2016年7月7日(以下すべて米国時間、日本は7月8日早朝)、MicrosoftはWindows 10 Insider Preview ビルド14383を、Fastリングを選択したPCとモバイルデバイス向けにリリースした。ついにデスクトップのウォーターマーク(電子透かし)を取り除き、リリース直前の兆しを見せている。

最終コーナーを回り、バグフィックスの完了を待つビルド14383

前回の記事では、Microsoft WDG(Windows and Devices Group) Software EngineerのDona Sarkar氏が、Continuum for Phone対応アプリケーションコンテストを行っていると紹介した。今回の公式ブログでは、その結果が報告され、ベトナムのVuong Chung氏が作成した屋内でトレーニングを行う際のパーソナルトレーナーを務める「Perfect Workout」というアプリケーションが優勝。コンテストはHPがスポンサーとして参加し、Chung氏にはSurface BookとHP Elite XP3 phone、Lumia 950とContinuum Display Dock、Office 365サブスクリプションにVisual Studio 2015 ProとMicrosoft Store用広告クレジット1,000ドル分が送られた。

前回紹介したContinuum for Phone用アプリケーションコンテストで勝利を勝ち取ったベトナムのVuong Chung氏(右 公式ブログより抜粋)

Chung氏作の「Perfect Workout」。100種類以上のトレーニングを可能似するパーソナルトレーナーアプリケーションだ

Windows 10 Insider Preview ビルド14383をインストールして最初に気付くのは、デスクトップの右下に表示されていたウォーターマーク(電子透かし)がなくなった点だ。また、それに伴いバージョン情報ダイアログからも「評価版です~」というメッセージが取り除かれた。過去のInsider Previewやそれ以前のパブリックプレビュー版を使ってきたならお気付きのとおり、ウォーターマークの除去は完成直前を意味している。Sarkar氏は、「2016年8月2日のWindows 10 Anniversary Updateリリースに向けて、最終的なコードチェックを始めた」と説明しているが、インサイダーに対してはリリースまでに複数のInsider Previewビルドが提供されるようだ。

デスクトップからウォーターマークが取り除かれ、バージョン情報ダイアログからも「評価版~」のメッセージが消えた

もちろん本ビルドが安定し、バグが潜んでいないとMicrosoftも考えてはいない。それならSlowリングにも何らかのビルドが提供されるからだ。現在のSlowリングは6月28日に公開したビルド14372。筆者はRelease Previewリングを選択したデバイスを用意していないが、少なくともRelease PreviewリングにWindows 10 Insider Previewが提供されるようになって、初めて"リリース目前"といえるのだろう。

さて、いつもどおりPC版およびモバイル版の主な改善点と既知の問題を紹介しよう。まずはPC版の改善点から。

  • Microsoft Edgeの拡張機能インストール時は、直接Windowsストアにアクセスする。以前は<ストアから拡張機能を取得する>をクリックする必要だった。
  • Cortanaのリスニングモードを呼び出すショートカットキーを、[Win]+[C]キーから[Win]+[Shift]+[C]キーに変更した。これは意図せずにCortanaをアクティブにしてしまうというフィードバックに基づいたものだ。
  • 本ビルドから、アクションセンターのクイックアクションエリア設定(クイックアクションの入れ替えなど)がアップグレード時も維持される。
  • Surface Bookで外部ディスプレイをプライマリとして使用している際、ディスプレイの再接続時に発生していた表示問題を修正。
  • 「設定」のタスクバープレビューウィンドウでメディアコントロールが表示されていた問題を修正。
  • DPIが異なる2つのディスプレイ環境で、コピー時になどに現れるファイル比較ダイアログの描画が正しくなかった問題を修正。
  • ハイコントラスト環境でアプリケーションバーのトグルボタンが正しく表示されなかった問題を修正。
  • リモートデスクトップ接続使用時、ウィンドウを最大化すると資格情報UIウィンドウが背面に回ってしまう問題を修正。
  • 一部のディスプレイ構成で、ツールチップ表示後にエクスプローラーがハングアップする問題を修正。
  • Arc Touch Mouseなど特定のBluetoothマウス使用時に、マウスカーソルの移動が時々不安定になる問題を修正。
  • Microsoft Edgeと「ナレーター」の組み合わせで、ハイパーリンクリストを正しく認識できない問題を修正。
  • Microsoft Edgeの拡張機能「LastPass」使用時に特定のWebサイトでメモリーリークが発生し、Microsoft Edgeが無応答になる問題を修正。

次はモバイル版の改善点を紹介する。

  • ロック画面をよく確認するユーザー向けにバッテリー性能を改善。
  • Microsoft Edgeで埋め込まれた地図のズームイン&ズームアウトを行うと、意図しない場所にジャンプしてしまう問題を修正。
  • Lumia 640など特定のデバイスでYouTube動画を再生中にボリュームをミュートできない問題を修正。
  • Bluetooth経由で車に接続した際、通話を終了するボタンをタップしても動作しない問題を修正。
  • フランスの「Orange SIM」使用時にWindowsストアでコンテンツを購入できなかった問題を修正。
  • 「Grooveミュージック」使用時、手動で一時停止・再生を行った後、予期せぬタイミングで楽曲再生が一時停止してしまう問題を修正。
  • 一部の言語とWindows Phone 8.1アプリケーションで「@」やユーロマークが「a」「e」と表示される問題を修正。
  • Lumia 535など特定のデバイスでWindows Phone 8.1アプリケーション(ゲーム)がスローモーションで再生する問題を修正。
  • ディスプレイがオフの状態で近接センサーによる通知を受け取れない問題を修正。
  • デバイスのハードウェアリセット後にビジュアルボイスメールの設定が現れない問題を修正。
  • 「Sim 2」など一部のアプリケーション名がタイルに表示されない問題を修正。
  • Continuum for Phoneや拡張デスクトップから、複製に切り替える際、DPI設定を変更しているとスタート画面のスケーリングがおかしくなる問題を修正。
  • 不在着信情報を「電話」のライブタイルに表示するカウント数が正しくない問題を修正。

ここからはPC版の既知の問題を紹介する。

  • 評価版で7月15日までの試用期限を通知するポップアップが現れるが、OSの有効期限は切れないので安心してほしい。
  • Hyper-Vの仮想マシンでセキュアブートが有効にし、Windows Server 2016 Tech Preview 5が正しく動作しない。その場合は一時的にセキュアブートを無効にすることで回避可能だ。

最後にモバイル版で確認されている既知の問題を紹介する。

  • 「ボイスレコーダー」の通話記録が正しく動作しない。
  • Microsoft EdgeでPDFファイルを開いた際にスクロールやパン、ズームといった操作ができない。
  • OneDriveに格納しているバックアップ形式を変更し、サイズ縮小に努めている。その結果、Windows 10 Insider Previewのバックアップデータを、Windows 10 Mobile ビルド10586に復元すると、スタート画面のレイアウトが復元しないなど正しく動作しない。

Windows 10 Mobile Insider Previewに関しては、古いデバイスでバッテリー寿命が著しく減少する問題やWi-Fi接続が切断してしまう問題を改善したようだ。なお、ビルド14383リリースに合わせたSDKも本日から公開している。もちろんプレリリースビルドのため、本SDKを用いて作成したアプリケーションはWindowsストアに登録できないが、新APIの動作を確認する場合は、合わせて入手しておこう。

今回合わせてリリースされた「Windows 10 Anniversary SDK Preview Build 14383」

阿久津良和(Cactus)

前回の記事はこちら
・Windows 10 Insider Previewを試す(第58回) - 7回のビルドアップを行った2016年6月最後のビルド14379
http://news.mynavi.jp/articles/2016/07/01/windows10/
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Windows 10 すべてがわかる特集記事はこちら
【特集】~インストールから設定・活用まで~ すべてが分かるWindows 10大百科
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