WOWOWプライムで独占中継する『生中継! 第89回アカデミー賞授賞式』(2017年2月27日10:00~ 字幕版は同日21:00~放送)で、ジョン・カビラと共に案内役を務める高島彩。世界中から熱い視線を浴びる同式典だが、今年は激動のトランプ政権誕生直後ということで特に注目度大だ。高島彩にインタビューし、話題作からアカデミー賞授賞式の見どころに至るまでたっぷりと話を聞いた。

高島彩

――案内役を務めるのは3年連続となりましたが、いつもこの時期をどんなふうに迎えていますか?

お正月を迎えた後、今年もそろそろアカデミー賞の時期がきたなとワクワクし始めます。私は誕生日が2月18日なので、年を重ねたすぐ後に授賞式を迎えるんです。今は育児であまり映画を観られないんですが「仕事だから試写に行かなきゃ」と理由をつけて行けるのがうれしいです。また、この期間になるとWOWOWさんがまとめてアカデミー賞作品を放送してくださるので、観たり録画予約をしたりします。

――アカデミー賞授賞式の見どころはどんなところですか?

超一流の映画が選ばれるだけでなく、演出や司会の方々のやりとり、歌曲賞のパフォーマンスなども見応えがあります。初めての時はもっと緊張していましたが、今はそれよりも楽しもうという気持ちの方が大きくなりました。なんか緊張していること自体がもったいないし、もっとリラックスして楽しまないとと思うようになり、今ではカヴィラさんとリラックスして観させていただいています。

――最初のレッドカーペットでの女優陣の衣装も毎年話題になりますが、特に気になっている女優がいたら教えてください。

私はルーニー・マーラが大好きなんです。彼女のモード系のファッションというか、彼女にしか着こなせない合わせ方がすごく魅力的。自分ではできないけど憧れます。近年だとルピタ・ニョンゴの水色のドレスがきれいで、光る肌とのコントラストが実に美しかったし、ディカプリオがアルマーニを着こなしていたりして、男性のファッションも楽しめますよ。その年によっていろんな傾向があるのも興味深いですね。

――すでにご覧になったノミネート作品でいちばん気になっている映画を教えてください。

『ラ・ラ・ランド』の衝撃はすごかったです。最初の高速道路での1カットの長回しを観て「こんな始まり方ってありなんだ!わあ、すごい!すごい!」とオープニングから心を鷲掴みにされました。タイトルの『ラ・ラ・ランド』の文字がでた瞬間には思わずスタンディングオベーションしたくなりましたし、その勢いのままに完全に映画の世界に飲み込まれて、最後には涙も溢れる。「こういう映画が観たかったんだ!」と心から思える映画です。メッセージ性が高くて重い作品も多いと思うんですが、深くて軽やかで共感できて、みんなが感動できる映画ですね。

――パフォーマンスでは何がいちばん楽しみですか?

私は毎年、歌曲賞を楽しみにしています。昨年はレディー・ガガのショッキングな告白(性暴力被害についての訴え)と共に展開されたパフォーマンスが胸に迫るものがあり素晴らしかったです。アカデミー賞なのにグラミー賞のように音楽も楽しめますよね。今年は『ラ・ラ・ランド』でノミネートされた曲がパフォーマンスに出てくるのかな?すごく楽しみです。

――昨年のアカデミー賞で印象深かったのはどんな賞でしたか?

昨年はディカプリオが主演男優賞を獲るか獲らないかに注目していました。本当にドキドキして、獲ってほしいと思いながらも獲れない運命ってあるのかな、と心揺れたり。だから受賞した瞬間はとてもうれしかったです。ディカプリオがケイト・ウィンスレットとハグをした時「ああ『タイタニック』だ!」と感慨深くて、まるで古くからの友人が受賞したような気持ちに勝手になりましたね。スピーチでは自分の喜びもさることながら、自身が取り組んでいる環境のことについても話していましたし。

以前、ハル・ベリーが『チョコレート』(2001年)でアフリカ系アメリカ人として初めてアカデミー主演女優賞を受賞した時も「扉が開いた」と言ったのが感動的だったし、あの場だからこそ世界中に訴えかけられたんだと思います。

昨年は"白すぎるアカデミー賞(有色人種の受賞が少なかったこと)"と言われました。そういう意味では今回そこを逆に意識してしっかりノミネートされたということも一部で言われているようですが、変にそこを意識して選出されるのも違うという気がします。実際、アメリカが抱える多様性や差別はアカデミー賞にも反映されているけど、今回はどのへんに表れてくるのか、それによってスターたちがどういうコメントをするのか、生放送なので見ものだと思います。

――特にトランプ政権下での授賞式ということで、どんな発言が飛び出すのかが気になるところです。

それぞれの人のスピーチには賛否もあるとは思いますが、守りに入らずに問題を提起するのがハリウッドならではかなと。今年は授賞式はもとより、入国さえできない方もいらっしゃるようですし、そのことについてどんなスピーチが聞けるのかなと。

アメリカがすごいのは"主張する文化"が根ざしていこと。日本ではあんなふうに国のトップを公に批判できないけど、アメリカであれば言う人は言うし、ちゃんとメッセージを届けようという意志もある。アカデミー賞で誰がどんなことを言って、それが観衆にどう伝わり、トランプさんの耳にどう入って、彼がどうツイートするのかも含め、期待しています。

――最後にメッセージをお願いします。

アカデミー賞授賞式と聞くとちょっと敷居が高いと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それはすごくもったいないことです。いちばん面白い映画を決めるだけではなく、アカデミー賞自体がショーだと思うんです。日常生活では簡単にふれることのできない超一流のステージやパフォーマンスに触れられるチャンスです。映像もすごく凝っているので、ぜひ生で観ていただきたいし、テロップがついた時間帯も観てほしい。本来なら1つのショーを観るのにけっこうな額を払わないといけないんですが、それを一気に観られるというお得感もありますし、何よりも特別な時間を味わえます。