「母性とはなにか」を真正面から描いた日本テレビのドラマ『Mother』は、初回視聴率が11.8%だったにもかかわらず、噂が噂を呼び、最終回の視聴率は16.3%まで跳ね上がった。このドラマを見た者は皆、ドラマ撮影時はまだ5歳だった子役、芦田愛菜の神演技に舌を巻いた。

芦田愛菜(あしだ まな)
2004年6月23日生まれ。兵庫県出身。ドラマ『Mother』、映画『告白』へ出演しているほか、3Dアニメーション映画『怪盗グルーの月泥棒 3D』(TOHOシネマズ 有楽座ほかで10月に公開予定)では、声優を務めることも決定している

北海道の小学校教師・奈緒(松雪泰子)は、母親から虐待を受けていた小学1年生の生徒・道木怜南(芦田愛菜)を救い出し、自分が彼女の母親になろうと決意する。怜南は継美と名前を変えて、2人は親子として上京し、逃避行生活を始める。このシリアスな物語が単なる「泣きドラマ」に留まらない名作になったのは、実質的な主役を務めた芦田愛菜の天才的な演技力によるところが大きい。兵庫県生まれの彼女が5歳にして方言を封印してナチュラルな標準語で演技するだけでも凄いのに、感情表現の豊かさは子役の概念を完全に超えている。特に第10話で、奈緒と別れて養護施設で暮らし始めた継美が奈緒に対して泣きながら「お母さん、もう一回誘拐して」と電話する場面は、もはや神の領域だった。

大ヒット中の映画『告白』にも出演している彼女は、今や時の人だ。既に多くの企業やマスコミ、広告代理店が彼女を「第2の加藤清史郎」にするべくウォーミングアップを始めていることだろう。しかし7歳の時に『パパと呼ばないで』(日本テレビ系)に出演して天才子役と騒がれた杉田かおるを引き合いに出すまでもなく、天才呼ばわりされた女性子役がそのまま順風満帆な人生を送り、大女優として成功した例は極めて少ない。逆にドリュー・バリモアのように、どん底を味わった後で再び花開くケースもある。芦田愛菜という才能の塊が今後大成出来るかどうかは、神のみぞ知るところだ。

『Mother』最終回のラストシーンでは、20歳になっているはずの13年後の継美に向けて奈緒が書いた手紙がモノローグで読み上げられる。芦田愛菜が20歳になる2024年。彼女はどんな女性になっていて、日本はどんな国になっているだろう。

真実一郎(しんじつ いちろう)

サラリーマン、ブロガー。ケータイサイト『モバイルブロス』、雑誌『Invitation』などで世相を分析するコラムを連載。アイドルに関しても造詣が深く、リア・ディゾンに「グラビア界の黒船」というキャッチコピーを与えたことでも知られる。ブログ「インサイター

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