1923年の同日に発生した関東大震災にちなみ、毎年9月1日に訪れる防災の日。例年、「防災の日」を含む1週間を「防災週間」として、全国でさまざまなイベントが行われている。

地震や台風といった天災に見舞われることが多い日本では、有事に備えて防災や減災の方法を知っておく必要がある。そこで今回、東京都墨田区にある本所防災館にて、いざというときに自分の身を守る術を学んできた。

東京都墨田区にある本所防災館

選べる体験プログラム

本所防災館は東京消防庁本所消防署に隣接しており、東京都には他に「池袋防災館」「立川防災館」と計3つの防災館がある。どの防災館もインストラクターによるツアー案内形式で、地震や煙などの各種災害が体験できる。本所防災館では、4つの体験ができる「基本コース」(所要時間1時間50分: 最大定員120名を1日に4回)と2つの体験ができる「ショートコース」(同1時間10分: 最大定員60名を1日に2回)のいずれかを選択可能だ。

同館で実際に体験できるプログラムは6つあり、基本コースを選択した場合は「地震」「消火」の2つが必須。残りの2つは「暴風雨」もしくは「応急手当」のいずれか、そして「煙」もしくは「都市型水害」のいずれかとなる。筆者は今回、基本コースの中から「暴風雨」と「煙」をお願いすることにした。

1つのプラグでも発火する

同館ではコースの種類を問わず、通常は各種体験をする前に4階の「防災シアター」にて東日本大震災時の映像を元に作り上げた特別映像を鑑賞する(他にアニメの映像などもあり)。2万人以上の死傷者を出した未曾有(みぞう)の災害からはや5年。津波がすべてを飲み込んでいく映像は、何度見ても胸が締めつけられる。同シアターでは地震や津波のメカニズムなどが学べると同時に、これから学ぶ各種プログラムの重要性を再認識させられた。

煙の特性などが学べるパネル

パネルの裏には一般家屋内の部屋を模した空間が

映像鑑賞後は、1つ目の体験プログラム「煙体験コーナー」へと案内された。同コーナーでは、火災時における避難方法や住宅火災において火元になりやすい箇所などをインストラクターの内田さんに教わった。

住宅における火元の一つとしてコンセントが挙げられる。いわゆる「タコ足コンセント」のように複数のプラグを刺している状態も危険ではあるが、たった1個のプラグとコンセントでも発火する恐れは十分にあると内田さんは話す。

「コンセントの差し込み口付近にほこりや水分がたまっていると火事になるので、こまめにそうじをしてください。特に危ないのは冷蔵庫です。コンセントは本体の裏側にあるためそうじがしにくく、キッチン周りにあるため水分も付着しやすいためです」。

コンセント周りから発火する様子が映像で鑑賞できる

住宅の大きさや種類にもよるが、一戸建て住宅でも出火してから15~20分で全焼してしまうケースもあるとのこと。大切な居住空間を守るため、こまめにコンセント周りを掃除したり、コンセントカバーを用いたりすることでほこりや水分をシャットアウトするようにしよう。

暗闇下で煙にまかれたときの対処法

火災時は火も怖いが、有毒な一酸化炭素が含まれている煙も怖い。一酸化炭素は体内でヘモグロビンと結びつき、酸素が体内に運搬されるのを妨げる。すると頭痛やめまい、吐き気などの症状につながり、最悪の場合は死に至る。また、すすが目に入れば目を開けているのも困難になるため、逃げ遅れる原因にもなる。

煙の動き。煙は上の方にのぼっていくため、火元と離れた建物の上層階で死人が出ることも少なくないという

そんなときはどうしたらよいか。煙は上にいこうとする特性があるため、煙と空気の境目である中性帯の中を移動する。具体的には、姿勢を低く保ったまま、煙を吸わないように速やかに避難するというものだ。

火災時には、暗闇の中を避難しないといけないケースも想定される。その際は握ったこぶしの甲側を壁に当てて、壁づたいに避難するとよいとのこと。手を「グー」にするのは、指を何かに引っ掛けて裂傷する危険を減らすため。手のひらではなく甲を壁に当てるのは、手のひらをけがすると「つかむ」という行為ができなくなるためだ。また、途中で壁に当てている手を変えてはいけない。

姿勢は低くし、手の甲を「先導役」にして進む

筆者も暗闇での避難を実際に体験したのだが、真っ暗な世界では想像以上に方向感覚を失う。体の前方に突き出した手の甲を「先導役」に、なんとか暗闇ゾーンを抜け出した。「慣れない場所での暗闇」は、我を忘れさせるということを実感した。実際の火災現場で煙や炎という要素が加われば、なおさら恐怖の度合いが増すのは必至だろう。