社内の会議で、取引先との打ち合わせで、あるいはビジネスレターで、誤った敬語や言い回しを使ってしまった経験はないだろうか。そこで本連載では複数回に分けて、ビジネスシーンで陥りがちな誤用表現などを取り上げていきたい。

失礼を避けようとして二重敬語に陥る

今回、解説する二重敬語は、文字通り敬語を重ねてしまう誤用。ビジネスシーンでは失礼のない言葉遣いを心がけるあまり、以下の例文のような間違いをおかしがちだ。

誤)「山田様が、おいでになられました」

取引先の山田氏が来社したことを告げる、そんな場面。尊敬の表現「おいでになる」に尊敬の表現「~られる」を付け加えて二重敬語になっている。ここでは「おいでになる」だけで尊敬表現が成立していることに注意する。

正)「山田様が、おいでになりました」

同様に、以下の例文も二重敬語になっている。

誤)「資料は、ご覧になられましたか? 」

上記は第2回でも紹介した、尊敬の助動詞を伴う言い回し「ご~になる」と「~られる」の両方を使った二重敬語の例。このほかにも、お会いに / お選びに / お聞きに / お尋ねに / ご相談に+なられる、いらっしゃる / おっしゃる+られる、のような誤用がビジネスの現場では起こりがちだ。

正)「資料は、ご覧になりましたか? 」

ちなみに社長様、部長様など企業の役職に「様」を付けるのも、広義の二重敬語。ビジネスレターであれば、株式会社マイナビ ニュース編集部 部長 山田太郎様のように書く。つまり山田部長様、と書くのは誤用。

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ここまで、ビジネスの現場で誤用されがちな敬語について取り上げてきた。次回は一旦、敬語から離れ、ビジネスシーンに氾濫する”気になる言い回し”について紹介していきたい。