東京大学は、学内の教育用計算機システム(ECCS)を更新し、新たに21.5インチiMacを1,341台導入した。同大学では2004年に共用パソコンをMacに移行。通算4期目のiMac採用となる。

大演習室にずらりと並んだiMac。壮観

2004年の導入時、Linuxベースのパソコン約1,400台がiMacにリプレースされた。この時の台数は約1,150台。2期目は1,362台、3期目は1,321台の微減となったが、4期目は20台増の1,341台となっている。

学内全体で1,341台が設置されているという

2004年の時点ではMacの導入に驚く声もあったが、目立った問題は起きず安定して運用されているとのことだ。iMacは情報処理教育およびプログラミング教育用、また通常の学生がWebサイトやメールを閲覧するために用いられている。今期採用されたのは、21.5インチCore i5 2.8GHz搭載モデル(従前はCore i5 2.5GHz)、メモリは16GB(従前は4GB)、起動ディスクはSSD(従前はハードディスク)となっている。現行モデルは光学ドライブ非搭載なので、10台に1台程度の割合で外付けの光学ドライブを設置している。

これまでは専修ごとにMacとWindowsを併用していたが、3期目から全面的にiMacを採用し、ブートキャンプ機能を利用して、端末起動時にOSをMac OSとWindowsから選択できるようにした。ソフトウエアは各種プログラミング言語環境に加え、統計処理用に「JMP」、数式処理に「Mathematica」、CADに「Inventor Professional」と「3ds max」(それぞれWindows環境のみ)、そしてオフィスアプリケーションとして「Microsoft Office」が利用できる。今期はウイルス対策ソフトが変更され、「ESET Endpoint Protection Standard」がインストールされているそうだ。

東京大学情報基盤センター 情報メディア教育研究部門の柴山悦哉教授

多様な分野での履修においては、OSが一種類では賄えないと、同大学情報基盤センター 情報メディア教育研究部門の柴山悦哉教授は語る。MacがあればUNIXが欲しいというニーズにも応えられるし、もちろん、ブートキャンプでWindowsも動く。Macを選ぶというのは理にかなったことであると言えよう。OSは、Mac/Windowsともに最新のものがインストールされている、それぞれ、OS X El Capitan/Windows 10だ。

iMacの採用当時、UNIXが動くということ以外、管理がしやすい、トータルでのコスト面で有利という2点が高く買われたのだが、これらについては現在、評価が変わっているのかどうか柴山教授に伺ってみた。

柴山教授 管理のしやすさという点では、集中管理のソリューションがWindowsでも結構出てきているので、比較してみないと分からないですね。差は小さくなっているとは思いますが。かつてはネットブートが楽だったのですが、それが段々と厳しくなってきて。以前は起動ディスクがハードディスクでしたけど、現在はSSDが主流になっていますよね。そうするとブート時間が短いというのが世の中の標準なので、それを集中管理で、同じように起動させるのは無理という状況になっていますので。導入当時はネットブートが話題になったことがあったのですが、現在はローカルブートになっていますね。コストという点では、WindowsやLinux環境もなくはないですが、(ここ数期の)過去の資産を流用できるという優位性はあるかもしれませんね。

学生の反応はどんな様子なのだろうか、もしかしたら高校の授業や家庭でWindowsを使っていたということも考えられるが。

柴山教授 初めてMac触るので頑張りますという学生もいるにはいますが、使えないっていうほど差が大きいってことはないと思います。昔は見慣れないものがある、といった感じだったのですが、最近はiPhoneやiPadなどのiOSデバイスを入り口にしている学生が多いので、違和感なく使えているようです。

研究機関であることを放棄し、就職予備校と化した大学には、平気で「会社入ったらWindowsだから」というような発言をする教員も少なからず存在するようだが、半数以上の学部生が大学院へと進学する東京大学ではMacが選択されている。研究者の道を選んだ学生にとって、Macをチョイスすることは積極的な意味を持つのだろうか。

柴山教授 研究分野によってメリットが大きいところと少ないところとあるでしょうね。デザイン方面を専攻してるとやはり多いです。あとは開発系も。元々UNIXでBSDを使ってたという人の間では特に。それと教育系ですかね。WindowsはCADを使う分野で多用されているイメージです。そこはやはり分野ごとのカルチャーがあるのではないでしょうか。ただ、こういう環境でMacにアドバンテージがあるとしたら、ダウンロードしたアプリケーションがそのまま使えるという点ですね。Windowsだと、どうしてもインストーラーが必要だったりすることがあるので。

取材に伺った際、ECCSを管理しているサーバ室を見学することができた。ここにはEMC Isilon S210が10台、Isilon NL410が5台鎮座していたが、その隣にはMac miniとMac Proが配備されていた。これらは非常勤の教員らが学外からアクセスできるように用意されているとのことで、最大15人までの接続に対応する。

EMC Isilon S210(左)とIsilon NL410

Mac mini(左)とMac Proも配備。学外からのアクセスに対応する

柴山教授からお話を伺って、4期連続で採用された理由、Macに対する大学の評価は分かってきたが、その採択までのプロセスは一体どうなっているのだろう。

柴山教授 基本的には入札制なので、入札の仕様書があって、その前に学内でアンケートを実施という形ですね。まず、どんなアプリケーションが必要なのかという質問項目があるのですが、それに対する回答が殆どMacかWindowsのものどちらかなんですよ。そうなると、選択は自ずとMacになるというのがこれまでの流れです。ほかにはメモリがどの程度欲しいのかとか、記憶媒体の容量はどれくらいがいいのかといった多岐に亘る質問が設けられています。それを講義の担当者と一般利用者に実施して、その内容を吟味して仕様策定委員会で決定するといった按配です。

教員はもとより、学生の間でもMacの支持率が高いというのもあるかもしれない。学生は当たり前のようにiPhoneを使っているので、組み合わせて使い勝手の良いMacに人気が集まるのも頷ける。

取材後、学内にある生協へと足を運んだのだが、生協推奨PCとして13インチMacBook Airが選ばれていた。貼ってあったポスターには「駒場モデルパソコンはMacです」という文言も。これは大学側でなく、学生主導で決定されたようで、やはり学生からも高い支持を得ていることが伺えた。

アップルは現在、学生や教職員のユーザー向けに「新学期を始めよう」キャンペーンを実施しており、対象となるユーザーがMacを購入した場合、Beats by Dr. Dreのヘッドフォンがプレゼントされる。さらにMacには、学生・教職員価格が適用されるので、このキャンペーンを是非ご利用頂きたい。但し、実施期間は明日、4月29日(金)までとなっているので、大急ぎで情報をチェックして欲しい。