【コラム】

あいつ、資産形成はじめたってよ!

3 アセット・ロケーション時代

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最近、新聞やテレビで「ニーサ」とか「イデコ」といった言葉を聞くようになりました。もしかすればInstagram、Facebook、Twitterでもそうした言葉がつぶやかれることも多くなったのではありませんか。これ、ご存知ですか。一言でいえば、「非課税投資のための口座」ということになります。

投資を行うと儲けたり、損したりします。もちろん儲けが出ればその儲けに対して税金を払わなければなりません。今は儲け分の金額に対して20%の税率がかけられ、それに復興特別所得税を上乗せされて20.42%の税金を納めなければなりません。長く投資をすることで損失を出す可能性は小さくできるといわれますが、その分儲けが出れば税金を多く支払うことになります。ただ、超高齢社会では若い人たちを中心に資産形成がこれまで以上に必要だとされていますので、こうした資産形成層のためには、その税金を免除しようというのが「非課税投資」です。そして、そうした資産形成を中心にした投資を進めるために作られた口座が、少額投資非課税制度、NISA(ニーサ)や個人型確定拠出年金、iDeCo(イデコ)なのです。

非課税口座がたくさん誕生

NISAがスタートしたのは2014年です。iDeCoは以前からあった制度なのですが、2017年に公務員の方や第3号被保険者、いわゆる専業主婦の方も加入できるようになってから急に注目されるようになりました。さらに2018年には積立投資に限定した非課税口座、つみたてNISAもスタートします。

これらの口座の違いを簡単に説明します。まずNISAは、年間120万円までの資金なら投資からもたらされる儲けには税金が掛かりません。ただし、その非課税期間は投資をした年から数えて5年間だけです。iDeCoは掛け金の上限が職種や、会社が導入している企業年金の種類によって違ってきますが、自営業者の場合で年間81.6万円、専業主婦で年27.6万円、公務員の場合で年14.4万円です。iDeCoのいいところは、この掛け金が所得控除の対象になる、すなわち年間の所得から差し引かれるので、その金額に対して徴収された所得税が戻ってくるのです。これはNISAにはないメリットです。また投資の儲けに対してもNISA同様に税金はかかりません。ただ、60歳になるまで引き出せない制度ですので、この点はNISAと比べて自由度が少ないように映るかもしれません。反面、非課税期間が60歳までと考えれば、若い人ほど長い非課税期間があるとも言えます。それは大きなメリットでもあります。

つみたてNISAは普通のNISAが5年間しかなかった非課税期間が20年に延びました。ただ投資上限は年間40万円と普通のNISAの3分の1になっていますので、投資金額が少ない人向けには使いやすい制度になります。なお、注意しておかなければならないのは、普通のNISAとつみたてNISAは選択制になっていますから、どちらかを選ぶと、もう一つは使えなくなります。

4つの配分が大切な時代に

こうした資産形成のための口座がたくさん登場したことで、われわれはどんなことを考えなければならないでしょうか。

お金と長く付き合うためには、資産を複数に分けて管理することが必要だとよく言われます。それをうまく考えるためには、4つの配分に関する決めごとに整理することでわかりやすくなります。アセット・ロケーション、アセット・アロケーション、アセット・リバランス、アセット・リアロケーションの4つなのですが、その意味をわかりやすくするために、少し強引ですが具体的にまとめてみました。

(1) アセット・ロケーション(資産の置き場所)
-どの口座にどれだけの資産を配分するかを考えること
(2) アセット・アロケーション(資産クラスの配分)
-どの資産クラスにどれだけの資産を配分するかを考えること
(3) アセット・リバランス(資産クラスの配分復元)
-価格変動などで崩れた資産クラスを当初の配分に戻すこと
(4) アセット・リアロケーション(資産クラスの配分の見直し)
-ライフステージの変化に合わせて資産配分を見直すこと

専門家に任せられる投資信託

整理できたといはいえ、考えなければないことが分かった分、これでは「やっぱり資産形成は難しくてやりたくない」と思うことになりかねませんね。でも、もう少し説明させてください。そもそも何から何まですべて自分でやろうとすると大変ですが、例えば投資信託を使うことで、その作業のかなりの部分を専門家に任せることができるのです。

そもそも投資をする場合には、例えば個別の株式を自分で選んで、その保有比率を考えて、といったことが必要となりますが。これをすべて専門家に任せるのが投資信託です。さらに個別の銘柄の選別だけではなく、例えば株式とか債券といった資産クラスや、国内とか海外とかといった地域毎の資産の配分などを考えてくれるのが、バランスファンドと呼ばれる投資信託です。しかもこのバランスファンドは、その資産の配分比率が市場の動向で変ってしまった場合には、自動的にある資産を売却して他の資産を買い付けて、元の配分比率に戻すといった調整もしてくれます。先ほど説明した、(2)アセット・アロケーションと(3)アセット・リバランスの2つを考えてくれるのがバランスファンドというわけです。

さらに自分の年齢の変化に合わせて自動的に資産の配分比率そのものを変えてくれる投資信託もあります。例えば、若いうちは投資期間が長くありますから、多少変動が大きくても長期的に儲けが大きくなるような投資対象を選びたいですし、退職近くになって引き出す時にはできるだけ現金に近いものに変わっている方がいいわけです。特にiDeCoのように60歳から引き出すことが目的になるような資産の場合には、引き出す時にある程度、安心資産に自動的に切り替わっている方が市場の変動の影響を抑えられます。これが(4)のアセット・リアロケーションといわれるものです。 この3つの機能、(2)アセット・アロケーション、(3)アセット・リバランス、そして(4)アセット・リアロケーションの3つを任せられるのが、ターゲット・デート・ファンド(TDF)といわれる投資信託です。

アセット・ロケーションが大切な時代に

こうして考えると、4つのポイントのうち、2つまたは3つを任せられる投資信託という金融商品が若い人の資産形成には適しているものだということがわかります。しかし、どうしても自分で考えなければならないのが一つ残りました。それがアセット・ロケーションです。アセット・ロケーションは資産形成でまず最初に考えるべきことで、言い換えると「税制をうまく使って何のために資産形成するか」を選ぶことです。これは「資産形成の目的を選ぶこと」にもっとも近い意思決定ですから、実はこれだけは自分で決めなければならないのです。

新しい非課税投資のための口座が次々に登場してくるなかで、まずはどの口座を何のために使うのかを考えることから始めましょう。

執筆者プロフィール : 野尻 哲史(のじり さとし)

フィデリティ退職・投資教育研究所 所長
国内外の証券会社調査部を経て、2006年フィデリティ投信株式会社に入社、2007年より現職。アンケート調査をもとに個人投資家の資産運用に関するアドバイスや、投資教育に関する行動経済学の観点からの意見を多く発表している。日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会・生活経済学会・日本FP学会・行動経済学会会員。著書には、『老後難民』、『日本人の4割が老後準備資金0円』(講談社+α新書)や『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』(明治書院)などがある。調査分析などは専用のHP、資産運用NAVIを参照

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インデックス

連載目次
第5回 資産運用、やらないリスクとやるリスク
第4回 どこまで辛抱できるか
第3回 アセット・ロケーション時代
第2回 いつから資産形成を始めるか
第1回 親に頼りなさい

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