学研プラスは、同社刊『マインクラフト建築ガイド 絶対作れる設計図つき』の発売を記念して、紀伊国屋書店 玉川高島屋店で「Minecraftプログラミング体験 親子でワークショップ!」と題したイベントを実施している。今回は6月末に開催された同イベントのレポートをお届けする。

「Minecraft(マインクラフト)」は、スウェーデンの企業であるMojang(モーヤン)が開発したブロックゲームで、全世界で5,000万本以上を販売している。Minecraftを知らない小・中学生はいないと言われるくらいの人気で、Mac、Windowsや各種コンシューマーゲーム機などさまざまなプラットフォームで楽しむことができる。

子供向けの解説書も数多く出版されており、学研プラスからは前述の『マインクラフト建築ガイド 絶対作れる設計図つき』が刊行された。同書はMinecraft上でブロックを用いて作る「建物」の詳細な「設計図」をすべての建物に付けたことで、比類のない内容に仕上がっている。

『マインクラフト建築ガイド 絶対作れる設計図つき』
学研プラス/2016年4月22日発売
192P/A5版/オールカラー/990円(税別)

Minecraftには、モノづくりやプログラミングの要素があり、教育目的での利用に注目が集まっている。本国スウェーデンでは、必修科目として採用する学校があったり、スコットランドには都市計画をMinecraftで教える学校も存在する。そこで、学研プラスはMinecraftを題材とした「Hour of Code」というプログラミング学習サービスを利用して、親子でプログラミングを学ぶワークショップを企画。今回、実施の運びとなった。

Hour of Codeは、コンピュータサイエンス教育普及を推進するNPO団体であるCode.orgが提唱している運動で、180カ国以上の生徒数千万人が参加している。マイナビニュースでも何度かApple Storeで実施されワークショップをレポートしてきたが、Hour of Codeのイベントは誰でもどこでも開催することができるようになっている。

今回のイベントは紀伊国屋書店 玉川高島屋店内のCURIOファクトリーで開催。6歳から15歳まで、210の応募が集まったとのことだ。

開始に先立って、講師の皆さんが自己紹介。筆者が尋ねた回は専修大学の学生が担当していたが、ほかに、中央大学、早稲田大学、日本工学院(専門学校)の学生が講師を務めているという。

まずは、プログラミングって何だろう? ということで、ぬいぐるみを利用してその概念がどんなものであるかレクチャーが。実際にコードを書く前に、これで理解を深められ、子供たちも得心が行くという様子である。続いて、Minecraftプログラミングのデモが披露された。

学研プラス メディア事業部の佐久裕昭氏からイベントのコンセプトについて説明が

Hour of Codeでプログラミングを始める前に、 学研プラス メディア事業部の佐久裕昭氏から、2020年より始まる文部科学省の新学習指導要領についての説明があった。現在、文科省はプログラミング教育の必修化を盛り込む方向で議論を進めているが、佐久氏は、国際競争における日本のIT分野での遅滞した状況を指摘した上で、プログラミングを学ぶことは職業の選択肢を広げることであり、生きる力を育くむことだと強調した。

iPadを使ってコードを書く

そして、iPadを使っていよいよコードを書く作業に突入。用意されたチュートリアルを進めることで、プログラミング言語のイロハを学べるようになっており、MinecraftのキャラクターであるSteveかAlex、どちらかを選んでプログラムの構築を行っていく。プログラミングは、「前方に移動します。」「左に曲がる」「右に回転」といった基本的な動きが書かれたブロックを組み合わせて作業を進めるのだが、筆者が取材した回の参加者は、要領よく進められる子が多かったという印象だ。躓いたときは講師がぬいぐるみを手にアシストに入る。アシストすると言っても、答えを与えるのではなく、ヒントを出すにとどめ、論理的思考を育むというワークショップのテーマからは決して外れない。

ぬいぐるみを使ってヒントを出す

作業の早い子は、30分ほどですいすいと10問以上解いていった。スタッフに伺ったところ、普段からiPadを使ってプログラミングに親しんでいる子も何人かいるようだとのことであった。

休憩を挟んで後半へ突入。ここではFOR文とIF文の使い方が解説された。ちょっと高度ではあるが、これが使えるようになると、コード全体がすっきりしてくる。エレガントなプログラムを書くには欠かせないワザだ。

FOR文とIF文を駆使して作業は続く。全体で1時間程度だったろうか、全14ステージをクリアできた子も何人かいたようだ。今日の成果を付き添いの父兄に報告した後、修了証が授与された。子供たちは嬉々として修了証を受け取り、最後は皆で記念撮影。

修了証を受け取って記念撮影

佐久氏は、イベント終了の挨拶で、現状の学研プラスの取り組みについて報告。「Gakken Tech Program」というプログラミング学習の場を提供する準備をしてる模様だ。今回のワークショップをさらに発展させた、夏休みや冬休みに開催するプログラミングキャンプ、塾形式のプログラミングスクールの開校を予定しているという。Facebookページも開設されているので、気になる方は是非チェックして欲しい。また、本ワークショップも追加開催が決定しており、2016年7月17日(日)/7月24日(日)/8月7日(日)/8月21日(日)と、計4回が同会場で実施される。詳細はこちらを参照頂きたい。

Hour of CodeのイベントはApple Storeでも何度か実施されていると前述したが、今後、アップルが展開する企画も気になるところだ。というのも、アップルはWWDC2016で、ゲーム感覚でSwiftの基本やプログラミングのコンセプトを学習できる「Swift Playgrounds」を発表しているからだ。

今秋、無料での提供が予定されているSwift Playgrounds

「Swift Playgrounds」も今回紹介したMinecraft Hour of Codeのように、キャラクターを動かしながらプログラミングのイロハを学べるようになる。ここ何年かは12月のコンピュータサイエンス教育週間に合わせHour of Codeのイベントを実施してきたが、Swift Playgroundsは今秋登場予定なので、もしかしたら、今年は企画内容が切り替わるかもしれない。

筆者は、アップルが適正なアファーマティブ・アクションに基づく、多様な人材獲得を目指していると指摘した。そのためには、学校教育の段階から介入、支援を行う必要があるとも。Swift Playgroundsは、まさにそうした背景から登場したとも言えるのではないだろうか。

若い開発者の育成はいずれにしても重要な課題である。何処の誰が取り組むにせよ、プログラミング教育の推進については今後も注視していきたいところだ。