富士通およびレノボ・グループは2日、2016年10月から交渉が進んでいたPC事業の提携について、ついに最終合意に至ったことを発表した。

右から順に、富士通クライアントコンピューティング 代表取締役社長の齊藤邦彰氏、富士通代表取締役副社長 CFOの塚野英博氏、富士通代表取締役社長の田中達也氏、レノボ・グループ・リミテッド 会長兼CEOのヤンチン・ヤン氏、レノボ・グループ・リミテッド エグゼクティブバイスプレジデント兼CFOのワイミン・ウォン氏、レノボ・グループ・リミテッド シニアバイスプレジデント兼アジアパシフィック地域プレジデントのケン・ウォン氏

富士通の100%子会社である富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が、株式の過半数となる51%をレノボに、5%を日本政策投資銀行(DBJ)に譲渡。これにより、FCCLをレノボ、富士通、およびDBJの合弁会社とする。株式譲渡は2018年度第1四半期を目途に行い、富士通が受け取る譲渡価額は合計で280億円(約19億香港ドル、内、レノボ255億円、DBJ25億円)。

合弁会社となった後もFCCLの社名は変わらず、また、引き続き富士通ブランドのPCを提供する。代表取締役社長には現FCCL代表取締役社長の齋藤邦彰氏が就任し、経営陣にも変更はない。

レノボ、富士通、DBJによる新体制

交渉の話が上がった2016年10月から、1年以上を経過して最終合意を迎えた。レノボと富士通は合同で、都内で緊急会見を実施。登壇した富士通代表取締役社長 田中達也氏は、提携の背景について、「2016年のFCCL設立から、さまざまな成長方向を模索してきた」とコメントし、今回、「富士通とレノボのシナジー(相乗効果)が最も効果的となるよう協議し、合意に至った」と説明した。1年以上の長きにわたり交渉が難航した理由は、2社のシナジーをどう出すのか、顧客視点で細部まで徹底的に議論したためだとする。

富士通代表取締役社長 田中達也氏

レノボの調達力と富士通の技術力でタッグ

レノボと富士通、両社のシナジーとは何か。田中社長は、富士通においては、レノボのグローバルな部材調達力を挙げる。田中社長は「富士通の技術力に自信を持っている。自社が30年培った製造力に加え、レノボの調達力を加える。これにより富士通のブランド力が強化され、国内外のユーザーに魅力的な製品を提供できる」とアピールした。

一方で、レノボ・グループ・リミテッド シニアバイスプレジデント兼アジアパシフィック地域プレジデントのケン・ウォン氏は、提携のメリットとして国内外での機会拡大を目指すという。同じく会長兼CEOのヤンチン・ヤン氏も、グローバルおよび日本市場におけるPC事業の強化を強調。特に、製品だけでなく、両社で研究開発を進め、成長が見込める日本のPC市場を拡大していくとした。

レノボ・グループ・リミテッド 会長兼CEOのヤンチン・ヤン氏

レノボ・グループ・リミテッド シニアバイスプレジデント兼アジアパシフィック地域プレジデントのケン・ウォン氏

レノボとFCCLの今後の目標、方向性

国内PC拠点の統廃合は「一切なし」

富士通はPCの国内製造拠点として、FCCL傘下の島根富士通(島根県)と、富士通自体の傘下となる富士通アイソテック(福島県)の2つを持つ。デスクトップPCやサーバは、富士通アイソテックで製造されており、FCCLがレノボ傘下となった後も、これらの製品はFCCLからのアウトソーシングで(これまでと同じく)製造されるという。

国内でPC事業を展開するNECパーソナルコンピュータ(NECPC)も、同じレノボ傘下のPC事業者だ。NECPCは山形県米沢市に開発生産拠点の米沢事業場を、群馬県太田市に保守サポート拠点の群馬事業場を持つ。加えて、レノボ自身も、設計・開発拠点である大和研究所を神奈川県に持っている。

会見では各社・各拠点の住み分けにも話が及んだが、レノボ側は会社や工場の統廃合は「一切ない」と断言。ケン・ウォン氏は「富士通がビジネスを継続することでスケールメリットを活かせる。(NECPCと富士通の)両社がイノベーティブな製品を出すことで、ユーザーは製品を選択でき、市場が拡大する」と、工場の統廃合を完全に否定した。

富士通クライアントコンピューティング 代表取締役社長の齋藤邦彰氏

富士通クライアントコンピューティング 代表取締役社長の齋藤邦彰氏は、今回の提携を「統合ではない」と言い切った。FCCLのPC事業が強化され、世界屈指のベンダであるレノボとのコラボレーションにより、エンドユーザーにより魅力的な製品が提供できるとする。「今後も最先端のデジタルテクノロジーでグローバルなユーザーの需要に応える。新生FCCLはその一翼を担う。2社のシナジーにより市場の伸びに期待したい」(齋藤氏)。

笑顔で握手を交わす富士通代表取締役社長の田中達也氏(右)と、レノボ・グループ・リミテッド 会長兼CEOのヤンチン・ヤン氏(左)