そもそも、生命保険に加入して死亡保障を確保するべきなのは、養っている家族がいるなど、万が一自分が亡くなった時に、生活に困る人がいる場合です。つまり、「20代だから不要」なのではなく、生命保険は、自分の収入で生活している家族がいるかどうかを基準に判断することが大切です。20代で結婚していても、夫婦ともに正社員として働いているのであれば生命保険は要りませんし、妻が専業主婦でも、いざとなれば自分が働き収入を得ることができますので、多額の保障は必要ないでしょう。

ただし、結婚して子どもが生まれたら、話は別です。自分が死亡した後、子どもが独立するまでの間の生活費、教育費に備えて死亡保障を確保しましょう。このように、養う人がいる場合を除いては、基本的に20代で生命保険に加入する必要性はあまりないと言えます。

医療保険に入る時のポイントとは

それでは、医療保険はどうでしょう。20代独身なら生命保険は不要としても、病気やケガで入院する場合に備えて、医療保険だけは入っておくべきだと考える人も多いはずです。医療保険とは、入院や手術などの際に給付金が受け取れる保険のことを言います。「入院したら色々お金がかかりそう」と考え、保障の充実した医療保険にあれこれ目移りした経験もあるのではないでしょうか。

しかし、医療保険にはこうした民間の保険会社が販売するものだけでなく、勤め先の健康保険や国民健康保険などといった、公的医療保険もあります。まずは公的医療保険を利用すれば、医療費の自己負担は3割で済みます。さらに、健康保険には「高額療養費制度」があり、自己負担が高くなり過ぎないよう上限が設けられています。高額療養費制度を利用したら、1ヶ月の医療費の自己負担額は、多くても9万円弱。勤めている会社によっては、健康保険組合や共済組合でさらに手厚い給付を行う場合もありますので、調べてみると良いでしょう。

こうした保障をすでに持っていることを踏まえれば、民間の医療保険でたくさん保障を用意する必要はないとわかります。また、病気やケガをしても、実際には入院まで至らず通院で済むケースがほとんど。そうなると、役立つのは、健康保険や何にでも使える自由なお金、つまり貯蓄です。医療保険で必要な保障は、入院や手術に最低限備える程度で問題ありません。

なお、「貯蓄が充分にあれば医療保険は不要」と耳にしたことがあるかもしれません。確かにその通りなのですが、20代ではまだ貯蓄が多くなく、また、これから30代以降で結婚や住宅取得など様々なライフイベントが控えていることを考えると、できるだけ貯蓄は切り崩したくないものです。そのため、保険料を抑え必要最小限の医療保険に加入しつつ、その分貯蓄に励むのが良いでしょう。

保険は色々加入していれば安心な気持ちになるかもしれません。しかし、不要な保障のために大切なお金を払うよりも、もっと有意義な使い方があるはずです。自分に必要な保障を見極め、保険と上手に付き合うことが大切です。

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筆者プロフィール:武藤貴子
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント
会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。FP Cafe登録FP。