人は見た目で判断してはいけない。頭でわかってはいても、どうしてもカッコイイ男性ばかり好きになってしまう。そんなイケメン好きの女性は、めずらしくありません。

ですが、それは男性も同じ。男性だって、美人の女性ほうに気持ちが傾きがちに。ですが、どうして人はイケメンや美人ばかり好きになってしまうのでしょうか。

ほんとうは、まずイケメンとはなにか、美人とはなにかという、身体的な魅力とはなにかということを考えなければいけないのですが、ここではひとまず難しく考えずに話を進めていきましょう。

子孫を残していくには"モテ"が必要?

WeatherheadとRobertsonという人たちが、1979年に面白い仮説を提唱しています。それは、イケメンの息子に注目した「セクシーサン仮説」というものです。

どういうことかというと、人間も動物である以上、繁殖し子孫を残すことが重要になってきます。当然、自分の遺伝子を継承する子孫をたくさん残したいですよね。そのとき、自分の直接の子どもだけではなく、孫世代やひ孫世代、そしてその先の世代まで自分の遺伝子が継承されるようになるためには、病気に強いことや、餌をとる能力が高いことなどと合わせて、異性に"モテる"という特徴を兼ね備えていなければなりません。

異性にモテる性質が子どもに遺伝するとなれば、オスにとってもメスにとっても、自分の子どもがその世代の異性にモテるわけですからメリットがあるわけです。その結果、異性に好まれる容貌(=イケメン/美人)と、その容貌をしている異性を好む心理(=イケメン好き/美人好き)とのあいだで共進化が起こると考えたのが、セクシーサン仮説なんです。

もっと、わかりやすくいえば、メスにはもともとイケメン好きの心理が備わっています。なのでイケメンのオスと繁殖し、イケメンの息子を生めば、次の世代で息子はモテモテ。孫世代が生まれやすいということなんです。

イケメン・美人を好きになるようにできている?

ちなみに、Fisherという人が1930年に出版した『The Genetical Theory of Natural Selection』という本の中には、「ランナウェイ過程」という言葉がでてきます。ランナウェイ過程とは、たとえばクジャクはキジの一種で、もともとは尻尾が長くはありませんでした。ですが、クジャクのメスにそなわっている尻尾が長いオスを好む心理の存在が、尻尾の短いオスを淘汰し、結果的に尻尾の長いオスが残ったというものです。

つまりは、女性がイケメン好きなのも、男性が美人の女の子が好きなのも、それは生まれながらにそういう異性を好きになる心理が備わっているからなんです。

「え、でも美女と野獣カップルというように、イケメンじゃない男性を好きになる女性もいるでしょう?」と思う人もいるかもしれません。それについては、また別の機会に考えてみることにしましょう。

※写真と本文は関係ありません

著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理にも詳しい。現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は『化粧にみる日本文化』『黒髪と美女の日本史』『邪推するよそおい』など。