ヘッドホンは「アンティーク」になれる

細尾氏の発言の中には時折、時計メーカーのブランド力や開発体制を意識したものがあった。細尾氏いわく、一般的に高く評価されている時計は、ムーブメントを自社で設計・開発しているものが多いとのこと。「ムーブメントを自社開発している時計メーカーが評価されているように、ドライバーを自社開発しているオーディオメーカーは強い」と話していた。finalは振動板のフィルターをつくる機械から自社で製造しており、細かい組立作業は自社のエンジニアが手作業で行っている。細尾氏の発言からは自社開発技術への自信がうかがえた。

フラッグシップヘッドホン「SONOROUS X」「SONOROUS VIII」に使用した独自開発ドライバー

開発中のイヤホン用イコライザーも見せてもらった

また細尾氏はイヤホンやヘッドホンについて、アンティーク時計のように長く使ってもらう製品にしたいと考えている。そのため、自社製品にも修理が可能な素材や設計を採用しているという。ショールームに形となって現れたアンティーク空間は、finalのブランドコンセプトと一致しているのだ。

「SONOROUS」シリーズ新作ヘッドホンを公開

内覧会では、開発中の新作ヘッドホン「SONOROUS III」も紹介。10月30日発売の高級ヘッドホン「SONOROUS X」「SONOROUS VIII」の技術を採用したエントリーモデルで、発売は2016年2月を予定している。価格は35,000円前後になる見込みだ。

SONOROUS III

実際にSONOROUS IIIを試聴したが、エントリーモデルの枠を超える音場の広さに驚かされた。SONOROUS Xのピュアな音質と比較すると、多少ボーカルが主張している印象はあるが、スピード感や音のメリハリはロックやポップスに非常にマッチする。音響性能に関しては現在も調整中で、今後も改良を続けていくとのこと。

finalの今後

約630,000円のフラッグシップを開発する一方で、ヨドバシカメラなどを会場に「イヤホン組み立て教室」を開催しファン層を拡大している

アナログレコードカートリッジから始まり、これまで様々な事業ににチャレンジしてきた同社。今後もその姿勢は変わらないようで、細尾氏からはインイヤモニターの製品化、専用アンプで駆動する3ウェイスピーカーの開発、イヤーピースの使い分け講座……など、次々とアイデアが湧き出していた。このショールームはあらゆる新事業を実現させる拠点となる「夢の第一歩」なのだと細尾氏は語る。実際に、1日がかりのイヤホン組み立て教室や専門家を招いたオーディオ勉強会、finalの工場見学会などをショールームで行う予定だという。今後の展開が実に楽しみだ。