改めて思うリスク管理の重要性

改めて説明するまでもないことだが、リスク管理は大切だ。9月末に、米国で金融安定化法案が否決されてから、マーケットは混乱状態に陥っている。その後、修正案によって金融安定化法案は可決されたものの、時すでに遅し。株価は大暴落し、米ドルも売り込まれた。ユーロ / 円や豪ドル / 円などのクロス円にいたっては、もう成す術がないような暴落ぶり。状況が落ち着くまでには、まだかなりの時間が必要だろう。さて、これだけ相場が激しく上下すると、改めて思うのがリスク管理の重要性だ。

相場は一旦、下げに転じると、アッという間に下げてしまう。たとえば豪ドル / 円のチャートを見ると、いかに下げ足が速いかということが、よく分かるはずだ。

10月7日時点で、1豪ドル=74円近辺まで豪ドルは売られているが、これは2004年6月以来、実に4年と4か月ぶりの水準。つまり、4年4か月という長い時間をかけて階段を上ってきた豪ドルだが、それがアッいう間に崩れ落ちてしまった。直近の戻り高値は、7月22日の1豪ドル=103円98銭。それがわずか2カ月半くらいの間で、1豪ドル=74円近辺までの下落。あっという間に過去の貯金をはたいてしまったことになる。

それだけ、マーケットにはロング(買い持ち)の投資家が多いということなのだろう。市場参加者の多くがロングという状況の下で下げが本格化すれば、損失が最小限のうちに逃げようとする。そうなれば、損失確定の売り物がどんどん出てくる。こうした動きに付いていけなかった投資家は、強制ロスカットの水準まで追い詰められてしまう。ここまで来てしまうと、もうリカバリーはほとんどできない。当然、強制ロスカットが執行され、それが更なる売りを呼びこむ。10月に入ってからの、豪ドルをはじめとしたクロス円の大暴落は、まさにこうしたメカニズムによるものだ。

このような事態に巻き込まれずに済む方法はあるのだろうか。

正直、いつ大暴落するかがわかっていれば、誰も損をせずに済む。しかし、そのような未来予知能力のある人間などいない。せいぜい出来るのは、被害を最小限に抑えられるような保険をかけておくことくらいだろう。

被害を最小限に抑えるために、今すべきこと

まず、レバレッジの問題。確かにレバレッジは、儲けを大きくしてくれる魔法のつえだが、使い方を間違えると、大きな損失につながる。せいぜい、個人投資家が耐えきれるレバレッジは、2~3倍程度だろう。ここ最近の豪ドルの値動きを見る限りでは、2倍でも高いかも知れない。とにかく強制ロスカットの状態に追い込まれるようなことだけは、避けたいところだ。そのためには過去の値動きをチャートでチェックして、最悪の水準まで円高が進んだとしても、ロスカットにならないようなレバレッジでエントリーすることが肝心だ。

次に損切りを覚えること。相場は今日ですべて終わるわけではない。ずっと続いていくものであり、いつか必ずチャンスが来る。今、もしアゲインストのなかでポジションを持って我慢しているのであれば、一度、損切りをして、再びチャレンジする。

ただし、行きつくところまで行って損切りをするのは意味がない。損を挽回するのが困難だからだ。自分の過去の戦績を見て、3日くらいで取り戻せるくらいの損失が生じたところで損切りをする。一時的にお金が減ったとしても、「3日あれば取り戻せるだろう」という気持ちになれれば、気分も軽く済むはずだ。

そして、最後に外貨で使うことを考える。FX会社のなかには、現受けシステムを用意しているところがある。これは、立てているポジションに見合うだけの現金を入れることで、外貨のキャッシュを手に入れるという方法だ。これを海外旅行で使えば、為替リスクなど気にせずに済む。ただし、巨額のポジションを持ってしまうと、現受けはかなり非現実的な話になってしまうので、そこを念頭においてポジションを取る必要がある。

もし、損失が生じたら、それをどこまで最小限に抑えられるのか。それでも損失が拡大してしまった時、何かほかにリカバリーする手はないのか。この辺をしっかり考えたうえで取引に臨むことが必要だ。

JOYnt代表 鈴木雅光氏プロフィール

主な略歴 : 1989年4月 大学卒業後、岡三証券株式会社入社。支店営業を担当。 1991年4月 同社を退社し、公社債新聞社入社。投資信託、株式、転換社債、起債関係の取材に従事。 1992年6月 同社を退社し、金融データシステム入社。投資信託のデータベースを活用した雑誌への寄稿、単行本執筆、テレビ解説を中心に活動。2004年9月 同社を退社し、JOYntを設立。雑誌への寄稿や単行本執筆のほか、各種プロデュース業を展開。