厚生労働省の「人口動態統計年報」(平成21年)における日本人の「死因順位」では、「脳血管疾患」が第3位に入っている。その脳血管疾患で多くの人が耳にしたことがあるものに脳梗塞が挙げられるだろう。
発症後にさまざまな後遺症が出ることでも知られる脳梗塞だが、その程度を緩和させるために必要なのがリハビリテーション(リハビリ)だ。医療現場では一体、どのようなリハビリが行われており、家族はどのように患者を支えればよいのだろうか。高島平中央総合病院脳神経外科部長の福島崇夫医師に、脳梗塞のリハビリテーションについて伺った。
3段階に分けられるリハビリ
脳梗塞のリハビリは通常、入院後1週間くらいまでの時期に開始する「急性期」、急性期後の身体機能の回復を促すために積極的にリハビリをする「回復期」、退院後に行う「維持期」の3段階に分けて行われる。
発症後24時間以内の「超急性期」でリハビリを開始した方が予後が良好になりやすいというデータもあるため、最近では全身状態が不安定などの場合を除き、かなり早い時点でリハビリを開始するケースも少なくないという。
「最近ですと、発症後に早めに立たせるとか座らせるとかいった動作を積極的にさせることが、長期的に見れば予後の改善につながり、社会復帰率も高くなるというデータが報告されています。そのため、リハビリの早期介入は非常に重要視されています」。
急性期
それでは、一つひとつの段階でどのようなリハビリを行うのかを具体的にみていこう。まず、急性期では下記のようなことを行う。
(1)体の向きを変える
(2)手足を正しい位置に保つ
(3)まひ側の手足を動かす
特に注意してほしいのが(3)だ。
寝たきりの状態でまったく体を動かさないと、関節拘縮(こうしゅく: 関節の動きが制限された状態)や褥瘡(じょくそう)、静脈血栓症などを併発する可能性がある。特にまひ側では静脈血栓症を併発しやすく、いわゆるエコノミークラス症候群を合併することがあるため、弾性ストッキングやフットポンプを使用しての発症予防が大切。
「早期に離床しリハビリを行うことで、いずれかの発症を防ぐことは可能です。また、まひを起こしている患者さんは『肩手症候群』になってしまう可能性が出てきます。症状として、まひしている側の肩関節や手関節が腫れ、炎症や痛みを伴うことがあります。急性期のまひではそういうことが起こるので、まひ側のケアやポジショニングが大事です」 。