Adobeは2016年11月2日(現地時間)、「Adobe MAX」を米国カリフォルニア州サンディエゴで開催した。クリエイティブの祭典として毎年開催されているが、今年は過去最高となる1万人以上の参加者が集まり、最新のAdobeソフトウェアの情報を得たり、クリエイター同士の交流を楽しんだ。

初日の基調講演はソフトウェアに関する今後の展開がアナウンスされたが、2日目は、映画監督のクエンティン・タランティーノ氏らトップクリエイターが登壇し、クリエイティビティを刺激する貴重なセッションが多数行われる。タランティーノ監督のセッションについては、次回レポートする。

Adobe CEOシャンタヌ・ナラヤン氏による今回の基調講演の目玉は、「Adobe Sensei」と呼ばれる人工知能や機械学習に関するプラットホームを発表したことだった。

Adobe CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏

このプラットホームは、クリエイティブ系のアプリケーションに限らず、マーケティングやドキュメントといったAdobeを支える3本のクラウドアプリケーションを横断的に利用するブランドで、クリエイティブ系のイベントであるAdobe MAXでは、Creative Cloudアプリケーション群に採用されているAdobe Senseiに分類される機能について紹介があった。

Senseiはお察しの通り、日本語の「先生」が語源だという。英語ではMaster、Teacherというイメージで、多くの経験と知識を有し、それを生徒に伝えながら、自らも生徒から学ぼうとする様子が、人工知能や機械学習で実現しようとしている仕組みにフィットすることから、米国側からこの名前が提案されたという。

Senseiを紹介するデジタルメディア事業部門担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのブライアン・ラムキン氏

Adobe Senseiには、Creative Cloudのアプリケーションの中では、例えばPhotoshopに長年搭載されてきた「コンテンツに応じて○○」といった自動処理が内包される他、Adobe Stockでの画像による写真検索、今回ベータ版として披露されたProject Felixの3D・2D合成の際の、背景写真から光源を自動解析する機能などが、各アプリに順次導入される模様だ。

また、クラウドベースの機械学習プラットホームについては、今後サードパーティー開発者などにも開放していくことから、新たなプラグインやアプリの流通も期待できる。ただし、今回のAdobe Senseiブランドの発表は、「壮大な計画の第1歩」という位置づけだという。

Adobeは人工知能や機械学習について、「各社によって考え方の違いがある」と指摘している。前述の機能群は、Adobeのクリエイティブアプリを利用するユーザーに対して、より多くのことを自動処理で対応できるようになることで、作業の効率化を促進させられる。ナラヤン氏は、「創造性などにより多くの時間を割くことができる」点を強調している。

また、Creative Cloudプロダクトマーケティング&コミュニティ担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのマーラ・シャーマ氏は、「インテリジェンスを磨いていくが、ユーザーに全てのコントロールを委ねている」と言う。人工知能は、全ての作業を済ませてくれるのではなく、制作のアシスタントとして効率化に貢献する存在であり、あくまでユーザーの創造性を高めることを重視しているのだ。