現在、アップルのWebサイトでは「iPadですべてが変わる」と題された特設ページが開設されている。「クッキング」「学ぶ」「スモールビジネス」「旅に出る」「模様替え」という5つのシーンで、iPadをどのようなアプリを用いて活用するかを紹介し、その魅力を伝えるというものだ。今回はその中から「旅に出る」にフォーカスし、8月23日、Apple Store, Ginzaにて開催されたトークイベント「iPadが変える旅:人生が変わる旅に出よう」の様子をお届けする。

アップルWebサイトの「iPadで旅に出る」ページ

同イベントでは、旅で人生を変えてきたという、いわば旅のプロフェッショナルが集い、旅するということ、ワークスタイル、ライフスタイルについて語り合った。登壇したのは、トラベルプロデューサー、旅行作家として世界各地のプロジェクトに携わっている江藤誠晃さんと、「旅で世界を、もっと素敵に」を理念に旅のイベントやマーケティング事業を展開している株式会社TABIPPOの代表・清水直哉さん、コンテンツ・ディレクターの前田塁さん、マーケティング・ディレクターの篠原輝一さんの4名。

トラベルプロデューサー、旅行作家の江藤誠晃さん。真名哲也のペンネームでトラベル小説を数多く手がけてる
Apple Store, Ginza
(c) Kensuke Tomuro

写真左から株式会社TABIPPOの代表・清水直哉さん、コンテンツ・ディレクターの前田塁さん、マーケティング・ディレクターの篠原輝一さん
Apple Store, Ginza
(c) Kensuke Tomuro

本イベントはTABIPPOが主催する、「旅を学ぶ、旅から学ぶ」をコンセプトにした学びの場「旅大学」のプログラムの一環として実施された。通常、講義は有料とのことだが、今回はApple Store, Ginzaで無料開催の運びとなった。「旅が変わる、働き方が変わる、人生が変わる」をテーマに据え、iPadが旅のスタイルをどのように変えていったかを紹介していった。

江藤さんとTABIPPOのメンバーとは親子ほど年の差があるという。江藤さんは1985年に初めて海外旅行に出かけたとのことだが、30年かけて辿りついた現在は、当時と比べるとICT機器により状況が一変したと言い、昔はこんなことできなかった、こんなことなかったと事例を挙げて解説してくれた。iPadのようなデバイスはもちろんなく、旅行先から電話をかけるのも骨が折れる時代だったのだ。江藤さんによれば、iPadを持って海外に出ると、ある種の不安が解消されるそうである。iOS標準搭載の「FaceTime」を使えば、日本に残してきた家族とビデオ通話ができる。FaceTimeは無料(SIM入りのiPadで通信する場合は契約形態でパケット代が発生する場合あり)で利用可能なので、気になることがあったり寂しくなったりしたときも、思いつきで相手と話ができる(時差には注意)。

江藤さんは引き続き1985年当時の状況と、iPadがある現在とを比較して論じる。85年の初めての海外、香港・マカオへの旅行では、「時計」「カメラ」「電卓」「辞書」「筆記用具」「地図」「方位磁石」「ポータブルカセットプレーヤー」「ガイドブック」「小説などの書籍」をスーツケースに忍ばせたそうだ。これだけでも相当な荷物であるが、列挙した持ち物は、今では全部iPadの中に収まるのである。

30年前は「時計」「カメラ」「電卓」「辞書」「筆記用具」「地図」「方位磁石」「ポータブルカセットプレーヤー」「ガイドブック」「小説などの書籍」が旅には欠かせなかった

iOS標準の「時計」は目覚ましとして使えるのはもちろん、世界時計から、各地域の現在時間が一目で分かる。先ほどのFaceTimeする時間も、これでチェックすれば相手に迷惑をかけずに済む。iPadでは一度に6地域の時間が表示でき、各地の天気と気温も表示される。ジェットセッターには嬉しい機能だ。

カメラももちろん、iPadに内蔵されている。85年当時はフィルムカメラだったので、撮れているかどうか帰国して現像するまで分からなかったが、iPadならその場で綺麗に撮れているかどうかわかる。動画も撮れるので、別途ビデオカメラを携行する必要もなくなった。

「地図」アプリは折りたたみの地図や方位磁石、場合によってはガイドブックの機能も兼ねる。iPadは画面が大きいので位置の把握もしやすい。

電卓はiPadでは用意されていないが、サードパーティが提供する「Currency」では、計算機能のほかに通貨の換算機能がある。江藤さん曰く「まけてくれ」といった値段交渉にも便利とのことだ。辞書もサードパーティから数多くのアプリが提供されている。辞書は先にあげた持ち物リストの中でも大きく重いアイテムのひとつだが、iPadからスマートにアクセスできるようになる。辞書や翻訳アプリを活用するのも良いが、他の手段もある。TABIPPOの清水さんは英語が苦手と謙遜していたが、iPadがあれば英語ができなくても世界一周できると言う。iPadで絵を描いて意思疎通を図ることも出来るし、所持していればなんとかなると自身の経験を伝えた。

カセットテープも旅のお供で、何本も持っていったが、iPadに音楽を格納しておけばよくなった。ムードに合わせた音楽を聴きたいのであればApple Musicに加入していれば、おすすめのプレイリストからその場の雰囲気にマッチした曲を選ぶこともできるだろう。

移動時間も、iTunesから映画、iBooksから小説をダウンロードしておけば暇が潰せる。LCC(Low Cost Carrierの略:格安航空会社)では座席に各種サービス提供用のモニターが用意されていないこともあるが、意外とUSBの給電が可能であったりすることがあり、iPadを長時間使用する際にバッテリー消費を気にせず楽しめる。江藤さんは、LCCのメリットを享受するのに荷物の持ち込み制限を越えてオーバーチャージをとられるのは損(大抵は7kgまで)、多くチャージをとられないように荷物は減らしたい、ならば、あらゆることを賄えるデバイスに任せたいとiPadの優位性を指摘する。

最近はムービーの入った電子書籍をiBooks Authorで制作しているという江藤さん、電子書籍に貼り込む動画の編集もiPadで行っているらしい。使っているアプリは「Animoto Video Maker」とのことだ。このアプリでは旅先で撮った写真をムービー素材にすることができ、簡単に動画を作成できる。同じことはアップル純正の動画編集アプリ「iMovie」でも行える。iMovieは32GB以上のモデルのiPad Air 2/iPad miniであればプリインストールされている。16GBのモデルでも、購入後、無料でダウンロードできるので、使わない手はない。

iPadには旅に必要なものが何でも入れられると江藤さん

もしかしたら、ここまでの紹介で、それって全部iPhoneで良いのでは? と思った方もいるかもしれない。しかし、登壇した4人は、本物の旅人は間違いなくiPadを選ぶと口を揃える。地図アプリの項で見たように見やすい画面に依るところが大きく、絵を描いて何かを伝えようとする場合でも、iPhoneの画面よりも情報量が多くなるからだ。Macと比べた場合でもスピーディーに起動できるということで、機動力も全く異なるという。だからiPadなのだと。様々な局面で工夫してアイディアを形にしていけるのもiPadならでは、とも説いた。

iPadで旅が変わる、仕事が変わる、人生も変わると登壇者は力説

iPadで旅のスタイルが変わると、仕事のやり方も変わる。旅行先からiPadで原稿や企画書を作って送ることもできるから、移動しながら仕事をするということが簡単になる。そういったスタイルで仕事をする人が時代の主役になっていくのではないかという考えを江藤さんは示した。ライフスタイルやワークスタイルが変わると、休みでなくても海外で仕事しながら遊ぶといった風になるのではないかと想像を膨らませていた。こうなると、やはり人生そのものが変化していくことになるのだろう。

アップルのWebサイト「iPadと学ぼう

「旅大学」に於いては、教室は世界である。iPadから世界を覗くと、そこでは座学だけでは得られないものが沢山ある。アップルのWebサイトは立体的に動く教科書、様々なアプリを使った事例が紹介されており、そこでは世界中の子供たちがいきいきとiPadを使う様子が捉えられている。江藤さんはiPadの向こうに世界の学びがあるということを敷衍していく活動に取り組みたいと熱弁を奮う。

最後のQ&Aでは、旅の前と後で変わったことは?という質問に、旅の最中にiPadから情報発信をすることが多くなった(TABIPPO・篠原さん)、iPadの中身が人と違ってくる、使い込めば込むほど自分の個性に繋っていく(TABIPPO・前田さん)、やりたいことを当たり前のようにやれるようになった(TABIPPO・清水さん)と答え、江藤さんの、iPadは自分を表現する、人とコミュニケーションするのにぴったりなツールという台詞でイベントは締めくくられた。