ご当地グルメの宝庫、名古屋でまた"新・名古屋メシ候補"が名乗りを挙げた。あんかけスパゲッティ専門店の「パスタ・デ・ココ」が、9月1日に発売した「カレーまぜスパ」だ。

ココイチ系列のあんかけスパ専門店から新メニューがデビュー

「カレーまぜスパ」(940円※一部店舗では価格が異なります)

「パスタ・デ・ココ」は、「カレーハウスCoCo壱番屋」(以下、ココイチ)の壱番屋によるあんかけスパゲッティ専門店。地元・愛知を中心に34店舗を出店する。国内外に1,400店舗以上を出店するココイチと比べるとまだまだ店数は限られるが、それでもこのジャンルでは、老舗の「ヨコイ」や「チャオ」を押さえて堂々のナンバーワンチェーンだ。

とろみのあるソースと、ラードで炒めた極太麺がマッチしたあんかけスパゲッティは、そのヘビーな食べ応えから、多くの人気店では男性客が大半を占める。一方でパスタ・デ・ココは、"あんかけスパらしさ"を守りつつも大衆ウケする味つけで、女性客を含めて幅広い層から支持を得ている。

「パスタ・デ・ココ」は、郊外のロードサイド型店舗が多い。カレーのCoCo壱番屋との併設型もある。写真は中区松原三丁目店(名古屋市)

そんな同チェーンの新作メニューとして9月1日から売り出されたのが、「カレーまぜスパ」(940円※一部店舗では価格が異なります)。今や200店舗以上と言われる名古屋めしの最新鋭勢力「台湾まぜそば」と、壱番屋の十八番である「カレー」、そしてパスタ・デ・ココの「スパゲッティ」をかけ合わせた、ミクスチャー料理だ。

麺はゆでた後にラードで炒め、さらにカレー味に仕上げている。具は肉みそ、チャーシュー、ニラ、ピリ辛トマトソース、玉ねぎ、キャベツ、半熟たまご、刻みのり、削り粉の9種類。元ネタである台湾まぜそばにはない「チャーシュー」、「ピリ辛トマトソース」、「キャベツ」がトッピングされ、しかもカレー味というところに、オリジナリティーを感じる一品だ。

未体験の不思議な・・・でも、親しみやすい味わい

もともとは、壱番屋のカレーラーメン専門店「麺屋ここいち」でメニュー化した「カレーまぜそば」から構想を得て開発されたという同メニュー。パスタ営業部長の水谷祐宣さんは、「あんかけスパゲッティの麺は極太で、しかもラードで炒めるので、香りや辛みが強い個性豊かな具材にマッチする」と、その完成度の高さに胸を張る。

まずは玉子の黄身を崩し……

それでは、実際に食べてみよう。あらかじめ温められた器に炒めた麺が盛られ、さらに手早く具材がトッピングされたカレーまぜスパは、まぜそば以上の熱々感。麺と具材を一気に混ぜ合わせると、カレーの香りと具材の香りが混ざり合った香ばしさが立ち上がり、食欲をそそる。

具と麺がしっかり絡み合ったら食べ頃

口に運ぶと、多彩な風味は、カレーの包容力のおかげで混然一体まとまっていた。スパゲッティを食べているという感覚とは異なり、かといってラーメンのまぜそばともまた違う。体験したことのない不思議な……でも親しみやすい味わいだ。カレー特有のまろやかさも含んだ辛みのため、唐辛子系の台湾まぜそばと比べると、辛みのインパクトはやや控えめ。刺激を重視する人は辛味スパイスを思い切ってふりかけてもいいだろう。

レギュラー化で未来の名古屋めしの可能性も広がる!?

季節ごとにさまざまな期間限定メニューが登場するので、これ目当てで訪れるのも楽しい

このカレーまぜスパは、11月末までの期間限定メニュー。パスタ・デ・ココでは季節ごとに創作系の新メニューを投入していて、今回同様あんかけソースを使わないメニューも多い。その中で、鉄板スパゲティと台湾ラーメンを融合させた「鉄板情熱の台湾スパ」(930円)は、期間限定メニューからスタートし、今では定番商品に昇格している。カレーまぜスパも好評ならば、レギュラー化の可能性だってあるだろう。

「鉄板情熱の台湾スパ」(930円)。期間限定から定番へ"昇格"しただけあって、クセになるおいしさ

また、「ケチャップ味のナポリタンや、あんかけソースのまぜスパの開発にもチャレンジしたい」(水谷営業部長)というから、まぜスパ、そしてあんかけスパの可能性はこれからもますます広がりそうだ。

もともと名古屋メシには、「名古屋メシ足し算の法則」というものがある。「みそ+豚カツ=みそカツ」、「うなぎ+薬味+お茶漬け=ひつまぶし」、「トースト+あんこ=小倉トースト」など、あれこれとプラスすることで、新しい料理が生み出されてきた。既存の名古屋メシの持ち味に、自社の強みをどんどん足して誕生したカレーまぜスパも、この法則にのっとった名古屋メシらしい出自の一品と言える。

そして、新メニューが人気となり、レギュラー化されれば、より大胆なメニューづくりに取り組みやすくなる。つまり、あなたが食べる一杯が、より楽しく魅力ある未来の名古屋メシにつながっていると言うわけ。……さぁ、ここまで言われれば食べるしかない。Let's まぜスパ!!

※記事中の情報・価格は2016年8月取材時のもの。価格は税込

筆者プロフィール: 大竹敏之(おおたけとしゆき)

名古屋在住のフリーライター。雑誌、新聞、Webなど幅広い媒体で名古屋情報を発信。Webガイドサイト「オールアバウト」では名古屋ガイドを務める。名古屋メシ関連の著作を数多く出版。『名古屋の喫茶店』『名古屋の居酒屋』『名古屋メン』『続・名古屋の喫茶店』(リベラル社)は自腹リサーチをコンセプトにしてご当地ロングセラーに。10月上旬にはご当地グルメコミックエッセイ『まんぷく名古屋』(KADOKAWA、森下えみこ著)に案内人として登場。