ESや面接の自己PRが上手くいかないなど、悩みを抱える就活生も多い。そんな学生のために、『ドラゴン桜』の漫画家三田紀房氏と、三田氏著書『エンゼルバンク』のモデルとなった海老原嗣生氏による「就活のススメ講義」が開催されると聞きつけ、行ってきた。

イベントは三部構成となっており、第一部では、三田氏と海老原氏による「企業分析討論」。ファシリーテーターに、光文社で『さおだけ屋はなぜつぶれないのか?』などを担当、星海社の初代編集長となった後、コルクにて三田氏のエージェントを務める柿内芳文氏を迎え、3人のトークセッション形式で行われた。

三田紀房氏

海老原嗣生氏

柿内芳文氏

企業が欲しいのは、"はみでてる学生"

海老原氏「企業側は、ある意味『なんかこの人周りとは違うな』という目線で学生をみている。つまり、どこかしら"はみでてる学生"から、企業は欲しがるんです。だから、自分の中の変な部分を再確認し、末端を肥大化させて、どう相手に食いつかせるかを考えるといいんじゃないかと思います」

柿内氏「"末端を肥大化"とのことですが、どのように肥大化させるのでしょうか?」

海老原氏「自分の好きなことやこだわりって、自分ではそれが普通のことだと思いがちですが、人に聞いてみると意外とそうでもないことが多い。先月、新人の漫画家が『漫画家になりたいけどなかなかデビューできない』と言っていたので、何が好きなのかを聞くと、彼はダチョウが好きで。『あのフォルムが凄く好きで、動物自然公園に3日に1回くらい会いに行くのが楽しい』みたいなことを言うんですよ(笑)。彼からすれば、個性のあることだと自覚してない。だから、自分の心の日常生活のほんの些細なことで良い。自分なりのアピールを身につけて、就活の時だけでもあざとく使っていくと良いんじゃないかな」

三田氏「同じ人ばっかりだったら、採用する必要がない。例えば、グループディスカッションでは学生15人を人事2人ぐらいで見ていると、選ぶ時には覚えてない状況。逆算で考えてみてください。なんでこれで受かるんだろうって。それこそ、個性があればウチに欲しいと思いますよ」

企業がなぜ面接をするのかを理解する

第二部では、就活生が悩みがちな「自己PR」の再設計講座というテーマで、海老原嗣生氏が登壇した。

海老原氏「企業が見ていることの一つは、『わが社の仕事を上手くやれる』かどうか。仕事というのは、会社によって全然違う。銀行のように、少しずつ積み上げてようやく10年経って出世できる会社であれば、コツコツ地道な努力をできる人が欲しい。でも、2年目からトップ営業になれるような会社だったら、体力と気力がある人が欲しい。つまり、企業は『ウチに向いてるのか』どうかが知りたい。向いてなかったら、企業が落としてくれます。

海老原氏によるプレゼンテーション

もう一つは、『わが社の仲間と上手くやっていけるか』。喧嘩ばかりでは困りますから。採用には3億円ほど払います。入社してから仕事もできない人に来られても困る。だから面接では、この二点で"相性"をみているんです」

面接で伝えるのは、着飾らない"あなたらしさ"

さらに、海老原氏は面接で自己アピールとして、学生時代のどんな体験や取り組みを話せばいいのかを語った。

会場の学生にも自己PRを再考してもらっていた

海老原氏「面接で一番伝えてほしいのは『あなたらしさ』です。ある女の子が、内定をもらった子の話を例にします。その子は、みんながよく話すような『飲食業のアルバイト』の話をしていた。なぜ受かったのかと思いますが、彼女の話が凄くいいんです。

『私はどんぶり屋で働いていました。どんぶり屋というのは、結構ご飯の量が多く、残している人もいます。そこで、ずっとお客様の様子を見ていました。カツ丼・天丼などの高カロリーのものを残すかと思えば、それは逆で、まぐろ丼のようなヘルシーな物こそごはんを残していた。疑問に思い、もう少し見ていると、残していたのは、大抵高齢者か女子高生。つまり、胃袋が小さいから残していたんです。そこで、カロリーの低いどんぶりこそ、小どんぶりをした方が良いと思い店側に提案したら、ますます売れてお客さんが増えました』そんな話をしてくれたんです。このアピールだと、『顧客に喜んでもらうために、いつもずっとお客様を観察して、提案してくれる人なんだな』という彼女の良さがみえてくると思うんです。

これなら、提案の仕方も良いし、よく気がつく子だとわかり、周りと差別化されるでしょう。そして、内定した会社の社訓をみせてもらったら、残り物を見逃すな、みたいなことを書いてあるんです。つまり、ぴったりなんですよ(笑)。会社がどういう人を選ぶかよくわかったでしょう。このように、良い自己PRは、5W1Hがしっかりしていて、あなたのウリ・特徴が、差別化できる言葉で、納得できる話の構成に組み立てられています」

第三部では、エビハラ式面接ワークショップが行われ、学生達が実践し、より学びを深めるイベントとなった。「7月中に何十社も面接を是非受けてみて下さい。やればやるだけでうまくなりますから」と海老原氏。8月に向け、もしくは来年の就職活動に向けて、今一度、自分らしさを見直してみるのもいいのかもしれない。