これには、回転寿司ビジネスの特性もあるだろう。一般に原価率は高く、売上を増やして、利益をとるビジネスモデルだ。客単価も千数百円と高くはなく、ある人が年一回来店するのでは不十分。何度もリピートしてもらわねばならない。

それがわかると、欧米よりもアジアのほうが市場としては魅力がある。アジアには米食・生食文化を持つエリアがあり、寿司はなじみやすい。年一回のスペシャリティーフードというよりも、日常食に近い感覚で食べてもらえるからだ。

ターゲットをアジアと定めた上で、生魚を食べるエリア、そうでないエリアという問題がある。両方あるところが一番いいが、その後では「生魚を食べるエリア」「米食があるが生魚を食べないエリア」「そもそも米食文化がないエリア」といった順番で出店していく考えだ。

具体的には、中国、台湾、香港は所得水準も含めて可能性は大いにあるという。次に挙げてくれたのが、シンガポールやタイ、マレーシアだった。その先はインドネシア、インドといった国名も挙がる。インドは米食文化はあるものの、生食文化はなく、少し先にはなりそうだ。

海外でスシローの看板が目につくように?!

話を聞いていると、ひとつ気づくことがある。それは海外1都市、1店舗とは思えないことだ。日常感覚で気軽に入れるレストランという位置づけは、1都市で多数の店舗を抱えるイメージを持っていてもおかしくない。

そのあたりを聞くと、水留社長は「ソウルには10店舗ないようならダメ。韓国で30店舗やるなら、半分はソウルにあるべき。日常に入り込んで、週末に楽しめるようにならなければいけない。一年に一回、頑張って行くお店ではない」と繰り返す。

気軽に入ることができ、選べる楽しさのある回転寿司は海外でも根付くか

スシローの海外展開はこれからが本番。一都市に何店舗もあるような姿をイメージし、多店舗展開を図る考えだ。水留社長の話を聞いていると、外国の生活レベルに入り込んで定着を図ろうとしていることがわかる。それは壮大な考えであると同時に、実現が大変そうな取り組みのようにも思える。いずれにせよ、回転寿司をもっと身近に、という考えは、日本においても、海外展開においても変わらないようだ。