MVNOのIIJmioが第4回目となるIIJmio meetingを開催した。まず、東京会場で実施されたあと、その1週間後に大阪会場で実施される予定となっている。ここでは、8月2日に開催された東京会場での様子をレポートしよう。

東京・飯田橋駅前の真新しいビルに本社を移転して間もないIIJだが、今回は、ユーザーおよび、IIJmioに興味を持つユーザー約100名が集まってミーティングが始まった。

今回のミーティングプログラムには、初心者向けセッションが設けられ「みおふぉん教室」としてMVNOやSIMといったことに詳しくない参加者に向け、スマホ料金節約のポイントについて解説された。

そのあとは、トークセッションとして、「みおふぉんでVoLTE端末は使えるの?」、「MVNOと事業法を巡る最新動向」という2つのプログラムが用意され、IIJの中の人がプレゼンテーション、そして、それに引き続き、会場からの質問や意見などを受け付けるフリートークが繰り広げられた。

VoLTEとMVNOの関係については、検証の結果、IIJmioでも使えるということが明らかにされた。VoLTEは、LTEを使った通話で、これまでよりも高音質な通話ができるというものだ。具体的には、周波数特性が、これまでの300Hz~3.4KHzから、50Hz~7KHzとなり、低域、高域ともに周波数特性が拡がる。

IIJはドコモと相互接続を行っているが、音声については卸契約だ。したがって、音声通話については、すべてドコモの施設内で完結する。

今回、ドコモがVoLTEのサービスを開始するに当たり、サービス内容の改正があり、通話モードについては「音声その他の音響の伝送を行うためのもの」となり、これまであった「回線交換方式により主としておおむね3kHz」の音声という記述が消えている。これは、音声の伝送のために回線交換方式が使われるとは限らないことを意味する。つまり、VoLTEもサービスの対象となるわけだ。

ちなみに、VoLTEの利用においてデータ通信は無関係で、仮に、スマートフォンのデータ通信がオフになっていてもVoLTEの使用には影響がないという。ただし、ビデオコールはできなかったとも。これは、MVNOへのサービスの提供内容にビデオコールが含まれていないからであるとのことだ。

なお、ドコモのVoLTEを解析した結果、ドコモのVoLTEはIPv6によって実現されていることがわかったという。IPv6のアドレスが使われ、それらがまったく経路情報がなく実現されていることが明らかにされた。

事業者視点では、周波数や設備の利用効率改善につながるVoLTEサービスだが、そのためにはLTEエリアの拡大が必須で、今なお、3Gに頼るエリアが少なからず残っているドコモのネットワークが取り組まなければならないテーマであるとした。

このあと、話題は事業法に移る。事業法というのは「電気通信事業法」のことだ。この法律ができたのは1984年暮れだ。つまり、今年は30周年にあたる。この法律によって、民間企業が通信の媒介をすることが可能になり、かつての電電公社は1985年にNTTとして民間企業になった。いわゆるNCC(New Common Carrier)と呼ばれる事業者が出てくるきっかけともなったもので、現在の通信事情を左右することになる重要な法律だ。

今、通信関連の話題が数多く世の中を騒がせているが、それを見ると、何らかの理由で総務省が何かを急いでいることがわかる。IIJでは、その理由として、今年は電気通信事業法の見直しの年であり、11月には答申をまとめ、来年1月に通常国会が始まり法律が改正されることになるだろうという。今年のスマートフォン業界のニュースの傾向をピックアップ「総務省多いですよね」「なぜこんなに今年は総務省が頑張っているのか」「何を頑張っているのか」と参加者の興味をあおった。

今年のスマートフォン業界のニュースの傾向、総務省関連が多い

さらに「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」によって、「2015年までにブロードバンド利用率100%を目指す」という「光の道構想」が議論されるようになったが、それは3年たったら、その内容をもう一度見直して検討されることになっている。2010年の基本方針(リンクはpdf)では、精度整備の実施後3年を目処に、その有効性・適正性について、包括的な検証を行うことになっている。そろそろタイムリミットだ。すでに2011年には日本電信電話株式会社等に関する法律、いわゆるNTT法も一部改正(リンクはpdf)され、NTT、NTT東西が行う業務について、現行の認可制が、事前届出制となっている。

光の道構想

また、IIJは、「日本再興戦略」についても来年中に結論を得るとしているといったことにも言及し、それらのための包括的検証が各方面で懸命に行われているところであり、総務省の情報通信審議会 2020-ICT 特別部会 基本政策委員会の活動として、

  • (事業者の)グループ化や寡占化に対応した競争政策の在り方
  • MVNOの更なる参入促進を通じた多彩なサービスの提供
  • 超高速ブロードバンド基盤の高度化・低廉化・強靱化
  • 市場の環境変換を踏まえたNTTグループへの規律の在り方
  • 利用者ニーズに適した多様なサービス、多様な料金体系の実現
  • 利用機会が確保されるべきICT基盤の在り方
  • 安心してICTを利用できる環境の整備
  • 訪日外国人にとっても利用しやすいICT基盤の実現

といったことが、電気通信事業法見直しの全体像(リンクはpdf)として紹介された。2013年に政府から「日本再興戦略」が発表され、情報通信審議会においてもその検討状況を公表(リンクはpdf)、その中で「料金低廉化・サービス多様化のための競争政策の見直し」として、「NGNのオープン化やモバイル市場の競争促進を含めた情報通信分野における競争政策についての検証プロセスを本年末から開始し、今年度中に検討課題を洗い出す。この結果を踏まえ、電気通信事業法等の具体的な精度見直し等の方向性について、来年中に結論を得る」とされている。

日本再興戦略と電気通信事業法

こうした活動の一環としてIIJもそのメンバーである一般社団法人テレコムサービス協会内に設置されたMVNO委員会では「MVNOの事業環境の整備に関する政策提言」(リンクはpdf)を公表し議論した。そして、SIMロック解除やクーリングオフ、本人性確認と青少年保護といったテーマが引き続き議論されている。

電気通信事業法の見直し体制

電気通信事業法見直しの全体像

包括検証と電気通信事業法改正スケジュール

いずれにしても、電気通信事業法30周年を機に、いろいろなことが変わること、そして、変えるために、総務省を含む各方面がさまざまな作業を急いでいることがわかる。これは、来年以降、われわれの暮らしの中で、何か大きな変化が訪れることを意味する。

いわば、電気通信事業法2.0。30年前にこの法律が1.0としてできたことで通信が自由化され、

  • 電子メールが使えるようになった
  • モデムを使えるようになった
  • 量販店で電話機が買えるようになった
  • 電話会社を選べるようになった

などなど、枚挙に暇がない。それが今の環境にどれほどの変化を与えたか。

なお、フリートークの中では、5月31日に配信されたiPadの「キャリア設定(キャリアプロファイル)のアップデート」を適用したiPadでは、インターネット共有(テザリング)が利用できなくなったことへの質問に対して、IIJmioとして、この状況は、電気通信事業法にも反するものであり、とうてい許せるものではないと、ドコモを名指しで批判するとともに、その改善を要求していく意志を明らかにした。

次のIIJmeetingは、秋に予定されているという。さまざまな進展がありそうなだけに楽しみだ。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)