艶(つや)があってサラサラで触り心地がよい……そんな髪の毛に憧れている世の女性は多い。美しい髪は女性を象徴するパーツの一つ。それだけに日々、自身の髪について悩んでいる女性も少なくないだろう。
多くの女性は髪の毛と女性ホルモンが密接に関わっていることを知っている。ただ、髪の太さやコシといった具体的な部分にどれだけ影響を及ぼしているかまで把握している女性は少ないはずだ。
今回は、女性ホルモンに詳しいAACクリニック銀座の院長・浜中聡子医師に「美しい髪と女性ホルモンの関係性」についてうかがった。
30代後半が髪の曲がり角
女性ホルモンはプロゲステロンとエストロゲンの2つに大別できる。このうちエストロゲンが皮膚をみずみずしく、髪を艶やかに保つなどの働きをしており、いわゆる「女性らしさ」に関連しているホルモンだ。20代後半をピークに女性ホルモンの分泌量が緩やかに低下しだし、早い人だと30代後半になると急激に低下する。この時期が「髪にとっての曲がり角」と言える。
「『加齢により髪が変化する』と言われますが、実際のところ毛根自体は変わりません。『毛根を効率よく使える』という点が年齢と共に変わっていくのです」と浜中医師は話す。
それでは、女性ホルモンの減少に伴い、髪の大事な要素である「太さ」「コシ」「ハリ」はそれぞれどう変化していくのだろうか。
まず、髪の太さに関しては「女性ホルモンに恵まれた人であれば、30代後半までピークを維持できます」。髪が細ってくると、どうしても全体的に髪が薄いような印象を与えがち。女性ホルモンが他の人より多い女性であっても、40歳前後で確実にホルモンが減りだす。そのため、40代以降からは徐々に髪の毛が細っていくことを覚悟しておいた方がよさそうだ。
次にコシはというと、「やはり髪の毛の立ち上がりも悪くなってきますよね。若いときと同じように毛穴から生えていても、髪がくたっとしてくるため、同じ本数が生えていてもボリュームが出せないようになります」と浜中医師は解説。コシがなくなりボリューム感が失われるため、見た目印象にかなり悪影響を及ぼしそうだ。そして最後にハリだが、こちらもやはり低下してきて髪が切れやすくなるという。
「さらに、女性ホルモンが低下すると髪がうねって乾燥してきます。つやもなくなり、『髪が汚くなって量は減る』という状態になります。女性にとって、髪質の変化はすごくマイナスになりますよね。それでも、やはり女性ホルモンの数値が高く安定していると抜け毛は少なくてすむし、髪質もいい状態がキープできるということはあります」
髪は環境要因に左右される
あらためて女性ホルモンが髪の毛に与える影響力の大きさがわかった格好だが、分泌量が低下した女性ホルモンはホルモン補充療法で補えるし、バランスの取れた食事は女性ホルモンの代謝を促してくれる。浜中医師はそこへ外用薬をうまく組み合わせると、なおよいと助言する。
「『きれいに髪を伸ばし、美しくキープする』という点については女性ホルモンが役立ってくれますが、『髪を早く伸ばす』ということに関しては女性ホルモンだけでは難しい部分があると思います」
具体的には「ミノキシジル」と呼ばれる成分が配合された外用薬などを活用すると、女性ホルモンとの相乗効果で比較的早い髪の伸びが期待できるとのこと。また、プエラリアと呼ばれる植物の成分を配合したサプリメントも女性ホルモンにとってプラスに働くため、覚えておいて損はない。
「無月経が続いた女性の髪質が一気に変わったことがあるため、私たちの髪は女性ホルモンや食事、睡眠といった後天的要素、環境要因に起因する部分が大きいと思います。自分の髪ですから、まずはできることからでもいいので、ライフスタイルの改善に努めてみるのがいいかもしれませんね」
※写真と本文は関係ありません
記事監修: 浜中聡子(はまなか さとこ)
医学博士。北里大学医学部卒業。AACクリニック銀座院長。米国抗加齢医学会専門医、国際アンチエイジング医学会専門医などの資格を多数取得。アンチエイジングと精神神経学の専門家で、常に丁寧な診察で患者に接する。