日本企業の進出目覚ましい香港。もちろんターゲット層は香港人。ジモティに合わせてさまざまにアレンジされ、日本でもおなじみのはずの商品が全くおなじみではなくなってしまっている。そんな香港発、進化版"日本のお菓子"を食べてみた。
アメリカに行った時、日清のカップラーメンにエビだのチキンだの日本にはないフレーバーがあって驚いた経験はないだろうか。一方、香港では「出前一丁」のフレーバーが十数種類展開されている。
確かに日本の企業によって製造されているものの、地元の人々の舌に合わせ要望に応えているうちにあんなになっちゃった、というものは多い。出前一丁で言えば香港をはじめ、アジア圏一帯では"日本のうどん味"があるのは当たり前となっており、本場であるはずの日本人が「えっ、なにこれ? 」と思わず二度見してしまう事態となっている。
ジャガビーが紫色! そのお味は……?
しかし、香港に進出している日本企業はインスタントラーメンだけではない。スナック菓子といえば、のカルビー。日本でも人気のポテトスナック「Jagabee(ジャガビー)」が、香港でも売られていた。……が、紫色である。パッケージには「紫芋を使用」と書かれており、紫色である理由はよく分かる。
パッケージは袋菓子のそれではあるが、中で小袋に個装されているところは日本のジャガビーと同じだ。袋を開けてみると確かに紫色ではあるが、ポテトの形状もサクサク感も、そしてしっかりジャガイモなあの味もまさにジャガビーそのままだ。「別に紫色である必要はないのではないか」と思ってしまうのだが、そこは香港版ジャガビーならではなのだろう。
日本企業まさかのコラボが実現!
お次はいかにも香港な一品。日清食品の人気商品、インスタントラーメンの出前一丁と、「ポテトチップスのりしお」や「カラムーチョ」などファンも多いスナック菓子専門メーカーの湖池屋とのコラボ商品「ポテトチップス出前一丁 辛辣XO醤海鮮味」だ。
インスタントラーメン「出前一丁 辛辣XO醤海鮮味」は日本にはない香港製のフレーバー。これをポテチにしようと誰が言い出したのか知らないが、調べてみると香港では日清と湖池屋の合弁会社が2014年に設立されており、"二社の強みを活かした事業展開"の結果がこの「ポテトチップス出前一丁 辛辣XO醤海鮮味」なのである。なるほど、確かに。
味はといえば、見た目ちょっと辛そうなイラストが添えられているもののそれほど辛くはなく、また、海鮮風味もほんのり。インスタントラーメンの方は調味油が入っており、仕上げにさっと香りをつけるのだが、ポテチにはそれがないのでちょっとパンチが足りないような気がする。ちょい足しでXO醤や辣油などをかけていただくと、よりラーメンに近づくかもしれない。
ちなみに、このポテチ「辛辣XO醤海鮮味」の前に「麻油味」も発売されていたらしい。「麻油味」のインスタントラーメン版・出前一丁は日本でも売られているあのごま油が効いたオリジナルフレーバーのことだ。今回売り場には見当たらなかったので、「麻油味」のポテチ版・出前一丁は季節商品なのかもしれない。
日本人好みのソース味
そしてもうひとつ、カルビーの「ポテトチップス 日焼醤汁味」。つまり、お好み焼き味のことなのだが、和食の人気が高い香港ではお好み焼きもポテチになってしまうほどにローカルテイストなのだろう。こちらは空港にも普通に売られているほどスタンダードっぽい扱いだ。
かなりカラフルでポップな色調のパッケージにはドドーンとお好み焼きの写真。味に想像はつくものの、果たして袋を開けてみると……ソースの匂いである。こちらはお好み焼き味なのでソースだけの味に偏らないようにするためか、少しソースが弱め。とはいえ、文句なくポテトに合う味付けでビールなどのお酒のお伴にもよさそう。さすがカルビー、これは間違いなく日本人好みである。
和食が本当に好きだから……
同じスナックの棚にもうひとつ、日本のメーカーのものではないがどうしても気になった和風味のポテトチップスがあった。Jack n'Jill 珍珍(ジャン・ジャンと読む)というメーカーの「サーモン寿司味」である。しかも、ただ寿司味なだけでなく、ワサビフレーバーもちょい足しすることができるという。寿司を! お菓子に!! するなんて!!! と日本人なら思うところだが、それほどまでに和食が好きなのだ、香港人は。
袋を開けてみると、プ~ンと生臭い魚の匂いとともにワサビフレーバーの小袋が出てきた。どうやらこれをお好みでポテチにふりかけて食べるらしい。まずはさび抜きで一枚。……寿司である。魚臭まで忠実に再現されたサーモン寿司。ポテトなはずなのに、食感だってぱりぱりなのに、寿司だなぁ、と感心する。
ここにワサビパウダーをかければ生臭ささが消えさらに寿司らしくなる。もちろんポテチはポテチなので本物の寿司とそん色ない、とまではいかないが味の再現率は前出のお好み焼き味や出前一丁味に比べると突出していると言ってもいいだろう。なかなかの衝撃である。
こういうスナックたちにはスーパーマーケットに行くと、簡単かつ大量に出合うことができる。日本のメーカーでなくても日本語が書かれているものも多く、日本製品のフリをしていながら謎のフレーバーのものも。少しかさばるが、香港だからこそのお土産にぴったりではないだろうか。
※記事中の情報は2015年8月取材時のもの