【レポート】

「2016年冬ドラマ」傾向分析&オススメ5作! オリジナルの力作ぞろい、"重苦しいムード支配"の背景

木村隆志  [2016/01/28]

1月下旬に入って主な冬ドラマの初回放送が終了。『下町ロケット』(TBS系)を筆頭に盛り上がった秋ドラマに続いて、ヒット作は生まれるのか? 目安の1つである初回視聴率は、『スペシャリスト』(テレビ朝日系)が17.1%、『怪盗 山猫』(日本テレビ系)が14.3%、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)が11.6%を記録する一方、半数を超える作品がひとケタに留まるなど、はっきり明暗が分かれた。

しかし、当然ながらドラマの面白さと視聴率はあくまで別問題。今年の冬ドラマで本当に面白いのはどれなのか? これからどの作品が期待できるのか? 今回もドラマ解説者の木村隆志が、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコで、今クールの傾向とオススメ作品を探っていきます。

冬ドラマの主な傾向は、[1]意欲的なオリジナル作がズラリ [2]再び名脚本家が集結 [3]暗く重苦しいムードに支配 [4]ドラマに恋と結婚が帰ってきた [5]同枠ドラマの痛み分けと限界 の5つ。

傾向[1] 意欲的なオリジナル作がズラリ

左から『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の有村架純、高良健吾、高畑充希

『下町ロケット』、『コウノドリ』(TBS系)、『5→9』(フジテレビ系)、『エンジェル・ハート』(日本テレビ系)、『無痛』(フジテレビ系)、『釣りバカ日誌』(テレビ東京系)など、小説や漫画原作の作品が多かった冬ドラマから一転、今期はオリジナルの力作がそろった。

その筆頭は、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』。「月9の原点」とも言えるオリジナルラブストーリーであり、脚本家・坂元裕二は同枠で10本目の記念すべき作品となるだけに力が入っている。

定番の刑事モノも『スペシャリスト』、『ヒガンバナ』(日本テレビ系)、家族モノも『お義父さんと呼ばせて』(フジテレビ系)、『家族ノカタチ』(TBS系)と意欲作がそろった。

さらに、ハードなサスペンス作『逃げる女』(NHK)、時代劇の可能性を広げる『ちかえもん』(NHK)など、さまざまなジャンルでオリジナル作が見られる。オリジナル作の醍醐味は、新たなキャラとの出会いと、誰も知らない結末。魅力あふれる主人公がどんなラストを飾るのか、注目を集めるだろう。

傾向[2] 再び名脚本家が集結

『お義父さんと呼ばせて』の出演者(前列左から蓮佛美沙子、遠藤憲一、渡部篤郎、和久井映見、後列左から中村倫也、新川優愛、中村アン)

ちょうど一年前、昨年の冬ドラマは日本ドラマ界を代表する脚本家がそろっていたが、今年も負けずに、実績と実力を兼ね備えるメンバーが集結。

前述した『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』は、『東京ラブストーリー』『最高の離婚』(ともにフジテレビ系)などを手がけた坂元裕二。『お義父さんと呼ばせて』は、『医龍』(フジテレビ系)『アイムホーム』(テレビ朝日系)などを手がけた林宏司。『フラジャイル』(フジテレビ系)は、『フリーター、家を買う。』『ゴーストライター』(ともにフジテレビ系)などを手がけた橋部敦子。『ちかえもん』は、『ちりとてちん』『夫婦善哉』(ともにNHK)などを手がけた藤本有紀。『わたしを離さないで』(TBS系)は、『ごちそうさん』(NHK)『天皇の料理番』(TBS系)などを手がけた森下佳子。『怪盗 山猫』は、『家族ゲーム』『電車男』(ともにフジテレビ系)などを手がけた武藤将吾。『逃げる女』は、『金曜日の妻たちへ』(TBS系)『29歳のクリスマス』(フジテレビ系)などを手がけた鎌田敏夫。『家族ノカタチ』は、『チーム・バチスタの栄光シリーズ』『銭の戦争』(ともにフジテレビ系)などを手がけた後藤法子。

オリジナル作が多いのは、これほど力のあるメンバーがそろったからであり、原作モノも連ドラらしい各話の盛り上がりと独自の結末が期待できる。

傾向[3] 暗く重苦しいムードに支配

左から『わたしを離さないで』の三浦春馬、綾瀬はるか、水川あさみ

現在のテレビ視聴者は、シリアスなコンテンツがとにかく苦手。どんなに作品のクオリティが高くても、「気が重くなるから見ない」という人が増え、さらに「ハッピーエンド以外は認めたくない」という声も目立つ。

例えば、TBSの『金曜ドラマ』は、この数年間、『夜行観覧車』『クロコーチ』『家族狩り』『Nのために』『アルジャーノンに花束を』とシリアスな作品を立て続けに放送。見た人の満足度や識者の評価は高い一方、視聴率は大苦戦している。昨年放送されたフジテレビの『探偵の探偵』『リスクの神様』『無痛』などもしかりだ。

しかし、今期はそんな傾向を無視するかのように、重苦しいムードの作品がそろった。恋愛モノなのに重苦しい『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』『愛おしくて』(NHK)、暴力の描写が多い『ナオミとカナコ』(フジテレビ系)、つらい逃避行を続ける『逃げる女』。

刑事ドラマにも「スカッと事件解決」というよりも暗さが残るものが多い上に、極めつけはやはり『金曜ドラマ』。『わたしを離さないで』は、これまで以上に過酷な世界観で覆い尽くされ、「どうやって救いを見い出すのか?」心配になるほどだ。

人間心理を深く描けるシリアスな作品は、ドラマ業界全体にとって必要なもの。いずれも「本当に作りたいものを作るんだ」というスタッフの声が聞こえてくるようであり、素直な気持ちで応援したい。

傾向[4] ドラマに恋と結婚が戻ってきた

左から『愛おしくて』の田中麗奈、『家族ノカタチ』の上野樹里、『お義父さんと呼ばせて』の蓮佛美沙子

『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』は、有村架純、高良健吾、高畑充希、西島隆弘、森川葵、坂口健太郎と、いずれも主演経験を持つ若手を集めた恋愛群像劇。80~90年代はこの形が王道だったが、最近はめっきり減っていただけに、懐かしさを覚える人もいるだろう。

一方、『愛おしくて』と『ダメな私に恋してください』(TBS系)は、このところ主流になっている三角関係を軸に描いた作品。前者は愛憎劇、後者はコメディと違いはあれど、「どちらに転ぶか分からない」濃密な恋愛模様が最後まで描かれるはずだ。

前述した3本は、いわゆる"ど真ん中"の恋愛モノだが、『家族ノカタチ』『お義父さんと呼ばせて』『わたしを離さないで』も、主人公の恋や結婚を描いたシーンが多く見られる。

いずれにしても恋愛・結婚をテーマにした作品が増えているのは事実。ドラマだけでなく邦画にもその傾向があるだけに、今期の作品が一定の評価を得られれば今後も続くのではないか。

傾向[5] 同枠ドラマの痛み分けと限界

左から『フラジャイル』の武井咲、『ヒガンバナ』の堀北真希、『ダメな私に恋してください』の深田恭子

火曜22時の『愛おしくて』は6.2%、『ダメな私に恋してください』は、9.0%、『お義父さんと呼ばせて』は9.6%。水曜22時の『フラジャイル』は9.6%、『ヒガンバナ』は11.2%。これらは1話の視聴率だが、見事なまでに"痛み分け"の状態。2話もほぼ横ばいの数字が並んだだけに、「ドラマファンを食い合っている」ことがわかる。

テレビ全体のリアルタイム視聴者が減る中、制作側の「確実にドラマファンがテレビを見る時間帯に放送したい」という意図はわかるが、ドラマファンにしてみれば「同じ時間帯に複数のドラマが放送されるのは受け入れがたい」もの。特に、後発で参入してきた火曜22時のTBSと、水曜22時のフジテレビが苦戦続きなのは、「何で同じ時間帯に参入してくるのか」とドラマファンの印象が悪いからではないか。

ただ、"痛み分け"の状態は、裏を返せば「視聴率が落ちた」と言われる現時点でも、「火曜22時も水曜22時も、合計20%超の視聴率を叩き出している」ということ。1つに絞ってそのまま全ての視聴率が取れるわけではないが、少なくともドラマファンを敵に回すのは、そろそろやめたほうがいいような気がする。


これらの傾向を踏まえつつ、今クールのオススメは、ともに我が道をゆく『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』と『わたしを離さないで』。重い世界観の中、セリフを通して次々とメッセージを送ってくるだけに、目をそらせない展開が続く。

もし笑いたいのなら、「出落ち感が強い」と思いきや、練り込まれた脚本が光る『お義父さんと呼ばせて』。この3作は好みの差程度で、見て損はない作品だけに、無料見逃し配信やオンデマンドで見てはいかがだろうか。

一方、今後の上昇に期待したいのは、勧善懲悪の色濃い演出に違和感のある『フラジャイル』(フジテレビ系)、2人の絆や犯行に至る心理描写がやや物足りない『ナオミとカナコ』(フジテレビ系)。期待値の高い作品であり、キャストの熱演が光るだけに、脚本と演出が噛み合えば状況は一気に好転しそう。

おすすめ5作

No.1 いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう(フジテレビ系 月曜21時)
No.2 わたしを離さないで(TBS系 金曜22時)
No.3 お義父さんと呼ばせて(フジテレビ系 火曜22時)
No.4 ナオミとカナコ(フジテレビ系 木曜22時)
No.5 ちかえもん(NHK 木曜20時)

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技84』など。

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