アクアは10月5日、コインランドリー機器の新製品として、ICカードなどに対応するマルチ端末と、新型ランドリー機器を11月上旬から発売し、12月からは「AQUA次世代Cloud IoT ランドリーシステム」を順次展開すると発表した。

「AQUA次世代Cloud IoT ランドリーシステム」のラインナップ。左の白と青の端末がIoTマルチ端末の「HIC-MT10」

共働き世帯の増加や家事時短ニーズ、清潔志向の高まりなどを背景に、コインランドリーの利用者増が顕著になり、スタイリッシュな外観と内装を備えた店舗が増えている。

実は国内のコインランドリー店舗数は以前からずっと伸び続けており、1993年度は約1万店だったものがこの20年で1.5倍以上に増え、今年度は約18,000店、2020年度には20,000店に届く勢い。

このコインランドリー市場で、圧倒的な存在感を持つのがアクアだ。アクアは三洋電機のコインランドリー事業をそのまま引き継ぎ、現在では国内コインランドリー市場の機器台数において約75%ものシェアを握っている。

日本のコインランドリー店舗数の推移(アクア調べ 2015年度)

三洋電機は1971年に国産のコイン式洗濯機を国内で初めて投入して以来、ハードウェアの製造・販売だけでなく、コインランドリーの運営についてもトータルでコンサルティングしてきた。アクアはこのノウハウを引き継ぎ、さらにクラウドを載せたのが、「AQUA次世代Cloud IoT ランドリーシステム」といえる。

ネットワークに繋がるアクアの洗濯機を導入しているコインランドリーは、日本国内に1,600カ所。21,000台の洗濯機がネットワークで繋がっている。旧三洋電機時代の2006年から展開する「ITランドリーシステム」によって、Web経由で店舗を検索し、洗濯機の空き状況や運転状況などを確認できる。

「AQUA次世代Cloud IoT ランドリーシステム」は、ITランドリーシステムの延長上にあるサービスだ。ユーザーはスマートフォン経由でクーポンを利用したり、洗濯終了後の機器ロック延長機能などを利用できる。機器ロック延長機能は、洗濯が終了してもすぐには取りに来られない場合に、追加料金を払うことでトビラのロック時間を延長するもの。盗難対策になるのはもちろん、他人に洗濯物を見られたり触られたくないユーザーには便利な機能だ。

ランドリー内の洗濯機は、同時に発売するIoTマルチ端末「HIC-MT10」によって一元管理される。21.5型のタッチパネルモニターやQRコードリーダー、スピーカーなどを搭載し、音声ガイダンスにも対応する設置型のデバイスで、店舗オーナーはHIC-MT10を通じてランドリー機器の制御や料金の設定などを遠隔操作で管理できる。

ランドリー内のどの洗濯機に洗濯物を入れたかモニター上で指定(左)、運転コースをタッチパネルモニターで選んで、現金またはICカードで支払う仕組みだ(右)

HIC-MT10で発行したICカードを利用できる。チャージも可能だ(左)、カード挿入口に入れると、途中で抜き取れないようにストッパーが掛かる仕組みになっている(右)

HIC-MT10は現金とICカードの双方に対応しており、現金は100円玉、500円玉、千円札が使用可能。1台ごとに釣り銭を出せるほか、千円札を100円硬貨10枚に両替する機能も備える。ICカードの発行、チャージも行えるほか、クーポンの受け付けや発行、領収書の発行などにも対応。「ICカード利用の場合は1割引する」といった価格の二重表示も可能だ。

遠隔から一括で料金の変更などが行えるため、「雨の日割」や「空いている時間帯割」などのきめ細かなサービス変更がリモートで簡単に実現する。このほか、機器にエラーが発生した時の遠隔ロック解除などにも対応する。

領収書やクーポンを発行できる(左)、クーポンはQRコードリーダーで読み取るほか、ナンバー入力も可能になっている(右)

ここまででもかなり便利な印象だが、これはアクアの描くIoTランドリーの第1フェーズに過ぎない。

アクアでは第2フェーズとして、APIを公開し、異業種とのシステム連携、データ連係や、共有を2018年にも展開する計画だ。例えば、管理者がコインランドリーとは異なる業態の店舗を経営している場合、そちらとポイントや会員サービスを共通化することで売上のシナジー効果が期待できる。電子マネーや異業種のICカードとの相互利用やポイントの共有なども技術的には可能で、提携先を模索している状況だ。

さらに2019年以降を予定する第3フェーズでは、ビッグデータとAPI活用による新ビジネスの創出を目論む。エリアごとの天気と稼動データをもとに、需要予測を通じた洗濯予報のアプリ配信といった展開が考えられるという。

なお、コインランドリー機器の導入に関しては、保証や下取り、工事費用などは従来通りとなるが、IoTマルチ端末のHIC-MT10を使用した「AQUA次世代Cloud IoT ランドリーシステム」の利用には、月額3,000円の料金が必要だ。これは旧三洋電機以来の「ITランドリーシステム」の料金と同額となる。

アクアの描くコインランドリー、ますます便利になる未来図を見ていると、コインランドリーを活用するユーザーは今後も順調に増えていきそうだ。

アクアではIoTランドリーの構想を3つのフェーズで展開していく計画だ

コインランドリー機器は、全自動洗濯乾燥機が2機種、ガス乾燥機が4機種、全自動洗濯機が1機種、IoTマルチ端末が1機種となる。それぞれの型番と洗濯/乾燥容量、希望小売価格は以下の通り(すべて税別)。発売予定日はいずれも11月上旬だ。

全自動洗濯乾燥機は洗濯/乾燥容量27kg/16kgの「HWD-7277GC」(2,700,000円)と、同じく17kg/10kgの「HWD-7177GC」(1,950,000円)。

ガス乾燥機は乾燥容量14kg×2の「HCD-6147GC」(1,450,000円)、同じく25kgの「HCD-3257GC」(1,050,000円)、同じく14kgの「HCD-3147GC」(700,000円)、同じく8kgの「HCD-3087GC」(580,000円)。

全自動洗濯機は洗濯・脱水容量10kg「HCW-5108C」(470,000円)となる。

HIC-MT10は、希望小売価格が1,620,000円(税別)。本体サイズはW600×D330×H1,350mm、重量は約61kg。