2012年に開催された「第1回スタイルキューブ声優オーディション」に合格し、2013年『アイドルマスター ミリオンライブ!』七尾百合子役で声優デビューを果たした伊藤美来。声優ユニットのStylipSやPyxisとしても活動し、ステージの上ではいつもキラキラした瞳とまぶしい笑顔を振りまいている。

伊藤美来(いとうみく)。1996年10月12日生まれ。東京都出身。スタイルキューブ所属。主な出演は『普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。』宇佐美奈々子役、『魔法少女なんてもういいですから。』篠木真冬役、『アイドルマスター ミリオンライブ!』七尾百合子役など。声優ユニットのStylipSやPyxisのメンバーとしても活動中
撮影 メインカット:西田航(WATAROCK)、インタビューカット:河邉有実莉(WATAROCK)

今回は、自身20歳の誕生日でもある2016年10月12日に「泡とベルベーヌ」でソロアーティストデビューする伊藤にインタビューを実施。等身大の自分らしさを忘れない彼女にデビューシングルの魅力や、今後の活動について直撃した。

どういう感情になれば泣けるんだろう

――伊藤さんが声優を志したきっかけは『カードキャプターさくら』なんですよね。

はい! 小学生くらいの時に、レンタルビデオを借りたのか、再放送だったのかはもう忘れちゃいましたけど、初めて観た時は衝撃的でした。『カードキャプターさくら』は、魔法少女に憧れる女の子の憧れや夢が詰まっていると思ってハマりました。そこで声優さんという職業があるんだということを知って。

――すぐに「声優になりたい」と。

中学1~2年生のときに、「私だったらこう演じるな」と思いながらテレビを観ている自分に気付いた瞬間、「あ、演じる側になりたい」と思ったんです。家族が寝静まった夜中に、鏡を片手にドラマの役者さんと同じ顔をしてみるとか、そういう楽しみ方もしていました(笑)。お母さんの影響で、『アニー』や『セーラームーン』のミュージカルとか宝塚をよく観ていて、ドラマも大好きだったので、自分も演じてみたいと思っていました。

――そこで選んだのが女優ではなく、声優なんですね。

声優さんは、女性でも男の子役を演じることも出来るじゃないですか。性別も関係ないし、魔法少女にだってなれる。それこそ動物にも宇宙人にもなれちゃう。制限がない世界というところに魅力を感じました。

――表現できる幅がより広い方に惹かれていった。

これは「声優さんあるある」だと思うんですけど、「声優になりたい」と思ってからは、漫画を音読してみたり、授業で教科書を読むときにはりきって読んだりしていました。涙を流すシーンで、私も演じながら泣いてみようと思っても、ぜんぜんできなくて、「どういう感情になれば泣けるんだろう」と悩みもしました。声優の練習というよりは遊び感覚だったんですけど。

――そこから2012年に行われた「第1回スタイルキューブ声優オーディション」を受け、合格するわけですよね。

高校1年生のときに「声優になるためには」と検索をしていたら、スタイルキューブの公募オーディションを見つけたんです。受かるとは思っていなくて、応募してみよっかなーくらいの気持ちでした。お母さんにも相談したんですけど、「ああ、いいんじゃない」って。やりたいことをやらせてくれる両親でした。

――応募して、最初に連絡を受けたときのことは覚えています?

1回目の連絡が来たとき、ちょうどディズニーランドにいたんですよ(笑)。友だちと遊んでいたら、お母さんから「受けたやつ電話がかかってきたよ。一次審査受かったみたい」みたいな簡素なメールが(笑)。書類審査だったんですけど、書類でも受かるとは思っていなかったので、「これはいけるかもしれない」と思いました。

――そこで現実感が。

はい。でも、その後のディズニーランドはあまり楽しめなかったかも。緊張しちゃって(笑)。次が面接だったんですけど、話す内容とか、全然用意していなかったんですよ。高校1年生だから、ちょうど受験が終わった直後だったので、「自己PRは高校の面接でしているな」と思って、そのまんまのことを言いました。

――声優のオーディションで!

「学校では合唱コンクールの指揮者を務めました。班長の経験も何度かあります」みたいなことを偉い人たちの前で(笑)。」いま思うと何も関係ないですよね。ほかにも歌唱審査や演技審査もあって、歌唱審査では好きな曲を歌っていいと事前に言われていたので、アカペラで「赤いスイートピー」を歌いました。

剣道の「メーン!」で合格に

――2015年10月12日に開催された1stライブイベント「Miku's Adventures 2015」でも歌っていましたね。演技審査はいかがでした?

その場で演技の資料を渡されて「出番までに読んでおいてください」って。私はもうどうしたらいいかわからなくて、ほかの人たちを見たらなんかペンでチェックを入れていたので、とりあえず私も句読点のところにチェックを入れていました(笑)。

――ははは。真似して、なんかやってる風に。

斜線とかも入れていましたね(笑)。本番の演技審査では、死ぬほど緊張しました。あとからスタッフさんに聞いたら「あの子、このまま気絶しちゃうんじゃないかと思っていた」って言われるくらいに。

――それじゃあ、もうほとんど記憶にないんじゃないですか?

あ、、覚えていますよ。オーディションの書類に「剣道部に入っている」ということを書いていたので、審査員の人から「ちょっと面を打ってもらえる」と言われました。すごい怖かったんですけど、がんばって「ヤー! メーン!」って。

――伊藤さん、初段ですもんね。そこでは声は出せた。

はい。これがあったからこそ受かったと言われました。緊張していて声が小さすぎたんですね。「ちゃんと声がでる子なのかな」と確かめるためだったらしいです。怖かったんですけど、できてよかった……。でも、私のあとに審査がある人たちはもっと怖かったですよね。いきなり部屋から「ヤー! メーン!」とだけ聞こえてきて。

――「あの部屋で何が行われているんだ……」ってなりますよ。そこで晴れて合格となるわけですね。

自己PRもあんなだっただし、お芝居も経験なくて、歌も自信がなかったので、受かるとは思っていなかったんですよ。あ、合格の電話がかかってきたとき、私はまた家に居なかったんですよ。

――もしかして一回も電話を受けていない……。

実は……。高校の授業が終わって遊びに行っていました(笑)。帰ってまたお母さんから聞かされました。「声優になるんだ」という実感が出てきたのはレッスンが始まってからですね。「これから勉強していくんだ」って。