入することで、営業利益596億円を稼ぐ会社に成長した。2月末時点で、セブンのコンビニ店舗は、国内に17,491店が存在する。これに対し、海外子会社で展開するセブン-イレブンは8,658店ある(うち8,297店は北米のフランチャイズおよび直営店)。これに海外の地域ライセンシー店29,132店を加えると、海外に37,790店あり、国内の2倍以上である(日本以外の店舗数は2013年12月末時点)。

海外展開はファミリーマートも進んでいるが、ファミリーマートは、原則、現地の小売大手と共同出資でコンビニ事業を展開している。そのため、日本のファミマ・モデルをそのまま輸出はできていない。韓国では、共同出資先との経営方針の相違もあり、出資を解消して撤退せざるを得なかった。海外展開も、セブン一人勝ちの様相だ。

では、セブンの経営にまったく死角はないか。兄弟会社のイトーヨーカ堂の経営をどう立て直すかに加え、「第二の創業」と位置づけるオムニチャネル・ビジネスを収益化のめどが今たっていないことが問題である。有店舗販売を中心にビジネスを展開する日本の大手小売業は、最近、通信販売を強化しているが、物流費がかさむ問題やシステム投資負担から、軒並み、赤字を計上している。セブン&アイの事業別利益でも、通信販売は75億円の営業赤字になっている。

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。