10月後半、再デビューを飾った「Apple Watch」。Nikeとのコラボモデル「Apple Watch Nike+」も販売が始まり、9月のスペシャルイベントで発表されたモデルが全部揃った。

ラインナップが揃ったApple Watch

だが、スペシャルイベントで派手にアナウンスされたある機能は、日本ではなかなか使うのに厳しい状況にある。それは耐水性能を活かしたプールや海でのスイミングワークアウトを計測する機能だ。

利用できないのはAppleのせいではない。公共施設、スポーツジムなど、国内の殆どのプールでは安全性の理由から、時計などの着用が禁止となっているからだ。

国内の殆どのプールでは安全性の理由から、時計などの着用が禁止となっている。スイミングワークアウト計測機能はプールのある邸宅に住んでいない限り試すのが難しかった

という状況下で今回、フィットネスクラブ「ティップネス東新宿」と、スイムを中心としたトライアスロンスクール「アスロニアトライアスロンアカデミー (ATA)」の協力を得て、Apple Watch Series 2のスイミングワークアウトの計測機能をテストしてみた。

テストと言っても、筆者はスペシャルイベントのレポート記事で申告した通り、泳げないので、ATAでコーチを務めている山本淳一さんにご登場頂いた。山本さんは、1996年よりナショナルチームへ入り、トライアスリートとして20年近く競技活動に励んでいる。ATAのスクールでは、山本さんの尽力もあって、Apple Watchを着用したままの受講が可能となっているのだ。

計測にはApple Watch標準搭載の「ワークアウト」アプリを利用する

計測するにはApple Watch標準搭載の「ワークアウト」アプリを利用する。「ウォーキング」「ランニング」などの項目から、「プールスイミング」を選択。海などで泳ぐ場合は「オープンウォータースイミング」を選ぼう。アプリを起動したら、プールの長さを設定し、経過時間、距離などの目標値を決める。目標値を設定しないで「フリー」にしておくことも可能だ。

計測結果は正しく「フリースタイル」、合計距離「100m」と表示された

平泳ぎ、バタフライ、背泳ぎも正しく泳法をとらえている

山本さんに早速、自由形で100m泳いでいただいたところ、結果はちゃんと、「主な泳法」の項目で「フリースタイル」、合計距離「100m」で計測されていた。プールで泳ぐ場合、端まで泳ぎきったあとのターンが検出のキーとなっているようだ。この後、平泳ぎ、バタフライなど、泳法を変えて測ってみたところ、どう泳いだか、しっかりApple Watchのほうで検出されている。同じ心拍数でも、泳法によって消費カロリーが異なるそうだが、Apple Watchでは、自動でアルゴリズムを切り替え、計測する機能が備わっているのだ。

画面ロックがかかると水滴マークが表示される(画像右)。デジタルクラウンを回すと解除できる

スイミングのワークアウトを始めようとすると、Apple Watch Series 2では、自動的に画面ロックがかかる。水の中ではタッチパネルが誤動作を起こして計測がストップしてしまうことがあるからだ。このロックがかかると画面上部の中央に水滴のアイコンが表示される。これが現れている間はロックがかかっているということになる。このロックは、「ワークアウト」アプリからだけでなく、文字盤の画面で下端から上にスワイプすることで表示されるコントロールセンターから設定することもできる。

ブーブー音が鳴ってないじゃないかと突っ込まないで頂きたい。音が出ないのはスピーカー部が水でいっぱいになっている(中に空気がない)からだ。

プールから上がってロックを解除するには、デジタルクラウンを回す。すると、ブーブー音が鳴って、潮を噴くように本体スピーカー部分に侵入した水を排出する。このとき、音が聴こえないことがあるが、それはスピーカー部が水でいっぱいになっているからだ。空気がなければ音は鳴らない。音を鳴らして、振動で水を押し出すという仕組みだ。

計測したデータはiPhoneの「アクティビティ」アプリに直ちに反映される。「オープンウォータースイミング」で計測したGPSの記録を参照することも可能

計測したデータはiPhoneの「アクティビティ」アプリに直ちに反映される。また、Apple Watch Series 2ではGPSを内蔵しているので、「オープンウォータースイミング」で計測する際、泳いだ軌跡を記録しておくこともできる。

一通り機能をチェックしてみて、山本さんに感想を伺ってみると、Apple Watchはまず、着けてるのを意識しないで済むとのことだった。自分が何m泳いだのか、一人でトレーニングしてると分らないのだが、自動でカウントしてくれるのはありがたく、ストレスがないと、有用性を指摘し、専用の心拍計と付け替えなくても普段使いで高い精度のデータが取れると利便性を説く。また、泳いでいる最中、リアルタイムの心拍は、いままでだと測れなかったのだが、これが見られるのは便利と、いままでだと難しかったことをApple Watchなら簡単にやってくれるという、ならではの魅力を語ってくれた。また、iPhone 7シリーズでは耐水機能が搭載されたことで、水際で計測した結果をすぐ見られるようになったというアドバンテージもあわせて挙げていた。これらの機能は、Apple Watch Series 2とiPhone 7/7 Plusでないと利用できない。ただ、バッテリーの持ちはもうちょっと頑張ってほしいとのことだった。山本さんが出場している「アイアンマン」では、トップクラスの選手でも8時間かかるのだが、今の仕様だと、最初から最後まで計測するのは無理らしい。とはいえ、そういうエクストリームな使い方をしなければ十分で、GPSと心拍センサーを連続使用して5時間はいけるから、フルマラソンなら大丈夫なようだ(フルマラソンも十二分にエクストリームだと思うのだが……)。

トレーニングだけでなく、一日の運動量も全部計測してくれるから、山本さんのような特別な訓練を積んだアスリートだけでなく、一般的な運動量の人でも、健康維持のために使えるというのが、Apple Watch Series 2の特徴だ。ひとつでまとめることができるから、スポーツウォッチとアクティビティトラッカーを併用していた人に、是非おススメしたい。

取材協力:ティップネス東新宿/アスロニアトライアスロンアカデミー(ATA)