あのポルシェがクルマの電動化に“本気”で取り組んでいる。ポルシェジャパンは6月13日、ハイブリッド(HV)レーシングカーで参戦する「ル・マン24時間レース」を前に、ライバルのトヨタ自動車を招いてエール交換会を開催。その席上、ポルシェジャパンの七五三木(しめぎ)敏幸社長は、同社が進める電動化戦略の一端を披露した。

ポルシェの電気自動車(EV)コンセプト「ミッションE」

ポルシェと電気自動車の長い歴史

七五三木社長の話によると、ポルシェとEVの付き合いは古い。フォルクスワーゲンの「ビートル」を設計したことなどで知られるフェルディナント・ポルシェ工学博士が、エンジンの発明に世界的な注目が集まっていた1896年に設計・開発を始め、自身初の実車として完成させたのが、1900年のパリ万国博覧会にも出展した電気自動車「ローナーポルシェ」だったのだ。同氏はその後、世界初のフルハイブリッド車の開発にも成功したという。

「ローナーポルシェ」を紹介するポルシェジャパンの七五三木社長

そんなポルシェが、同社初となるピュアEV「ミッションE」を発表したのが2015年のフランクフルトモーターショーだ。その後ポルシェはEVの商品化を決め、すでに専用工場の建設にも着手しているという。ミッションEは2020年までに市場投入の予定。ポルシェジャパン広報によると、専用工場の建設には「巨額の」費用がかかっているそうで、ここからもEVに取り組むポルシェの決意がうかがえる。

総販売台数の10%以上をEVおよびPHVに

ポルシェジャパンは日本市場で電動化車両の普及に向けた取り組みを進めている。2014年には、「パナメーラ」と「カイエン」のプラグインハイブリッド車(PHV)を日本に導入。今後については、ミッションEの日本導入に向け、専任のプロジェクトチームを立ち上げて準備を進めているという。

「カイエンS E-ハイブリッド(Cayenne S E-Hybrid)」

七五三木社長は日本の自動車市場全体を俯瞰し、全体に占めるPHVおよびEVの割合は1%に満たないと指摘。輸入車市場に限れば、EVは0.3%に過ぎないと語った。そんな状況の中、ポルシェジャパンでは今後、総販売台数に占めるPHVおよびEVの割合で「2桁」を目指すという。

また七五三木社長は、EVの販売台数が10年以内にPHVを上回るとの予測も示した。1度の充電で500キロの走行が可能なEVが一般化し、ある程度の充電インフラも整うのであれば、1カ月の走行距離が1000キロ程度のドライバーにとっても、EVが実用的なものになるというのがEV増加を見通す理由だ。確かに、月に2度の充電で済むのであれば、EVに対する市場の受け止めも変わるかもしれない。