VAIOがソニーから独立し、2014年7月1日に分社化してからちょうど2年が経過した。VAIOは設立2周年を記念し、長野県安曇野に位置する本社工場をプレス向けに公開。VAIOの大田義実社長や安曇野市副市長の村上広志氏らが、今後のVAIOの方針や、VAIO製PCが採択されている安曇野市のふるさと納税状況などについて紹介した。

VAIO安曇野本社工場

入り口にある「VAIOの里」の碑

大田社長「V字回復で売上倍増」

VAIOの大田義実社長

VAIOの大田義実氏は、2015年6月8日付でVAIO株式会社の代表取締役社長に就任した。VAIO2周年と同時に、大田氏も就任から1年を迎える。

大田氏は、2015年8月19日に実施した就任会見で発表した2015年度の目標をほぼ達成したと紹介した。当初掲げたその目標は「自立」と「発展」。具体的には設計からサポートまでの一気通貫体制、収益責任の意識、商品力の強化、販路の強化などが挙げられていた。

2015年8月の就任会見では自立と発展が目標とし、具体的には設計からサポートまでの一気通貫体制、収益責任の意識、商品力の強化、販路の強化などが挙げられていた。今回、新規事業とPCとの利益割合を1対1にすること以外の1項目を除きすべて達成したとして、「済」マークが付けられた。ただし利益割合は未達で、今後も継続して力をいれていく

従来営業機能を持っていなかった同社だが、設計製造から販売サポートまで一貫して行うなかで、PCに詳しい技術者が営業する技術営業部を設けたほか、国内販路の強化と独自のECサイト「VAIOストア」を立ち上げ、パートナーと海外販売を実施。また、大田氏は社員に対し「PC1機種ごとに毎日の販売と売上、原価利益を伝えている」とし、数字に対する意識を徹底させたという。

結果、VAIOは独立2年目にして「V字回復で売上が倍増」、営業黒字(2016年5月期)を達成した。特に法人市場でのPC売上が大幅に伸びたほか、ロボット製造やIoT、技術提供といった受託生産(EMS)事業が「予想以上に実績を上げた」。これら新規領域事業とPCの利益割合を、今後1対1にすることを目指すという。

2015年度の営業利益黒字化を実現

テラダ・ミュージック・スコアの2画面電子ペーパー楽譜「GVIDO」(左)、Moffのウェアラブルスマートトイ「Moff Band」(中央)、富士ソフトのコミュニケーションロボット「Palmi」とロボットスタートの英語学習AIロボット「AKA LLC」(右)。これらはEMS事業の一環で、いずれもVAIO安曇野工場で生産されている

2016年は、安定的な拡大を目標に、PCとEMS事業に加え、第3のコア事業を立ち上げると発表した。今までのEMS事業は、取引先からの注文に応じて受動的に行っているが、第3の新事業では、VAIO側を主体として、企画や設計、販売を他のパートナーと協業して展開していくモデルを想定。ジョイントベンチャー(戦略的提携)や、投資も想定して進めるという。これは大田氏の「2016年度の義務」といい、「自社でものづくりを進めていく。さらにジャンプしていきたい」と話した。

2016年度は「安定と発展」「第三のコア事業」の立ち上げを目指す

VAIOの赤羽亮介副社長。2016年6月に開催された「COMPUTEX TAIPEI 2016」でも、「快」を追求する新規事業を検討中だと話していた

VAIOは、同社製品のコンセプトを「『快』が仕事の生産性を高める。」としている。これはVAIO設立時、「もう一度、ちゃんとPCを開発するデザインポリシーを作ろう」と、開発メンバーを中心に毎週議論した際に打ち出されたものという。

第3のコア事業についてはVAIOの赤羽亮介副社長も言及し、「『快』は生産性だけではなく、『個人の好みにピッタリはまる』という快感もある。そいういう『快』を提供する準備をしている。ここでは発表しないが、お楽しみに」と、自信をみせた。


VAIO製PC、ふるさと納税で継続提供

安曇野市副市長の村上広志氏。在職期間は2016年で7年になるという

安曇野市では、「VAIO Z」や13.3型モバイルPC「VAIO S13」、15.5型ノートPC「VAIO S15」、11.6型モバイルPC「VAIO S11」LTEモデルと、多くのVAIO製品をふるさと納税の返礼品に採択している。

2015年2月に初めてVAIO製PCがふるさと納税がふるさと納税に登場した時は、160台が数分で完売する反響があった。その後、ラインナップや限定台数を更新して追加し続け、2015年度は最終的に1,591台を販売。2,014年で寄付件数202件、寄付金額4,382,000円だった安曇野市のふるさと納税は、2015年度では寄付件数4,428件、747,642,212円へ跳ね上がった。

ゲストとして招かれた安曇野市副市長の村上広志氏は「安曇野市に本社がある企業はVAIOだけ。誇りに思っている」と、VAIOへの期待をみせる。

2016年度は、7月15日現在で420台のVAIO PCへの申し込みがあったという。「総務省からは、ふるさと納税における換金性の高い品物の取り扱いについて通達があるが、安曇野市としては、VAIOが市内で生産されており、地域振興にも貢献していることから、VAIO製PCの取り扱いを継続していく」と表明した。