"ホテルと海"と言えば、地方のホテルをイメージする人が多いかもしれないが、都市部にもたっぷり海を感じるホテルがある。これからの季節、海を楽しめるホテル評論家イチオシのホテルを、「シャンパン」「ヒストリー」「リビング」をキーワードにして紹介しよう。

海辺のホテルならではの楽しみ方がここにはある(写真は「神戸メリケンパークオリエンタルホテル」の客室からの眺望)

潮風を感じながらシャンパンを好きなだけ

まず紹介するのは、東京ベイを臨む「ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ」(東京都港区)。ホテル6階の「レインボーブリッジビュー&ダイニング&シャンパンバー マンハッタン」は、ルーフトップテラス&ダイニングとして人気。特にこれからの季節は、潮風を感じるテラスで、眼前に雄大なレインボーブリッジ、左手には「リトルマンハッタン」と称される隅田川の夜景、右手には東京タワーという欲張りな眺望をめでつつシャンパンを楽しみたい。

「ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ」の6階にはルーフトップテラス&ダイニングがある

オススメは、90分間シャンパンがフリーフロー(おかわり自由)となる「ジュエリープレート フリーフロープラン」。フリーフローはシャンパン(ランソン)をはじめ、生ビール、赤白ワインほかソフトドリンクやノンアルコールカクテルまで充実のラインナップだ。シェフ特製のジュエリープレートは、冷菜からカルパッチョやマリネなど、シャンパンのお供に抜群のセンスで応える。もちろん、宿泊者ではなくても利用可能だ。

シャンパンを片手に東京の海を楽しむのもいい

この充実の内容でひとり6,500円で楽しめるのはうれしい(別途税金・サービス料12%/注文は2人から)。シャンパンで火照った身体に心地よい潮風、そしてダイナミックな夜景。リーズナブルにぜいたくな時間を楽しみたい。

クラシックホテルで港町のヒストリーに触れる

続いては、港町・横浜を象徴する山下公園に面し、圧倒的な存在感を誇る「ホテルニューグランド」(神奈川県横浜市)をオススメしたい。山下公園からみなとみらいまでの絶景を楽しめるタワーは、高層から海を感じられる客室となっている。

「ホテルニューグランド」の目の前は港になっている

景観のみならず、海と共に息づいてきたヒストリーを感じる本館のステイもいい。日本と外国との往来の歴史は船に始まるが、近代において横浜港は玄関口として多くの渡航者が行き交った場所。そんな横浜で、昭和2年(1927)に開業したこのヨーロピアンスタイルのクラシックホテルは、まさに正統派ホテルと言えるだろう。

ホテルニューグランドの客室(ベイブリッジ側)

伝統と格式のホテルゆえ、ホテル発祥のグルメも多い。国民的な料理となっているスパゲッティナポリタンやプリンアラモード、シーフードドリアも発祥だ。海風を感じながら、歴史の深さを実感させてくれるホテルステイもまた、魅力的なものである。

バルコニーがリビングになる空間

この横浜とよく比較されるのが神戸である。横浜に負けないくらい、洋館や中華街など見所もたくさんあり、そして、海辺のホテルという点においても横浜とともにオススメしたいホテルがある。最後に紹介するのは、神戸港に浮かぶシップホテルのような最高立地のデラックスホテル「神戸メリケンパークオリエンタルホテル」(兵庫県神戸市)だ。

白い波がイメージされた建物は、まさに海のリゾートとも言えるシティホテル。館内もロビーラウンジをはじめ、ライティング、BGMなどリゾート感は高く上質な空気感にあふれている。全客室バルコニー付きで、神戸を望むパノラマと美しい夜景が見渡せる。

そんなホテルに誕生したのが、一部客室のバルコニーをリニューアルした「アウト ドア リビングルーム」。"バルコニーをセカンドリビングに"というコンセプトのもと、バルコニーに厳選した家具や照明、観葉植物が配されるなど、リビング的なマルチスペース空間。テーブルや椅子、ソファなどが配されているので、本を読んだりオープンエアダイニングを楽しんだりと、多彩な使い方ができそうだ。三方海に囲まれている眺望ホテルで爽やかな海風を感じたい。

「神戸メリケンパークオリエンタルホテル」は全室バルコニー付きで"アウトドアリビング"仕様になっている

都市型ホテルと言えば、複合ビルの上層階から街を見下ろすというイメージもあるが、ホテルステイが非日常性だとすれば、海とシティホテルの親和性は高い。これからのシーズン、海を感じる近場のデラックスホテルへ出向いてみてはいかがだろうか。

※記事中の情報は2016年4月取材時のもの

筆者プロフィール: 瀧澤 信秋(たきざわ のぶあき)

ホテル評論家、旅行作家。オールアバウト公式ホテルガイド、ホテル情報専門メディアホテラーズ編集長、日本旅行作家協会正会員。ホテル評論家として宿泊者・利用者の立場から徹底した現場取材によりホテルや旅館を評論し、ホテルや旅に関するエッセイなども多数発表。テレビやラジオへの出演や雑誌などへの寄稿・連載など多数手がけている。2014年は365日365泊、全て異なるホテルを利用するという企画も実践。著書に『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。

「ホテル評論家 瀧澤信秋 オフィシャルサイト」