米国のロボット掃除機市場において、ルンバに次いで第2位のシェアを持つネイトロボティクス。日本に進出してから約2年が経過し、少しずつその存在感を高めようとしている。自動運転車にも採用されているレーザーナビ技術を採用することで、部屋の形状とレイアウトを認識して、最適な掃除ルートを選択。独自のDシェイプのフォルムは、前方の直線的デザインにより、角にぴったりとフィットし、コーナーのゴミまで取ることができる。米国では、アマゾンのカスタマーレビューをはじめとする口コミでその良さが広がり、潜在的な実力にも注目が集まっている。今後、日本での展開はどうなるのだろうか。2015年10月に日本法人社長に就任し、陣頭指揮を執る竹田芳浩社長に話を聞いた。

ネイトロボティクス 代表取締役社長 竹田芳浩氏

日本で販売中の現行上位モデル「Botvac D8500」

シリコンバレー生まれの技術集団

米ネイトロボティクスが産声をあげたのは2005年。米スタンフォード大学の起業家支援制度を利用して、同大学の3人の学生が「女性が使える家庭用ロボット」の開発を目的として、シリコンバレーで設立した。

ロボット掃除機「ルンバ」を開発したiRobotが、マサチューセッツ工科大学の関係者により創業されたのと比較すると、東海岸と西海岸という立地はまさに対照的だ。

そして、ネイトロボティクスはロボット掃除機専業という点にこだわっている。社員数は全世界で約100人。そのうちの約6割がエンジニアで構成されるという技術集団だ。アップルやグーグル、ヒューレット・パッカードなどのIT関連企業の出身者も多い。そして、現在、米ネイトロボティクスのCEOを務めるジャコモ・マリーニ氏は、PC周辺機器メーカーのロジテック (日本ではロジクール) の創業者でもある。

「シリコンバレーらしい、わいわいがやがやの雰囲気を持つ企業風土が特徴」と、ネイトロボティクス日本法人の竹田芳浩社長は語る。

同社がロボット・バキュームを語源とした「Botvac (ボットバック)」ブランドのロボット掃除機第1号製品を投入したのが2010年のこと。創業から5年という長い歳月を経て、初めて製品を世の中に送り出した。

レーザーセンサーと人工知能がカギ

5年もの時間をかけて、同社が研究を重ねたのがロボット掃除機・Botvacの中核となるレーザーナビ技術であった。ここにも技術集団である同社のこだわりがある。

このレーザー技術により、360度に渡って、1秒間に1,800回も部屋の状態を測定するとともに、米グーグルの自動運転車にも採用されている「SLAM (Simultaneous Localization and Mapping)」をベースに、同社独自の人工知能「Botvision」を開発。室内の形状や、家具のレイアウトを瞬時に判断して、部屋の壁ぎわ約1cmのところに沿って移動しながら掃除する。競合他社の製品はカメラで認識するものが多いが、これらの製品はどうしても机の下などの暗い部分の認識が不得手になる。だが、業界でほぼ唯一といっていいネイトロボティクスのレーザー技術では、そうした問題も解決できる。

レーザーセンサーこそが、ロボット掃除機・Botvacのキモ

「ランダムに部屋を動き回るのではなく、部屋の形状や家具のレイアウトに合わせて、規則性のある直線的なパターンで移動する。効率的に掃除ができるのが特徴」という点も、こだわりの開発成果によるものだ。

衝突をできるだけ避けて直線的に進むため、競合他社の製品に比べて約4分の1の時間で掃除ができる。これは、稼働面積を増やすことにもつながり、省エネにも寄与する。

また、隣の部屋を自動で認識するマルチルームクリーニング機能を搭載。ひとつの部屋を掃除し終わると、隣の部屋へ移動して掃除を開始することも可能だ。部屋ごとにロボット掃除機を人間が運ぶといった手間がない。

さらに、オートスケジュール機能を搭載しており、あらかじめ設定しておいた時間に毎日自動で掃除を行う。最大稼働面積は126畳と、業界トップクラスの掃除能力を持つが、仮に、掃除中にバッテリー残量がわずかになっても、自動で充電台に移動し、充電完了後には掃除を中断した場所に戻って、掃除を再開する。