【コラム】

東大発ベンチャー現役CFOが教えるデットファイナンス入門

5 金融機関による違い

 

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前回は、融資に関与するプレイヤー(公官庁・信用保証協会・金融機関)によって融資条件が変化することを説明しました。今回は金融機関を大まかに分類しながら、融資の条件面でどのような特徴があるのか解説します。

借り手の実務的な観点から金融機関を分類した場合、大きく分けて4グループあると考えます。(1) 都市銀行、(2) 地方銀行、(3) 信用金庫・信用組合、(4) 政府系金融機関です。政府系金融機関については、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫(商工中金)とで特徴が異なるので、分けて説明します。

(1) 都市銀行

融資の金額面で最も大きなポテンシャルを有します。1,000億円単位の融資のニュースが流れるため、大口でないと話ができないイメージがあるかもしれませんが、実際には100万円単位の融資も実行していただけます。

融資の期間は、例として運転資金を融資で調達するケースでは標準で1年、実績を積めば長くて7年という話を伺ったことがあります。上場企業で業歴が長く事業規模も大きければ、劣後ローンで期間が60年という事例も存在します。

(2) 地方銀行

2017年時点における肌感覚ですが、金利面で都市銀行と比較して低利の条件提示が多いイメージです。期間の面では、運転資金の借入期間は標準で3年、長くて10年と聞きました。より長期で検討していただける点が魅力的だと思います。

(3) 信用金庫・信用組合

ある信用組合の理事長が講演で、「融資金額は1,000万円まで頑張る、それ以上は銀行へお願いしてください」と発言していました。小ロットで審査期間が短い、小回りの利く融資を提供しています。小ロットであるが故、事務コストを反映して金利は高くなる傾向があります。

融資に付随する出費として、出資金が必要になります。先述の理事長は「最初は1,000円でも10,000円でも良い、取引金額が大きくなれば融資金額の1%でお願いしたい」と仰っていました。ひとつの目安になるかと思います。

(4.a)日本政策金融公庫

中小企業にとって「最後の貸し手」となる金融機関です。用途に応じて様々なメニューが用意されており、金額面においても金利面においてもバリエーションが豊富です。低利の制度がある一方で、都市銀行や地方銀行がベンチマークとする短期プライムレートよりも高い利率の制度もあります。

取引口座を作成できないため、融資された資金は他の金融機関の口座へ振り込まれます。

(4.b) 商工組合中央金庫(商工中金)

融資を受ける際、商工中金の指定する組合に加入することが条件となります。加入時に必要な出資金は、概ね10万円前後です。日本政策金融公庫と異なり、取引口座を開設し資金決済ができます。長期の資金を得意としている印象を筆者は持っています。

上記の差異の他に、借り手の経営破綻時の処理、つまり返済不能となった際の対応が、金融機関毎に異なります。いわゆる「借金の棒引き」、債務の減免措置です。サービサーと呼ばれる債権回収会社があることはご存じでしょうか。

企業から債権を買い取り、資金を回収する事業者です。詳しくは全国サービサー協会のWebサイトをご参照ください

前回解説したプロパー融資は、借り手の破綻時にサービサーを利用することがあります。三條慶八氏の『あなたの会社のお金の残し方、回し方』によれば、金融機関からサービサーへの譲渡価格は債権額の3%前後だろう、とのことです。そして、サービサーがどのくらいの金額を回収するかといえば、一般的に5%から15%と紹介されています。プロパー融資であれば、経営破綻時に債務が減免される余地があると言えます。

信用保証協会を利用する制度融資と保証付き融資は、サービサーを利用しません。個人保証ありの日本政策金融公庫からの融資も、サービサーを利用しません。減免措置がないという事です。

日本政策金融公庫からの融資は、民間金融機関が断るようなケースにおいても借入できる可能性がある反面、失敗時の減免措置がなく返済がシビアになることを念頭に置かなければなりません。この点においても、前回解説した資本性ローンの制度の特異性が際立つと思います。

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融資の金融機関による違いの説明は以上です。次回は、融資の申込時に提出する書類について解説します。

※写真と本文は関係ありません

執筆者プロフィール:千保 理(せんぼ ただし)

株式会社情報基盤開発 CFO(最高財務責任者)

ロンドン日本人学校中学部、東京学芸大学教育学部附属高等学校、東京大学運動会バドミントン部を経て、東京大学大学院経済学研究科修士課程企業・市場専攻修了。専門は企業金融(コーポレート・ファイナンス)。生命保険会社のシステム子会社にて勤務した後、東京大学発IT系ベンチャー企業である株式会社情報基盤開発にCFOとして参画。Microsoft Innovation Award 2015にて勤務先が優秀賞を受賞した際のプレゼンター。融資による資金調達を得意としている。

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インデックス

連載目次
第9回 赤字の状況下で融資を受けるための条件
第8回 融資を受ける資金の使途
第7回 融資を申し込む金融機関の探し方
第6回 融資の申込時に提出する書類
第5回 金融機関による違い
第4回 融資の商品による違い(関与するプレイヤーによる違い)
第3回 出資と融資の違い
第2回 融資の概要
第1回 はじめに

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