――昔はあまりそういうことはできなかったのでしょうか?

安原「昔の映画は、今の映画みたいに速くないし、セリフがかぶって声をあてることもなかった。しかも家で練習ができず、みんなで集まって一回観て、次が本番みたいな時代でしたから、今とはぜんぜん違います。映画ものんびりとしていたし、人が喋っているときにかぶせるのは失礼という時代。今は3人ぐらいが同時に喋ったりするんですけどね」

――技術的な部分よりも環境的な部分で遊びにくかったんですね

安原「それに私自身が若かったというのもあります。錚々たる先輩方に囲まれて、いっぱいいっぱいになってやっていたので、楽しむところまではいかなかった。それに若いころはまだ、この仕事の面白さがわかっていなかった」

――面白さに気づいたのはいつ頃ですか?

安原「極端にいうと最近です。この仕事も奥が深いなって気づき始めたのが、ここ10年くらい。それからはやればやるほど面白くなってくる。ちょっと気がつくのが遅すぎました。一番忙しいころに気づけば良かったのに、気づいたころには仕事も減ってきちゃって(笑)。だからこそ、仕事を大事にするという感覚が強くなっています。今はこの仕事が一番楽しいですね」

――話は変わりますが、自分は「熱中時代」世代なので、安原さんといえば"ロバート・山形"役の印象がすごく強いんですよ

安原「あれはまだ20代じゃなかったかな(笑)。あの頃は本当に何もわからずにやってました」

――あの役が安原さんのコミカルな演技の原点なんじゃないでしょうか?

安原「そうそう。何をやっても結局あそこに行くんですよ(笑)。だから、超二枚目、超優等生の役ができない。そんなに良い声を持っているわけでもないですから。やはり、いろいろとやりまくる役のほうが楽しいです」

――安原さんは声の仕事だけでなく、舞台などでも活躍なさっていますが、演じるにあたっての違いはありますか?

安原「声の仕事の場合はセリフを覚えない。もちろん覚えたほうがいいのですが、そんな時間がない。覚えていないのに覚えているような顔をして喋っている感じ。しかも、相手のセリフも自然体で聞かなければいけない。そういう点ではこちらのほうが大変です」

――舞台の仕事はセリフを覚えないとできないですからね

安原「舞台の場合は、覚える作業が仕事の80%みたいなところがあります。でも声の仕事はその時間が要らない。半分くらいは叩き込みますけど、台本を見ながら演技できますから。極端な話、舞台と並行してもできちゃう」

――それでは最後に『ブレイキング・バッド』『ベター・コール・ソウル』のファンの方へのメッセージをお願いします

安原「"滑りのジミー"というチンピラがのし上がっていく様。そこを楽しみながら、同時に、安原が修行を重ねて、どんどん上手くなっていくところを楽しみにしてください(笑)」

――まだまだ成長なさるんですね

安原「もちろんです。今成長しないと仕事が無くなっちゃいますから(笑)。安原の演技とジミーの成長を重ねて観ていただければより面白くなると思います。よろしくお願いします」

――ありがとうございました

『ベター・コール・ソウル シーズン1 COMPLETE BOX【初回生産限定】』のBlu-ray&DVDは2015年12月2日の発売で、価格はBlu-ray版が12,000円(税別)、DVD版が9,333円(税別)。いずれもディスク3枚組で、本編(1話~10話)+特典映像が収録される。発売元・販売元は、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント。また、12月2日からはDVDのレンタルのスタートする。そのほか詳細は「ベター・コール・ソウル」公式サイトにて。

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