「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」が11月1日~2018年1月8日、六本木ヒルズ・森アーツセンターギャラリー(東京都港区)で開催されている。現代アーティスト28組により、それぞれの才能の中で新たに生み出された『ドラえもん』は、まさに圧倒的な個のアート。その驚愕の世界へと足を踏み入れてみた。

村上隆さんのドラえもんの世界。「製作開始まで半年ほど悩んだすえの作品」とのこと(『公式図録』より)

「あなたのドラえもんをつくってください」

1970年に『小学4年生』(小学館)に掲載されて以来、多くの子どもたちに愛されてきた『ドラえもん』。しかも、当時の子どもたちから生まれた子どもたち、つまりは今現在の子どもたちも夢中になって漫画を読み、アニメや映画を見ているという、スーパーロングランな全世代的存在となっている。今の40~50代以下、全ての人たちが「ドラえもんを見て育った」と言えるという、一種奇異な位置を保ち続けているわけだ。

「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」が15年ぶりに開催!

「あんなこといいな 出来たらいいな」(村上隆さん)

今回の展覧会は、現代アーティスト28組に「あなたのドラえもんをつくってください」という依頼のもとに表現されたもの。15年前に開催された「THEドラえもん展」の続編となっている。アーティストの年齢は20~60代、ジャンルは絵画、水墨画、彫刻、写真、映像、書など様々だ。これまで、それぞれに見て・感じてきたドラえもん作品は異なるだろうし、作品を見返して新しいインスピレーションを得たアーティストもいるようだ。

アーティストに課せられたテーマは「あなたのドラえもんをつくってください」

28組のうち、奈良美智さん、蜷川実花さん、福田美蘭さん、村上隆さん、森村泰昌さんの5人は、15年前に引き続きの出品となっている。前回の作品も並べて展示されているため、今回のものと見比べてアーティストの15年の軌跡を感じてみるのも面白いだろう。

左が村上隆さんの15年前の作品

見どころが多すぎて目移り必至!

本展は、「あなたのドラえもんをつくってください」というテーマの中で、さらに2つのパートに分かれている。ひとつが、すでに高い評価を得ている現代アーティスト16組へ課せられた「ドラえもんをテーマにした作品」、もうひとつが、新進気鋭のアーティスト12組への「ドラえもん映画37作品の中からひとつを選んでの作品」だ。

「ドラえもんをテーマにした作品」のひとつである「しずかちゃんの洞窟(へや)」(鴻池朋子さん)。牛皮にクレヨンでドローイングされている。右下の毛皮は『四次元ポケット』なのだそう

「のび太やドラえもんなど、みんな目を閉じているけれど、しずかちゃんだけ目を覚ましている」と語る鴻池さん。巨大で独特な雰囲気に魅せられる

鴻池さんの映像作品「ドラえもんの歌 on 森吉山」。雪の中に埋まってドラえもんの歌を熱唱している。「最後に『ドラえもーん!』と叫んでもドラえもんは来てくれませんでした(笑)」とのこと

映画をテーマにした作品には、それぞれインスピレーションの元となった映画の一場面もあわせて展示されている。「そうそう、このシーンあったよね!」などと語り合いながら作品を見ていけば、いっそう楽しいひとときとなるだろう。

作品とともに展示されている映画の一場面

いずれも、とにかくアーティストのこだわりはすごい。開催前の内覧会で、数人のアーティストの話を聞くことができたのだが、「昨日、展示されてからもさらに描き足した」「まだ表現しきれていない部分がある」と語るなど、作家魂は果てしない。「あ、ドラえもんの絵だ」と通り過ぎずに、その一筆・一刀に込められた作家の深みをじっくりと見て回ってほしい。

また、実は今の時点では未完成の作品もあるという。何度か訪れれば、徐々に出来上がっていく様子を見ることができるかもしれない。

作品「星霜」について語る町田久美さん。作品は"線"で描かれているように見えるが、"点"の集合で描かれているという。町田さんは前日まで描き続けていたひとり

「ドラちゃん1日デートの巻 2017」(蜷川実花さん)

「ドラちゃんは全世界の女子たちの理想の男性像なのでは?」とのことから「1日デート」なのだそう

「時を駆けるドラス/空を越えるドラス」「二~四次元ドレス」(森村泰昌さん+コイケジュンコさん)

森村泰昌さん(&ザ・モーヤーズ)の15年前の作品

「ドラえもん ひみつ道具図典」(伊藤航さん+山口英紀さん)

「私の家のドラえもんの写真」(梅佳代さん) 一緒に描かれているイラストもじっくり見よう

伊藤さんがペーパーアートを製作し、それを山口さんが水墨で描いた

映像作品「かくれんぼ」(佐藤雅晴さん)

「OPTICAL APPARITION(光学を用いた幻体)」(西尾康之さん) プロジェクションマッピングで動きのある作品となっている。この作品は背後も見逃せない!!

「To the Bright ~のび太の魔界大冒険~」(篠原愛さん)

「人魚とツノクジラとキャラクターたち、それぞれの質感の違いを楽しんでもらえたら」と篠原さん

作品「ときどきりくつにあわないことするのが人間なのよ」とともに立つ近藤智美さん

「僕らはいつごろ大人になるんだろう」(坂本友由さん)

しずかちゃんの足元を良く見ると……ドラえもんの頭が!! 「そんなところにいていいのか(笑)」と、本展の監修者である山下裕二さん

本展は、展覧会には珍しく写真撮影が可能とのこと。全作品を掲載した『公式図録』(2,700円)の中で、藤子プロ社長の伊藤善章さんは「撮影できた方が楽しいと思いまして」と話す。ちなみにこの公式図録には、作品だけでなく、全アーティストへのインタビューや、藤子・F・不二雄ヒストリー、原作コミックス「ロボットがほめれば…」、さらに「ひょうろんロボット」の付録まで付いている。なかなか読みごたえがあり、筆者的にオススメだ。

グッズ&コラボメニューも見逃せない

展覧会の最後にはショップがあることがお決まりとなっているが、本展のショップは見どころのひとつと言えるだろう。先ほどの公式図録のほか、アーティスティックなオリジナル・ドラえもんグッズが並んでいる。

アートな手ぬぐい「しりあがり寿」(1,296円)

「タケコプターヘアバンド(大人用)」(1,007円)

また、会場に隣接するカフェ「THE SUN」では、妙にかわいいコラボメニューを食べることができる。会期中のみの販売となるため、せっかくならば立ち寄ってみたい。

これは欲しい!「アンキパン de クロックムッシュ」(1,380円)

「タケコプターバーガー」(1,380円)

「タイムマシンのフルーツタルト」(1,380円)

「ライチフローズンカクテル お空の散歩」(950円)

「どこでもドアパフェ」(1,380円)

「メッセージデザートプレート ~あなたのドラえもんを描いてください~」(1,480円) 出展アーティストと同様に、自分なりのドラえもんを描いて写真を撮れるというコンセプト。ドラえもんが大好きなどら焼き付き!

「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」は、ドラえもんにプラスアルファした不思議な世界観でいっぱいだ。その独特な空間を体験しに訪れてみてはいかがだろうか。

「ドラえもんがいてくれたらと、今日も思う」

information
THE ドラえもん展 TOKYO 2017
開催期間: 11月1日~2018年1月8日※会期中無休
開館時間: 10時~20時(火曜日は17時まで)※入場は閉館の30分前まで
場所: 森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
観覧料: 一般1,800円、中学生・高校生1,400円、4歳~小学生800円

※価格は全て税込

筆者プロフィール: 木口 マリ

執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスに綴ったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。