ネット銀行をはじめ、各銀行では外貨預金のキャンペーンを積極的に行っている。実は、こうしたキャンペーンの背景には、銀行側の外貨に対するニーズが高まっているという事情があるという。では、個人投資家は、キャンペーンを活用して外貨預金をする際に、どこに注目して外貨預金をすればいいのだろうか。ジャパンネット銀行の担当者に聞いてみた。

取材に応じてくれたのは、ジャパンネット銀行 市場商品事業部 市場商品企画グループ兼市場商品推進グループの吉田昌央氏と、市場商品事業部 市場商品企画グループ兼市場商品推進グループ 部長代理の曽根聖氏。まずは、なぜ銀行の外貨ニーズが高まっているかを吉田氏に聞いた。

ジャパンネット銀行 市場商品事業部 市場商品企画グループ兼市場商品推進グループの吉田昌央氏

――銀行をはじめとする金融機関は、なぜ外貨を集めようとしているでしょうか?

吉田 : 企業が海外での事業拡大やM&A、外債投資を積極化していることが一番大きな要因です。先月9年半ぶりにアメリカが利上げし、今後も段階的に利上げをしていくと見込まれています。利上げするということになると、ドルを借り入れるときのコストも今後高くなっていくということが見込まれますので、なるべく金利が低いうちにドルを集めておいて、それで投資や貸出に使いたいということでニーズが高まっています。

――なるほど。海外事業拡大やM&Aでドルが必要になるということですね。

吉田 : 昨年顕著だったのは、特にメガバンクを中心とした大手の銀行が、ドル建ての貸金を急激に増やしていたということです。国内の企業の資金需要が大幅に落ちている中で、なかなか国内でのビジネスにつなげられないということで、メガバンクを中心に積極的に海外の企業あての貸金を増やしたことによって、銀行全体のポートフォリオの中で、ドルを調達しなければいけないニーズが高まったということが、昨年の大きな動きだったと思います。

――ドルで貸し付けるということですね。

吉田 : 昨年を振り返りますと、企業が過去最高の収益をあげている中、国内の事業法人も潤沢な資金を保有している状況でして、本来であれば儲かったお金は設備投資なり、賃上げなりに使うのでしょうが、実際そういうことは起こっていない状況です。今の企業収益の上振れというのは、企業経営者からすると一時的なものと見ているのだと思います。何より、国内自体は人口が減っていくことが見込まれていますので、製造業なども設備投資をどんどん拡大して、国内需要に備えるというよりは、海外での事業拡大などに備えた動きをしています。

――ドルを貸し付ける相手はどういったところになりますか。

吉田 : アジアを中心とした現地法人、そういったところへの貸金を大幅に増やしています。過去最高のM&Aなども起こっておりますので、これも当然ドル資金を調達して、買収資金に充てなければいけません。

また、世界の中央銀行が金融緩和を続けている中、昨年先進国で唯一、利上げをしたのがアメリカです。そういった中、日本国内の投資家も、日本国債の金利が極めて低く抑えられている中で、なかなか国内債の運用がほとんどできない状況でして、米国債への投資が増えているのも事実です。それは銀行だけではなく、生損保なども含め機関投資家全体でそういった動きになっています。

邦銀による海外向けの貸出残高や、日本からの対外証券投資は拡大が継続

――さまざまな要因があって、銀行などのドルの調達ニーズが高まっているわけですね。

吉田 : 債券を買うにしろ、貸出をするにしろ、外貨がなければ海外で何もできませんので、そういった意味で、外貨をいかに調達していくかということで、みんなで競って外貨を調達しているという状況です。

――今後の展開として、アメリカの利上げはドルの調達にどのような影響があるのでしょうか。

吉田 : 12月の利上げは11月の初旬からマーケットは折り込んでいましたので、サプライズがないまま利上げを迎えることになりました。次は2回目の利上げ、今後どういったペースで、次の利上げが行われるのかということが市場の次の焦点になっています。

そういった中、市場参加者はどれぐらいの期間で、どれぐらいのタイミングでドルを調達するとコストが安く済むかという点について、たえず状況を見ながらいろいろな金融機関が判断していくのだと思います。

今年せいぜい2回ぐらいしか利上げができないのではないかというような見方をしている人もいますし、3カ月に1回ぐらいではないかという見方もありますから、市場動向を見ながらFRBがどう考えるかということになると思います。

――ドルの調達が増えるのはいいのですが、アジア通貨危機のように、新興国からドルが引き上げられる懸念が言われています。その辺はどうですか。

吉田 : そうした懸念を反映する動きは、昨年1年間で、利上げの思惑が高まる局面では起こってはいるのですが、今は落ち着いています。マーケットの想定以上に利上げのペースが早い、大きな幅の利上げが続く、となるとそういったことは起こる可能性はあると思います。


上記の吉田氏の説明で、ドルの調達ニーズが高まっていることが理解していただけたのではないだろうか。次ページからは、こうした状況の中、外貨預金はどうなのかを曽根氏にお伺いする。