イタリアの地ビールを紹介するイベント「Salone della Birra"artigianale e di qualita"(サローネ・デッラ・ビッラ"アルティジャナーレ・エ・ディ・クアリタ"、ビールの展示会"地ビールとその品質")」については前回さらりと紹介したが、ここからはいよいよ本格的にレポートをするとしよう。まず会場に着くと、入場料5ユーロ(167円=1ユーロとして835円)を支払い、次にビアグラス(容量約230ml)と"グラスホルダー"と呼ばれるグラスを首から下げておける布製のポケットを1ユーロで購入。このグラスホルダーはワインの試飲会などではかなり普及しており、両手がふさがらないのでおつまみの皿なども持ちたい時には非常に便利な代物だ。これで準備万端、いよいよ飲むぞ!

イベントには51のブルワリーが出展しており、それぞれのブースが会場をぐるりと囲むように配されている。ビール以外にパニーニなどの軽食販売もあり、なんとジャズライブも行われている。日本のビアフェスティバルの場合、大抵はビール何杯分かのチケット、もしくは飲み放題、グラス付きといった内容の前売り券(または当日券)を購入するシステムなのに対し、こちらはどれも1杯1ユーロ。わかりやすいといえばそうなのかもしれないが、ビールを購入するたびにお財布をバッグから出したりしまったりするのは、非常に面倒である。……グラスホルダーを手にした時は、「これでパニーニ食べながらビールが飲める!! 」と浮き足立っていたが、グラスホルダーを売っている本当の意味は「お財布の出し入れがしやすいように」ということなのであろうか。しかし、2年前のスペイン・バルセロナで引ったくりの被害に遭ったことから、個人的にラテンの国での金銭管理にはやや敏感になっている。それに、ビールを飲んで酔っ払ったような状態では、金銭の管理能力にも自信が持てない。このシステムに関しては、ぜひ改善していただきたいものである。

手に持っているのがビアグラス。首から提げている黒い袋がグラスホルダー

ジャズライブも楽しめるちょっぴり贅沢な雰囲気の会場

実はイタリアのビールだけではなく……

会場にはカラフルなテントや屋台が集まっていて、見ているだけでも心弾む。会場内をよく見ると、紹介しているのはイタリアビールだけではなかった。さすが外国と地続きのヨーロッパ。お隣ドイツのラガーやベルギービール、そしてペールエールやブラウンエールなどの英国スタイルといったように、ありとあらゆるタイプが揃っている。「このブルワリーはドイツタイプ」「あのブルワリーはイギリス」などと1つのブルワリーが1つのスタイルに固執しているわけではなく、個々のブルワリーが上面発酵・下面発酵(第3回参照)も問わない複数のスタイルのビールを造っているケースが多い。そういう意味では日本のマイクロブルワリーも同様であるが、醸造機器や技術、そして原料となるモルトやホップが近国から手に入るイタリアは、費用面でも鮮度面からしても圧倒的に日本より有利な環境にある。

同じブルワリーでも様々なスタイルを造っている。写真左から「IPA(イギリス)」「ゴールデンエール(イギリス)」「ヴァイツェン(ドイツ)」

そんな土地柄であるから、ヨーロッパスタイルの確立は比較的容易であったと想像するが、日本では造り手も消費者側も傾倒する者の多いアメリカンエールはさすがに浸透していない、……はずだった。さて、イタリアにおけるアメリカンエールの位置づけやいかに!?