メンタルが強い人と弱い人の違いって?

こんにちは、トイアンナです。皆さんは、「メンヘラ」という言葉を聞いたことはありますか? 「メンタルヘルス」から派生した2ちゃんねるなどで使われるネットスラングで、「心の病を患っている人」「極端にネガティブな言動を取る人」「心の健康に問題を抱えた人」などを指す言葉として広く使われています。

ネットでは自殺未遂やストーキング行為など極例へスポットライトが当たりがちですが、「冬になると気分がふさぎ込む」「最近眠れない」といった感覚なら、誰しも人生のどこかで経験するのではないでしょうか。

個人的な意見では「メンヘラに絶対ならない人」は存在しないと思います。どんな人でも食事をろくに食べられず、眠らせてももらえなければメンタルにきます。けれど、どんな環境でもすぐに心が折れてしまう人と、ある程度耐えられる人がいます。今回は、その違いについて触れていきましょう。

メンヘラになりやすい私の黒歴史

失恋して数年引きずる人もいれば、そうならない人もいます。例えば、私は新しい恋を始めても前の後悔を引きずるタイプなので、メンヘラになりやすい方です。

以前、同居していた彼と別れたときは、生活費を貢いだ上に浮気されるという散々な状況でした。本来なら「この家は私の名義だ! 今すぐここから出て行け!! 」と彼を追い出して済むはずの恋です。

ですが、メンヘラだった私は「もう一生、恋愛はできないんじゃないか」「今まで何のために生きてきたのか」と悲観。浮気相手と家で鉢合わせたときは、怒りのあまり窓ガラスをたたき割るなど「ザ・メンヘラ」として大爆発。気づけば彼に泣きながら病院へ連れられ、1年間のカウンセリングを経験しました。おかげさまで今はピンピンしています。……が、もう一度同じ経験をしたら数年は立ち直れなさそうです。

立ち直りが早い・逆境に強い人の特徴

ところが、同じ経験をしてもなるべく冷静に立ち回り、比較的すぐに立ち直れる女性もいます。私も性暴力のサバイバー支援活動で学んだのですが、逆境に強い人とそうでない人に差があることについては、古くから研究が行われてきました。

逆境に立ち向かう力を専門用語で「レジリエンス」といいます。日本語で「抵抗力」「復元力」を表す言葉で、人によってレジリエンスが強い人と弱い人がいます。

レジリエンスが強い人は、こんな特徴があると言われています。(参考: 小塩真司・中谷素之・金子一史・長峰伸治『ネガティブな出来事からの立ち直りを導く心理的特性-精神的回復力尺度の作成』)。

■レジリエンスが強い人の特徴

・新しいことや冒険が好き
・悪いことがあっても良い点を見つけ出して落ち着ける
・きっと未来は良くなると考えている

過酷な現場で生き延びたAさんのレジリエンス

こうして特徴を並べてから周囲を見てみると、「たしかに」と思える事例がありました。

かつて私の知っている会社が外国人採用を推進していました。手始めに10名ほど外国人を採用したのですが、過半数が1年以内に退職してしまいました。理由は「慣れない日本語での業務」と「空気を読んで上司より遅く帰るといった文化への疎外感」、そして「激務」。日本人でも病む人がいるドメスティックな環境で、深夜まで残業することから精神的に病んでしまう人も少なくありませんでした。

ところが、そこで唯一生き残ったAさんという30代男性がいます。中東出身のAさんは「日本語を学ぶのが楽しい! 」と会議でもどんどん発言し、みるみる上達。役員へタメ口をきいてしまいヒヤリとする経験をしつつも、「今学んだから大丈夫! 」とポジティブにとらえました。

同僚が病んでしまったときは「1年後はもっとできるようになってるよ」と未来を明るく照らし、病んでしまった同期の送別会でも「つらかったとは思うけど、転職先が決まっておめでとう」と良い側面を見つけていました。彼のおかげで職場の雰囲気が明るくなったと評判で、母国へ一時帰国するときも「帰省にまぎれて転職活動とかしないでね。Aさんが抜けたらこの会社は終わっちゃう」と周りに説得されたそう。

Aさんの取った行動は、まさにレジリエンスが備わった人のパターンです。きっとAさんにとっては、激務経験も「あのときは大変だったなあ、でも楽しかった」で片づけられるのではないでしょうか。

つらいときは専門家に相談を

Aさんのように振る舞えるなら、きっと誰もがメンヘラになりにくくなるはず……。といっても、この記事をご覧になっている時点で心が弱っている方がすぐにレジリエンスを育てるのはムリがあるでしょう。今つらい気持ちを抱えているなら、カウンセラーや医師など専門家に相談してみるのが一番です。

そして未来の希望もあります。レジリエンスを後天的に作れないか、という研究が始まっているそうです。今は心理学の分析に使われるレジリエンスですが、これからは心を強くする講座が生まれる日が来るかもしれません。

今とてもつらい恋をしていたり、自分や家族が苦しかったりしても、あなたの心を強くする医療技術は日々進歩しています。「私はどうせメンヘラだから、幸せになんかなれない」と諦めず、専門家を活用して元気を取り戻せますよう願っています。

※本コラムは個人の体験や取材に基づくものであり、医療的な効果などを示唆・保証するものではありません
※画像は本文と関係ありません


著者プロフィール: トイアンナ

外資系企業で約4年勤務。キャリアの一環としての消費者インタビューや、独自取材から500名以上のヒアリングを重ねる。アラサー男女の生き方を考えるブログ「トイアンナのぐだぐだ」は月間50万ページビューを記録。現在もWebを中心に複数媒体でコラムを連載中。