一般的に恋人同士は深い仲になればなるほど、お互いの‘こだわり’をぶつけあうようになる。例えば味噌汁の味や目玉焼きにかけるのはソースか醤油かなど、今までまったく違う人生を歩んできた二人それぞれの‘こだわり’をぶつけあい、双方了解のもと二人だけの新しいルールを作るわけだ。

中にはそこで喧嘩するカップルもいる。僕の友人に「トーストは苺ジャムじゃないとダメ!」とブルーベリー派の彼女と口論になり、思わず殴ってしまって振られた男がいたが、それぐらい彼は苺ジャムにこだわりがあったのだろう。二種類買えばいいだけのことだと思うのだが。

しかし、僕にはそういったこだわりがほとんどない。味噌汁の味が濃くても薄くてもどっちも好きだし、目玉焼きなんかソースであろうが醤油であろうがケチャップであろうがマヨネーズであろうが、黙って食べるのが美徳だとすら思っている。

その他、デート中の店選びや車中の音楽、お風呂の湯加減、テレビのチャンネルなど、恋人同士に付き物のあらゆる選択肢が僕にしてみれば「どっちでもいいこと」である。彼女が好きなように決めればいいし、僕はそれに合わせるだけなのだ。

大体、僕は一人で行動していても「どっちでもいい」って思うことばかりだ。ファーストフードで「店内で召し上がりますか? お持ち帰りなさいますか? 」って聞かれたときも「どっちでもいいです」と答えてしまい、店員さんを戸惑わせたことがあったし、タクシーで「どちらまで? 」と聞かれたときも「どこでもいいです」と答えてしまい、その場で降ろされたことがあった。何となくどこかに行きたい気分だったのだが、どうやら伝わらなかったようだ。

従って自分で言うのもなんだが、僕と付き合う女性はかなり好都合だと思う。こだわりを彼女に押し付けるなんてことは絶対にしないし、彼女の好きなようにしてくれれば何の問題ない。彼女色に染まることは、僕にしてみればたやすいことなのだ。

しかし、そんなこだわりの無さがゆえ、彼女を困らせてしまうこともある。

特に食べ物。僕はあまりに何でも食べてしまうところがあり、冷蔵庫に入っていれば賞味期限切れでも平気で口にしてしまうのだ。

つい先日など、ポン酢に賞味期限があることを初めて知ったぐらいである。今まで当たり前のように使っていたポン酢のラベルに「賞味期限2007年10月」って書いてあったのにはさすがにびびった。よく今まで腹を壊さなかったものだ。

また、拾い食いに至ってはもはや僕の癖といっても過言ではない。

部屋の床に落とした食べ物は渇き物であろうが何であろうが、無意識のうちに拾って食べるし、以前道路に落としたカラアゲくんを思わず拾って食べてしまい、通行人の子供に「あっ、食った!」って指差されたこともあった。そう言えば子供の時、蟻が運んでいた飴をパクって食べたこともあったなあ……。あの時の蟻の反応は面白かったぞ。一斉にザワザワしたもん。焦ったんだろうね。ごめんなさい。

や、もちろん汚いって頭ではわかっているつもりだ。今までの彼女にもことごとく注意されてきたし、そのたびに「もう辞めよう」って心に誓っている。しかし、僕の場合、拾い食いはもはや頭で考える前に体が反応しちゃう領域なのだ。いつも食べてしまった後に「しまった! また食べちゃった! 」って気づくほどだもん。

従って、昔の彼女に「犬を飼っているみたい」って言われたことがある。

「こらっ、落ちてるもの食べちゃダメって言ったでしょ! 」

「ああ、また食べちゃった! ごめええええんん!! 」

こんなやりとりが普通に繰り広げられるわけだから、彼女もさぞ頭を抱えたことだろう。僕のこだわりの無さは、彼女してみれば自分の生活スタイルを変えなくて良い反面、傍から見ていて心配になることも多々あるらしいのだ。

でも、トイレの躾はちゃんとできてるぞ。

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