IoT時代の到来を見越した買収だけではない

その主な理由として挙げられるのは、ソフトバンクグループが現在力を入れている分野の1つである「IoT」にある。

あらゆるモノがインターネットに接続するというIoTの概念が広まれば、インターネットに接続するデバイスの数は、現在のスマートフォンやパソコンの比にならない規模となる。だが一方で、モノがインターネットに接続するためには、モノ自体も携帯電話からスマートフォンに変化したときのように、モノ自体がコンピューター化する必要が出てくる。 あらゆるモノがコンピューター化した場合、スマートフォンと同じように、モノにもCPUやメモリ、通信機能などが内蔵される時代がやってくることとなる。そうなれば、ARMの設計を採用したチップセットが、スマートフォンからあらゆるモノへと広がることとなり、それに伴ってチップセットの販売拡大、ひいてはARMのライセンス収入拡大へとつながっていくわけだ。

多種多様なIoTデバイスが広がることで、ARMの設計を採用したチップセットの搭載数が増え、それがライセンス料金の拡大へとつながると見られている

しかもARMのCPU設計は省電力性に優れていることから、他社のCPUと比べIoTデバイスに搭載するのに適している。それだけに、IoTデバイスが広がるほどARMの業績が急拡大する可能性が高く、ソフトバンクグループはそこに目を付けてARM買収に至ったと見ることができるだろう。

とはいうものの、将来の売上拡大を見越しての買収に、3.3兆円もの投資をするというのはリスクが高いように思える。ソフトバンクグループがARMを買収したのには、売上の拡大だけでなく他にも大きな理由があると考えるべきだろう。