ムツゴロウ動物王国取材レポートの2回目。

今回の記事をまとめるにあたって、ネット上で動物王国について書かれたものを参照してみたが、そのなかにはかなり誤解を含んだ記事が見られた。媒体によっては揚げ足を取るつもりで紹介しているものさえある。そこで今回は王国レポートの続きを書く前に、取材した私個人の観点から、いくつかフォローを入れておきたいと思う。

料金が高い?

動物王国の入場料は大人1,700円。動物を扱ったレジャー施設は1,500円~2,000円という価格帯が標準で、なかには2,000円を超える施設もある。決して動物王国だけが高いわけではないのだが、猛獣・珍獣といった派手な要素があるわけではないのと、公共の動物園の入場料が500円~1,000円程度だったりするので、その点の割高感があるのだろう。

ただ動物たちやスタッフと積極的に触れ合って、自分から楽しめる人にとっては元を取れるところが大きい。動物王国には犬や猫についてのエキスパートが揃っており、ペットの相談から、素朴な質問まで受け付けている。スタッフ側としても「気軽にどんどん話しかけてほしい」とのことなので、遠くから黙って見ているだけでは非常にもったいない。こちらから活用してこその動物王国と言える。ちなみに子供料金は大人の半額以下の700円で、冬季の割引期間になると破格の400円となる。全体的に子供料金は割安なので、遠足向きとなっている。

都心から遠い?

公式サイトなど媒体によっては「東京ムツゴロウ動物王国」と記載されている。確かに動物王国は都内にあるのだが、郊外のあきる野市という立地が、「東京」という近場っぽい響きを裏切る印象があるのかもしれない。いっそもっと遠ければ、旅先の観光地として割り切れるのかもしれないが、八王子駅からバスで30分という距離は、都内の人からすれば、微妙に近くて微妙に遠い。

もっとも郊外だけあって車の利便性は高いのだが、その場合は1,200円という駐車料金がちょっと高かったりする。この駐車場は併設されている東京サマーランドの管轄なので、動物王国側で自由に裁量できるものでもないのだとか(年間パスポートかドッグラン・プチの会員になれば半額にはなる)。動物王国を訪れる際はちょっとそこまで……というよりも牧場や登山に行く感覚でスケジュールを立てたほうがいいだろう。なお当たり前のことだが、関東圏から北海道の動物王国(原則非公開)に行くよりは、はるかに近いことも書き添えておく。

ムツゴロウさんがいない!?

「動物王国にはいつもムツゴロウさんがいる」と思っている人はやはり多いらしい。面白おじさんとしてムツゴロウさんがメディアに紹介されることが多いため、実際に会ってみたいというファン心理も十分わかるのだが、ムツゴロウさん自身は執筆活動や対外活動で多忙なため、やはりなかなか動物王国に来る時間が取れないのだとか。ムツゴロウさんは動物王国のシンボルだが、主役はあくまで動物たちだということをあらかじめ理解しておくべきだろう。

そのムツゴロウさんの代わりと言ってはなんだが、動物たちはみんなムツゴロウ流にのびのびと人懐っこく育てられているので、おなじみの「よーしよしよし」はしたい放題。それからムツゴロウさんの来園日は公式サイト上でもアナウンスされているので、希望者はそちらをチェックするのをおすすめする。

以上3点、ほかの紹介記事から少し抜け落ちている印象があったので補足してみた。実際に来てみると、動物王国はレジャー施設としてはかなり規格外だ。もともとが北海道の原野でムツゴロウさんが行った、動物たちとの共同生活からスタートしているだけあって、動物園やペットショップが手がける施設とはだいぶ印象が異なっている。想像以上に北海道らしい、おおらかな場所なのだ。王国内に牛はいないが、動物園というよりは、むしろ酪農や放牧といった人間と動物との暮らしを、楽しみながら考えるための施設と言うべきだろう。

そのことを象徴しているのが、石川百友坊に続いて訪れたグッドライフ館。ここでは老犬や老猫のほかに、介護が必要な動物が飼われており、子犬や子猫も何匹か集められている。生まれてから死ぬまできちんと面倒を見るという王国の方針をもっとも端的に示している場所だ。取材に訪れたときも、ペットの悩みを相談しているお客さんの姿が見られた。

動物たちの保育園と養老院を兼ねたグッドライフ館。ちなみに担当の上辻さんは一青窈似のお綺麗な方でした。写真がなくて申し訳ない

事故で後足が曲がってしまった猫の翼。前足を使って器用にヒョコヒョコ歩く。かわいそうだと気に病むのはどうも人間だけらしい

※動物王国ではペットの引き取りを行っていません。飼えなくなった動物を持ち込んだりしないようお願いします。

取材中、足元をカリカリ引っかいていたピレネー犬のピノ。ここでは動物たちと人間の距離がものすごく近い

ここを担当するスタッフ、上辻さんによれば、もしタイミングが合うようならば、お客さんにも動物の出産や臨終に立ち会ってもらうようにしているのだとか。館内にはここで息を引き取った動物たちの骨壷も置かれている。動物を飼うことがきれい事ではないと理解するための、貴重な場所なのだ。

グッドライフ館の周りに広がる青の広場では、毎日お昼に犬とのゲーム大会が行われる。子供たちはもちろんのこと、お母さん方もなかなか楽しそう

お客さんも参加してのボールキャッチ競争。奥のほうでは、前回の記事にも登場した山本さんちの犬がヘタってます

さて次回はついに(?)馬に乗ります!