年々その勢いを増している一大ホビーイベント「ワンダーフェスティバル(通称:ワンフェス)」。夏と冬の年2回開催されておりプロ、アマを問わずガレージキットを持ち寄って展示・販売するイベントだ。
2月7日に開催された「ワンダーフェスティバル2016」にて、ワコムは原型製作アプリ「ZBrush」とタッグを組んでブースを出展。液晶ペンタブレット「Cintiq 27QHD touch 」「 Cintiq 22HD touch」「Cintiq 13HD」、OS搭載タブレット「Cintiq Companion 2」の製品を体験できるブースを展開した。
同ブースの「もっと知りたい!あなたのためのデジタル原型ステージ」では、デジタル原型製作において最もポピュラーなソフトPixologicの「ZBrush」を使用したセミナーやパネルディスカッションなどが開催され、各回とも瞬時に席が埋まるほどの好評を博していた。今回は[おとなの美術室]深川克人氏による「ホントのところはどうなのよ?デジタル造形徹底分析!」と称し開催されたセミナーをレポートしたい。
同セミナーでは「デジタル造形のメリット・デメリットやアナログの違い」などについて重点的に解説。3D初心者でも非常に分かりやすい導入的な内容に加え、多数あるスカルプト造形ツールの種類ごとの解説なども行われた。
深川氏は、「近年思うことですが、3D原型に関してノウハウの共有を気軽にできるようになったってすごいことですよね。昔はそんなことできなかった。わからないことを人に聞いたり、使えるブラシの情報を共有したりするというのはすごく有益だと思います。教える側も分かりやすく伝えるために自身がより深く理解しようとするから必然的にスキルアップする。そんないい循環が業界に芽生えてきて、すごく盛り上がりを感じています」と、デジタル化の恩恵についてにこやかに語る。
デジタル造形を始めるにあたり気になるのは、まずどんな利点があるのかということだと思うが、なかでも「左右対称造形が自動的にできる」というのはかなり大きなポイントとなるだろう。
アナログ造形で粘土をこねながら左右対称を作っていくのは意外に難しく時間のかかる作業だが、デジタル3D造形であれば、わずか数アクションで作成が完了。さらにZBrushを使う場合、既にポーズがついていて左右対称になっていなくても、ローポリゴンで動かせばシンメトリーを崩さずに簡単に調整が可能なのは見逃せない。
またアンドゥ(Ctrl+Z)で製作の過程を確認しながら進めたりできる点や、再編集の自由度が高い点、着色した状態のまま造形作業が可能なため、イメージがつかみやすく完成系が見えやすいのもメリットだ。
「アナログと比較すると造形素材としての扱いやすさというのは大きいと思いますね。以前、アナログでの造形に挑戦してみたことがありますが、スカルピーなどのアナログ素材の扱いは素人の僕にはとても難しくて、時間経過による硬さの変化のため、焼いたあとにひび割れたり、穴を開けようとすると壊れたりする。ポリパテはどうかというと延々と気泡との戦いとなるわけで。そういう意味で言うと、デジタル3Dは初心者にも比較的扱いやすいツールなのではないでしょうか」
デジタル3Dのメリットについてこう説明する深川氏だが、同時にデジタル3Dにおけるデメリットもきちんと解説した。
まず、PCやタブレット、ソフト代、立体出力代など費用が高価になること。造形中の物体に直接触れないため、画面と実物の違和感がでたり出力するまでスケール感がわかりづらいという側面もあるが、これは経験や慣れである程度解消できることも多いだろう。また3Dプリンタの精度が商業用のフィギュア原型に完全に対応できるところまでは達していないことも多く、CG画面上と出力後の見え方の違いを補うため、サポートあとのヤスリがけや手修正が必要な場合があることも課題のひとつとなる。
「立体出力のコストの高さはユーザーの悩みの種ですよね。安くても4万、大きな作品だと20万もかかってしまう。ですが、これも将来的には技術の進化により、性能も価格も確実に改善されてくるでしょう。アナログ原型の能力を持っている人は、その上でデジタル3D原型も身につけると、これまで培ってきた技術や経験を活かすことでさらなる活用が期待できると思います。ぜひとも一歩踏み出してみてほしいですね」。そう深川氏はアドバイスする。
時間の関係で簡単な解説になったが、セミナーではポリゴンモデリング(従来型)とスカルプトモデリング(ZBrush)の特徴の違いや「ZBrush」「3D-COAT」「Sculptris」などスカルプト造形ツールのさまざまな違いも説明された。 |
勢いをもって進化するデジタル3D原型の世界。タブレットとZBrushが作る新たな3Dの進化にこれからも期待したい。