日本でのディズニー/ピクサー歴代興収1位を記録した『ファインディング・ニモ』の続編、『ファインディング・ドリー』が16日、公開を迎える。物語の舞台は、前作の冒険から1年後。忘れんぼうのナンヨウハギのドリーが、ただひとつ忘れなかった家族の記憶を手掛かりに、カクレクマノミのニモ&マーリン親子と共に家族を見つける冒険を繰り広げる。

タコのハンクやジンベエザメのデスティニーなど、個性あふれる新しい仲間が加わり、壮大な冒険が描かれる本作では、何でも忘れてしまう…そんなドリーだからこそ通らざるを得なかったつらい過去が明らかに。そして、ドリーを通して「欠点も個性なんだ」という大切なメッセージを届けてくれる。前作から13年という年月とともに進化したピクサーの最新技術を用いた、キャラクターやリアルな自然も本作の魅力だ。

『ファインディング・ドリー』の場面写真

指揮をとったのは、『ファインディング・ニモ』で監督を、『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』では脚本を担当したアンドリュー・スタントン。そして、テレビ作品『トイ・ストーリー・オブ・テラー!』でアニー賞監督賞に輝いたアンガス・マクレーンが共同監督を務めた。先日来日した2人に、本作に込めた思いや制作秘話を聞いた。

――まず、前作からの映像の進化に圧倒されました。来日会見でも、「驚きを与えられる映像になった」と語られていましたが、特に自信を持っているのはどんなところでしょうか?

アンドリュー・スタントン監督(右)とアンガス・マクレーン共同監督

アンドリュー:いっぱいあるけど、一番は"海草の森"かな。作るのが難しかったというのもあるけど、ロマンチックだしユニークだし、そして、『ファインディング・ニモ』と『ファインディング・ドリー』の最も違う世界観をよく表現しているところでもあるから。前作で大海原を渡らなければいけなかったニモは、まるで砂漠を縦断するような感じだったと思う。それに対して、今回の海草の森は、森林のようにおとぎ話のようにいろいろなものが隠れていて、秘密があって、そこで迷子になったりして…というそれぞれの作品の性格をよく表していると思うんだ。

マクレーン:その通りだと思う! 付け加えるとしたら、キャラクターとしてのハンク。これは、技術面でも芸術面でも、われわれがどれだけ進歩を遂げているか、見て楽しんでもらえると思う。

――ピクサーの方はいつも徹底的にリサーチをされていますが、制作にあたって海に潜ったりしたんですか?

アンドリュー:今回は潜ってはないんだ。前作では潜ったけど、今回はむしろ水族館を重点的にリサーチした。特に、その中にいる魚たちから見た水族館はどんなものだろうということで、遊びに来た人が見ないバックヤードの部分…家具や排水管、スタッフが作業しているところなどを研究した。それによって、魚からの視点の水族館を作り上げることができた。

マクレーン:いわゆる水族館の舞台裏を正確に描写できていると思うよ!

――そのリサーチで気付き、実際に映画に取り入れたという何か具体的なエピソードを教えてください。

マクレーン:タコを展示している水槽は、人工芝で囲っているんだ。なぜかというと、タコの足がそれだとくっつかず、逃げられないから。タコは脱出を試みるという習性があり、それを防ぐためにそういった工夫が施されている。何度もタコが脱走してタコを見つけるという話は実際に物語に取り入れたし、擬態化という点もリサーチから学んだものなんだ。

ドリーの赤ちゃん時代"ベビー・ドリー"

――ドリーの赤ちゃん時代"ベビー・ドリー"がとてもかわいかったです! そのベビー・ドリーから、何段階かドリーの成長が描かれていましたが、ドリーの成長を描くにあたって意識した点は?

アンドリュー:どのくらい長いこと海を彼女がさまよっていたのか…悲劇だと思う。それを表現するために、ドリーが本当にずっと1人だったんだということを見せる必要があった。そして、前作であんなにポジティブだった彼女は実は痛みを抱えていて、だれかに置いて行かれることをこんなにも恐れているということを感じさせなければいけないと考えた。ドリーに痛みを与えるのは、僕らにとってもつらかったね。

――ビジュアル面で意識したことは?

アンドリュー:ベビー・ドリーについては、全部、目だよ(笑)

マクレーン:確かに目がほとんど(笑)。とにかく最大限かわいく、もうこれ以上は無理っていうくらいのかわいさを出したかったんだ。壊れるくらいかわいすぎるキャラクターをという思いで作り上げたのが、あのベビー・ドリーだ。

アンドリュー:基本的に、目とヒレだけ! そこにちっちゃい口がついている(笑)

――目がポイントなわけですね! 映画を通して笑えるシーンがちりばめられていましたが、そこは意識的にそうしたんですか?

アンドリュー:マーリンに比べてドリーはよりユーモラスでおかしみがあるから自然と笑いが増えたんだ!

マクレーン:ドリーがおもしろいからっていうことだね!

――本作では、「欠点は個性」「ありのままの自分を受け入れられたら幸せだ」という大切なテーマが根底にありますが、このテーマに込めた思いをお聞かせください。

アンドリュー:それが、ドリーがしなければならないことだと僕は最初から思っていたからなんだ。ドリーのことが心配になり、ドリーの物語は未完だと思って続編を作ろうと決めた段階から、彼女を海で1人さまよう最悪な状態に追い込まなければいけないけれど、彼女の内なる自信が「大丈夫だ」と言ってくれるという状態をつくろうと考えた。「自分を信じればいいんだ」というのは、どんな親も自分の子供に願うことだと思う。そこがゴールだというのは最初から見えていたんだ。

――今回登場したキャラクターで、心配なキャラはいませんか?

アンドリュー:なるほど、そうきたか(笑) 

マクレーン:劇中に出てくるおもちゃのロボットの魚はどう?(笑)

マクレーン:いいね! みんな『ファインディング・ハント』を作ればって言うんだけど、僕自身8年間、水、魚とつきあってきてちょっとお休みがほしいので、まずは『ファインディング・アンドリュー』かな(笑)

■プロフィール
アンドリュー・スタントン
1965年、米マサチューセッツ州出身。カルアーツ(カリフォルニア芸術大学)でキャラクター・アニメーションを学び、90年にジョン・ラセターに次ぐ2人目のアニメーター、および9人目の社員としてピクサーに入社。現在、クリエイティブ部門のヴァイス・プレジデントとしてすべてのピクサー作品を監修している。監督を務めた『ファインディング・ニモ』(03)と『ウォーリー』(08)でアカデミー賞長編アニメーション賞を獲得した。

アンガス・マクレーン
1975年、米オレゴン州出身。ロードアイランド・スクール・オブ・デザインで学び、97年にピクサーに入社。アニメーターとして、『バグズ・ライフ』(98)から『トイ・ストーリー3』(10)まで、ピクサーの長編作品すべてに携わってきた。テレビ作品『トイ・ストーリー・オブ・テラー!』でアニー賞監督賞を獲得。本作で、アンドリュー・スタントンと共同で初の長編監督デビューを果たした。

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