日本マイクロソフトは新しいWindowsをリリースする際、通例として発売イベントを開催してきた。しかし、Windows 10は「リリース」ではなく「無償アップグレード」という形態で姿を現したため、発売イベントは行われない。

そこで2015年7月29日、Windows 10の提供開始を祝う「Windows 10 FAN CELEBRATION EVENT」を開催した。MicrosoftがWindows Insider Program参加者とともにWindows 10ローンチを祝うイベントの、国内版にあたる(日本を含む13カ国の都市で開催)。会場には、7月1日付けで日本マイクロソフト 代表執行役社長に就任した平野拓也氏も姿を現した。

会場の風景。「Windows 10体験ゾーン」では、数多くのWindows 10搭載PCやXbox Oneに来場者が集まっていた

今回のWindows 10 FAN CELEBRATION EVENTは時差の関係から、東京は米シドニーに続く世界で2番目のイベント開催都市となった。

Windows 10はMicrosoftにおける「変革の象徴」と語る日本マイクロソフトの平野拓也氏

ステージに登場した平野氏は、普段目にするスーツ姿ではなく、「0」と「1」を組み合わせて飾ったWindowsフラッグTシャツを着て、「顔と名前が合わない平野です」と来場者の緊張を解きつつ、「待ちに待ったWindows 10のローンチを今まで違う形で皆さまと祝いたい」と、イベントに参加したWindows Insider Program参加者たちにお礼を述べた。

多くの来場者は、Windows 10へのアップグレードに能動的なユーザーのはずだが、平野氏は「Windows 10をダウンロードされていない方?」という問いかけで会場の笑いを誘う。「まさかダウンロードせずに会場でご飯を食べているとは思いませんが、帰ったらぜひダウンロードして、明日には友人・知人にすすめてください」と声高に語りかけた。

そのほか、世界110の非営利団体に合計1,000万ドル(10ミリオンドル)を提供して、「世界をアップグレード」(Upgrade Your World)するキャンペーンの紹介や、7月29日から始まったテレビCMの紹介で挨拶をまとめた。

イベント中の取材で平野氏に聞いたところでは、「MicrosoftはワールドワイドでWindows 10無償アップグレードの予約見込み数をカウントしているが、予想を大幅に超える予約数を数えた」という。社長就任直後の大イベントとなるWindows 10無償アップグレードを迎えて、「Windows 10は自社の旗艦ともいる存在だからこそ参加できてうれしい」とも。

Windows 10のテレビCMから。平野氏いわく「PCは難しいものではなく、小さな赤ちゃんでも使えるような思いを込めて作った」という

続くトークセッションでは、日本マイクロソフト Windows本部の溝口宗太郎氏を筆頭に、同社エバンジェリストである田中達彦氏と大西彰氏がステージへ。各自の得意分野から、Windows 10の機能をアピールした。

トークセッションに参加した日本マイクロソフトの面々。左から溝口宗太郎氏、田中達彦氏、大西彰氏

来場者の反応がよかったのは、Microsoft Edgeのドルビーオーディオ対応。2015年5月にMicrosoftの公式ブログで明らかにされたものだが、Microsoft Edgeは、次世代サラウンド規格となるドルビーデジタルプラスをサポートする初のWebブラウザーだ。

会場では実際にデモサイトにアクセスして7.1チャンネルのサウンドを披露し、来場者を沸かせていた。大西氏は「今までは頑張っても2チャンネル程度でしたが、本機能でマルチチャンネルを実現しています」と機能を紹介し、刷新したWebブラウザーの可能性をアピール。既にWindows 10にアップグレード済みのユーザーは、その威力を目と耳で確認してほしい。

Microsoft Edgeのドルビーオーディオ対応機能も会場で披露された。本機能はデモサイトでも体験できる

会場にはSONY製9.1チャンネルヘッドホンとSurface Pro 3を並べて、ドルビーオーディオを体験するコーナーも設けていた

さらに大西氏は、Build 2015などで披露した「WITCH CHAPTER 0[cry]」のデモンストレーションを再現。目を引いたのは、NVIDIAのグラフィックスカード「GeForce GTX TITAN X」を4枚(!)装着したPCを操作して、リアルタイムレンダリングの視点を変更している点だ。筆者も何度か同じデモを目にしてきたが、手動によるリアルタイムの視点変更を見たのは初めてである。会場からは、どよめきと驚きの声が漏れていた。

「TITAN×4枚差しPC」でリアルタイムレンダリングのデモンストレーションも披露した

WITCH CHAPTER 0[cry]

(C) 2015 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

一方の田中氏は、音声パーソナルアシスタントの「Cortana(コルタナ)」に関するデモンストレーションを披露。英語で「Sing a song」と声をかけると、フランスの民謡「フレール・ジャック」を歌い出した。残念ながら日本語版Cortanaは登場しなかったものの、司会者のネイティブな発音に小気味よく反応するCortanaの実演は、国内イベントでも初めてだろう。

「フレール・ジャック」を歌うCortana。「Are You Sleeping Brother John?」ではないのはなぜだろうか……。「キミは女の子?」という質問には「いいえ。でも私は女の子と同じくらいステキよ」と回答するCortana。なんでもCortanaはクラウドに住んでいて、クラウドには天気もあるらしい……

最後に平野氏が再び登場。Windows 10の提供を記念したカウントダウンならぬ「10カウントアップ」を、会場が一体となって行った。大きな声で「10」を数えると、ステージを飛び降りた平野氏は前方の来場者とハイタッチし、そのまま会場を後に。「Windows 10ファンとともに祝う」の名に恥じないイベントだった。

カウントアップは「1」から始まった(写真は「6」~「9」)

「Windows 10」のカウントで紙吹雪。平野氏はステージを駆け下りハイタッチ(スタッフはあせったに違いない……)

先のWPC(Worldwide Partner Conference)2015で「選ばれ、愛されるWindowsへ」と述べたのはMicrosoft CEOのSatya Nadella氏だが、今回のイベントで平野氏をはじめとする各関係者の口々からは、エンドユーザーとの距離をさらに縮めて密接な関係を構築したいという発言を耳にしている。Windows 10とともに、Microsoftと日本マイクロソフトは本気で変わろうとしているようだ。

フォトギャラリー

藍井エイルさんのスペシャルライブも行われた

会場となったスバルビル。7月29日だけ、Surface 3で展示車の紹介を見ることができた

Windows 10体験ゾーンに並んだ各社のノートPC。ゾーンの一角にはXboXのコーナーもあり、Surface 3との連携も体験できた

阿久津良和(Cactus)