TVアニメ『サクラダリセット』の川面真也監督トークイベントが2017年8月7日、東京・東放学園で開催された。同トークイベントは東放学園映画専門学校アニメーション映像科のスペシャル体験入学として行われたもので、アニメーション制作を志す若者たちが対象。 登壇した川面監督は、代表作のひとつ『のんのんびより』から『サクラダリセット』への振り幅の大きさについて、「『のんのんびより』以降、心優しい作品のオファーが多かったんです。それはありがたい一方、目先を変えたかったのと、元々シリアスな作品が好きだったので、喜んでお受けしました」と軽めのトークで場を和ませながらイベントはスタート。

川面監督は監督という仕事について「一番ベーシックなのはシナリオからコンテまでのチェック、音響まで、全セクションで判断をくだすのが監督です。関わっていない作業というものはほとんどありません。取りまとめをして、方向性を示し続ける仕事です」と解説。川面監督自身は制作進行からスタートして、現場に入ってから撮影など様々なことをやらせてもらったことが演出の役にたったとのことだ。川面監督は自身がデザインの仕事をする中で画面構成や色彩の勉強をしたことがアニメーション制作にも役立ったことを紹介すると、「業界に入るまでにやってきたことでスタート地点が変わってきます」と事前に幅広い分野を学ぶことの大切さを語っていた。

『サクラダリセット』についてのトークで、原作とアニメでエピソード順を入れ替えた狙いを聞かれた監督は「原作がかなり特殊な構成で、何巻かあとまで読み進めて、初めてそうだったのか、とわかることが多い作品なんです。シナリオの高山カツヒコさんといろいろ相談していて、冒頭にインパクトが必要なのではないか、小説と映像の驚きの体験は違うのではないか、などいろいろと話しあいました。最近のアニメは物語のピークを前半に持ってくることが多いのですが、とてもよく練られた原作なので、この作品では後半にすべてを集約させています。前半を見ている時にはやや忍耐が必要で、その分のカタルシスが後半に待っている構成です。その作り方が今の時代OKなのか、というところから悩んだのですが、このやり方を許してもらえる以上、頑張りたいなと思いました」と語っていた。

川面監督がトークの中で強調していたのは、アニメーション制作のシナリオ、コンテ、編集のあらゆる段階で尺に収めることが要求されるということ。とりわけ『サクラダリセット』は会話劇のテンポを大切にしていることもあり、最終話では尺を切り詰めて収めることに本当に悪戦苦闘したエピソードを明かしていた。『サクラダリセット』では全話で情報量を詰め込む苦労があったという監督は「皆さんもアニメを作るなら必ず尺に収める苦労はすると思います」と語って来場者を笑わせていた。

放送済みの『サクラダリセット』18話の中で印象的な話数を聞かれた監督は、10話でキャラクターが生き返るシーンと、あえて来週の19話を「19話で謎解きや伏線が一端全て解き明かされます」とチョイス。監督は謎も含めて原作のラストまで全てを描ききることが本作の最大目標と語っていた。

質疑応答で、アニメーションの会話劇のテンポ感を良くするコツを聞かれた監督は「僕は音楽の力を使っています。ここでこういう音楽がかかるということありきで、音を効果的に使う。あとはテンプレートな芝居は削ぎ落として、表情や間の違和感で見せることですね。「そうですよね」と問いかけられた時に「はい」「あ、はい」といった答え方によって間のコマ数を変えたりしています。間を詰めたり音を入れることで緊張感を演出しています」と実戦的な解答をしていた。

最後に監督は、監督につながる道としての演出という仕事の重要性について語ると、「アニメーション業界は間口が広いので、気軽にチャレンジしやすいと思います。現場は有能な人材を常に求めています。あまり業界の景気はよくない時代なのですが、状況が悪い時はチャンスでもあります。今皆さんが好きなもの、アニメ、映画、スポーツでもなんでも役に立つので、学生の頃にハマっているものを大事にしてください」と締めくくった。

(C)河野裕・椎名優 /KADOKAWA/アニメ「サクラダリセット」製作委員会