10月23日から25日まで、神奈川県横浜市の「パシフィコ横浜」にて、「FileMakerカンファレンス2017」が開催されている。初日は天候の影響もあったものの、大勢の参加者により賑わっている。
ビジネスの効率アップに欠かせない存在へ進化
米FileMaker, Inc.は米Apple社の100%子会社であり、30年以上の歴史を持つ老舗のソフトウェア企業だ。以前は「クラリス」という社名で個人向けの生産性アプリ(クラリスワークス、MacPaint、MacDrawなど)を販売していたが、現在はデータベースソフト「FileMaker」シリーズに注力している。
そのFileMakerだが、世界で100万以上のユーザーを抱え、iOS用クライアント「FileMaker Go」は今年6月までに300万ダウンロードを達成するという人気データベースだ。データベースというものの、現在は単なるデータベースというよりも、企業などで業務環境を効率化・改善するためのカスタムソリューションの開発プラットフォームとして注目されている。
FileMakerカンファレンスは、こうした開発プラットフォームとしてのFileMakerのさまざまな開発情報や公認デベロッパーと出会う貴重な場として毎年開催されている。
今回のカンファレンスは、これまで東京都内で実施されてきたものが、初めてパシフィコ横浜に会場を移しての開催となる。品川駅から電車で20分程度とはいえ、都内での開催ではない上に、当日早朝まで台風21号が通過したことによる影響で交通の乱れもあったため、筆者としては来場者の出足を危惧していたのだが、開場までには天候もすっかり回復し、久々の青空の下、多くの参加者が集まった。
初日に開催されたオープニングセッションは、1,000人以上を収容するメインホールがほぼ満員になる盛況ぶり。ファイルメーカー株式会社のビル・エプリング社長により、今年導入されたFileMaker Cloudなどの新施策が好調であることが紹介されたほか、米FileMaker, Inc.のプロダクトマネージャであるロバート・ホルジー氏から将来のバージョンのスニークプレビューが行われた(内容についてはNDAのため割愛)。
カンファレンスでは数カ所に分かれて講演や技術的な発表が行われるほか、ショウケース会場では公認デベロッパーを中心としたスポンサー企業によるミニブースの展示や、ミニステージでのプレゼンテーションも行われている。例年は比較的狭い通路を使ってのショウケース展示だったが、今回は会場が広くなったため、余裕のあるスペースでゆっくりとブースでの説明を聞くことができる。
PFUブースではドキュメントスキャナーの特売も行われていた。隣の第一コンピュータサービス/アットデルブースではスキャンした文字(手書き文字含む)のOCRソリューションを紹介しており、組み合わせることで真価を発揮する |
FileMaker Proは今年6月にバージョン16が登場したばかりだが、長い歴史のあるソフトだけあって、機能的にはかなり充実している。前述したように販売も好調であり、日本でもかなり浸透してきている。その影響か、オープニングセッションでも新機能の紹介より、業務環境の改善や効率アップといった、FileMakerを導入することによるメリットが例年よりも強調されている内容だったと感じられた。
FileMakerの長所として、柔軟で開発が容易なことが挙げられるが、そうは言っても具体的にどうすればいいかは、なかなか分りにくいものだ。だが、実際に会場で紹介されている事例を見ていると、通常の業務システムのように、仕様に合わせて開発されたものをお仕着せで使うというのではなく、実際の利用者である従業員が中心になり、問題を解決しながら開発・改善を進めていくというスタイルで、本当に使えるシステムが構築されている例が意外なほど多いことがわかる。それも中小企業などだけでなく、巨大な航空会社のパイロット教育プロセスなど、重要なシステムに利用されているのだ。小さなシステムから巨大なシステムまで、スケーラビリティの高さもFileMakerの魅力だ。
現在、政府が中心となって「働き方改革」として業務の効率化やIT化を推進しているが、なかなか具体的にどうすればいいかわからないという人も多いだろう。そんな方はぜひ、そのヒントを探しに、FileMakerカンファレンスに足を運ぶことをお勧めしたい。きっと素晴らしいソリューションとの出会いが見つかるはずだ。