パラレルスは8月23日、Mac上でWindowsなどのPC向けOSを動作させる仮想マシン環境「Parallels Desktop 12 for Mac」の発表会を開催した。以前のバージョンと比べてパフォーマンスが最大25%向上しているほか、日常のタスクをシンプルな操作で実行できる20以上のツールやユーティリティを搭載している。

Parallels Desktop 12 for Mac

Mac上のWindowsのシェア50%を目指す

壇上で発表を行うパラレルス日本法人の下村慶一社長

Parallels Desktop for Macは、Intel版Macが登場したとき、真っ先に対応を発表した仮想マシン環境だ。Macのハードウェアを仮想化して利用するため、CPUからエミュレートするエミュレータ環境よりもネイティブに近い処理速度が実現できる。この分野ではMacで最大のシェアを誇っている。

最新版のバージョン12では、前バージョンと比べてスナップショットの作成で動作速度が最大90%、仮想マシンのサスペンドで最大60%、共有フォルダーのパフォーマンスが最大25%向上しているほか、バッテリー駆動時間も最大で10%向上している。また、今秋登場する次期macOS「macOS Sierra」に対応し、Sierraが搭載する「Optimized Strorage」機能で、仮想マシンが使うストレージ容量を直接コントロールできる。

また、仮想マシンをサスペンドさせることなく、メモリやCPUを圧迫しない形で常時仮想マシンをバックグラウンドで待機状態にできるようになり、Windowsアプリや書類を素早く開けるようになった。

米Parallelsのカート・シュマッカー シニアプロダクトマネージャ。Appleの開発部門「Advanced Technology Group(ATG)」や米Connectix、米Microsoftに在籍していた経歴を持つ根っからのバーチャルマシンの専門家。日本通で薙刀の達人でもあるとか

続いて登壇した米Parallelsのカート・シュマッカー氏によるParalells Desktop 12のデモンストレーションでは、Parallels Desktopの起動画面から直接Windows 10のダウンロード販売ページを表示して、ISOファイルからインストール可能なこと、Windows UpdateなどのメンテナンススケジュールをParallels Desktop側で上書き制御できる「スケジュールオプション」機能が紹介された。

VM選択画面から直接ダウンロード販売ページにジャンプできる。ISOファイルをダウンロードする空容量は残しておこう

スケジュールオプションでは、夜間などにアップデートを済ませておき、朝から快適に利用できるような環境を実現しているという

仮想マシンの弱点としては、ゲームなどハードウェアアクセスを要するアプリの実行速度が挙げられるが、Paralells Desktop 12 for Macでは米Blizzard Entertainment社の最新FPS「Overwatch」の動作を最適化しており、仮想マシン上でも快適な速度で動作する様子が紹介された。また、Xbox OneのゲームをWindows 10上でストリーミングプレイする「Xbox on Windows 10」にも対応する。

会場でスタッフに確認したところ、最新のDirectXをフル利用するアプリなどは難しいが、ここ2年前後に発売されたMacであれば、CPU内蔵のIrisグラフィクスでもOverwatchをスムーズにプレイできるという

さらに、仮想マシン関連の機能ではないが、Mac上の日常的なタスクを簡単に実行するための「Parallels Toolbox for Mac」が搭載され、20個のツールが提供される。タスクにはYoutubeなどから動画をダウンロードする、などがあり、Parallels以外のアプリを使っているときでも、メニューバー項目から直接アクセスして実行できる。

ユーティリティは単独のアプリケーションとしても販売される。仮想マシンは必要ないが、こちらには興味があるという人もいるだろう

Mac単体の機能ではないが、iPad ProとApple Pencilを使ってWindowsの手書き入力機能「Ink」を利用する様子も紹介された。音声アシスタント「Cortana」も利用可能だ

下村社長は、MacではBootcamp、VMware Fusionなどさまざまな形でWindowsを動かす手段があるが、Parallels Desktop 12では高い利便性と完成度を武器に、50%以上のシェア獲得を狙っていると宣言した。

日本向けに専用SKUも投入

Parallels Desktop 12 for Macは8月23日より販売が開始されている。価格は以下の通り。

製品名 価格 備考
Parallels Desktop 12 for Mac 通常版 8,500円(税込)
Parallels Desktop 12 for Mac 乗り換え版 6,480円(税込)
Parallels Desktop 12 for Mac 3年期間更新版 20,400円(税込)
Parallels Desktop 12 for Mac 5ユーザーライセンス版 37,800円(税込)
Parallels Desktop 12 for Mac 大学生協版 6,000円(税込)
Parallels Desktop 12 for Mac USBメディア版 9,500円(税込)
Parallels Desktop tor Mac Pro Edition(1年版) 10,800円/年(税込) ※9月18日発売予定
Parallels Desktop Business Edition 1年間 10,000円/本(税込)~
Parallels Desktop 12 for Mac アップグレード版 5,300円(税込) ※バージョン10/11からのみ
Parallels Desktop 12 for Mac 通常版 8,500円(税込) ※Apple実店舗/Apple.com専売、他言語対応版
Parallels Desktop 12 for Mac Education Edition 6,000円(税込) ※Apple実店舗/Apple.com専売、他言語対応版
Parallels Desktop tor Mac Pro Edition(1年版) 10,800円/年(税込) ※Apple実店舗/Apple.com専売、他言語対応版

日本市場向けには3年期間更新版、乗り換え版、Pro Editionのパッケージ版など、日本専用のSKUが用意される。パッケージ版は基本的に買い切り型だが、3年期間更新版は3年間最新バージョンを使い続けられるサブスクリプションモデルとなる。ネットワークツールや開発者向けツールが充実した「Pro Edition」、集中運用ツールが用意された「Business Edition」も同様にサブスクリプションプランのみの販売となる。

仮想マシン環境は複数のOS環境を一度に扱えて便利ながら、仮想マシンの展開速度が遅かったり、Windows自体の複数バージョンをメンテナンスし続ける難しさなどがネックだった。Parallels Desktop 12 for Macでは、動作速度の改善やメンテナンスの自動化といった新機能で、こうした短所をうまくカバーしてくれている。業務上Windowsアプリも使わねばならない人や、複数の環境での動作検証をしたいウェブ開発者などにとっても、大きな助けになるはずだ。