SF映画の金字塔の続編『ブレードランナー 2049』(10月27日公開)を引っさげて来日したハリソン・フォードを直撃! 本作でハリソンが35年ぶりに演じたリック・デッカードは、『スター・ウォーズ』のハン・ソロ、『インディ・ジョーンズ』のインディアナ・ジョーンズと並ぶ映画史に名を刻む人気キャラクターだ。

ハリソン・フォード

本作は、フィリップ・K・ディックの小説を基に、人造人間であるレプリカントと、彼らの犯罪を追う捜査官ブレードランナーとの死闘を描くSFアクション映画。ハリソン・フォードが前作に続いてブレードランナーのデッカードを、ライアン・ゴズリングが主人公のブレードランナーKを演じた。

監督は『メッセージ』(16)でアカデミー賞監督賞にノミネートされた鬼才ドゥニ・ヴィルヌーヴで、『ブレードランナー』の世界観を見事に受け継ぎ、圧倒的なビジュアルと、巧みなストーリーテリングにより、愛の物語をさらに昇華させた。今回、ハリソン・フォードはどんな思いで、本作に向き合ったのだろうか。

――インディ・ジョーンズ、ハン・ソロに続くデッカードの復活劇に映画ファンは歓喜しました。長年ずっと第一線で仕事をし続ける秘訣について聞かせてください。

僕は仕事が好きなんだ。仕事をするにあたり、何かにチャレンジしたり、何かを生み出したりする作業自体が好きだ。常に新しいことをやりたいし、自分自身でいろんな問題について考えたりもしたい。そういうことをしなくなると、人間は年をとるものさ。

――ライアン・ゴズリングを含め、若いキャストと共演した印象を聞かせてください。

みんな野心的だし、演技のスキルもちゃんと持っている人たちだった。そういうキャストと仕事ができて楽しかったよ。特にライアンはずっと注目してきた俳優で、彼のキャリアを見てもいつもチャレンジングだし、彼の生き方自体も賞賛に値するよ。

――35年ぶりにデッカード役を演じてみて、役に向き合う気持ちは変わったりしましたか?

何も変わってないよ。僕たち俳優の仕事はストーリーを物語るアシスタントに過ぎないから。演じるキャラクターに責任を持ち、お客さんに伝わるように演じるだけだ。それは今も昔も変わらない。

――35年前に比べて、テクノロジーの変化は感じましたか?

テクノロジーは毎日進化しているよ。ビジュアルエフェクトが昔と比べると高度化している。でも僕はそういう技術面にはあまり関心がなく、むしろキャラクターとキャラクターの関係性に興味を注ぐタイプだ。

ただ、テクノロジーが進むことで、演じる環境作りが整ってくるのは、俳優にとってはとてもありがたいことだ。観客は映像を観ただけで半分は理解できるから。そういう意味で、僕たち俳優はとても助けられていると思う。

――クライマックスでは、“水攻め”に遭う過酷なシーンがありました。体力的にきつそうでしたが、実際にやってみていかがでしたか?

あのシーンでは、何週間も水に入ったよ。撮影のない日もあったから、一旦戻ってきてまた撮るという感じで、決して楽な撮影ではなかったよ。でも、普通に仕事をするよりは楽なんじゃないかな。僕は毎日オフィスに通うような仕事なんて耐えられない。俳優の仕事はそういう仕事に比べたらとても楽しいよ。毎日いろんなことができるから。

しかもそこまで大変な撮影ではなかったよ。撮影で入るのは温かいお湯だし、雑菌が入っていないかちゃんとテストもしているし、ウエットスーツも着ている。寒くなったら入れるようにと、熱いお風呂も用意されているんだ。僕らは甘やかされて撮っているので、そんなに悪くないよ。

――前作で結ばれたデッカードとレプリカントのレイチェルが、その後どうなったのかが本作で描かれます。2人は未来を想像していたのでしょうか?

オリジナル版が面白かった点は、2人のその後については、観たお客さんが考えるような作りになっていたところだ。それがフィルムメーカーの意図だった。

レイチェルとデッカードが出会った時、2人は未来のことなんて考えていたはずがない。普通の人間だったら、子どもがいる未来のことを考えるし、成功したいとも思うし、こっちがダメならこっちにという選択の自由もある。でもあの人たちにはそういう自由がなかったんだ。

――『ブレードランナー』の2作は、あなたのキャリアにとってどういう位置づけの作品になりましたか?

うーん(しばらく考え込む)。僕はそういうことを考えないというか、関心がないんだ。なぜなら、お客さんのために映画を作っているから。自分のキャリアにとってその作品がどういう存在になるのかなんてことは考えないよ。

まあ、言ってみれば靴屋と同じさ。ただ靴を作るだけ。ステッチの1つ1つを考えて作るけど、それは自分にとってどういうものになるのかということは全く考えない。ただ、自分はお客さんのために靴を作ればいい。ただそれだけのことに過ぎない。