2週間前はシンガポールにいたのに、3日前にはドバイに到着。今年1月、東京に勤務先が決まったというのに、アンドレス・ララさんはいつ連絡しても、日本以外のどこかにいる。さて彼の職業は? 世界を股にかける商社マン? いや、彼はパティシエだ。ヨーロッパのチョコレートメーカーの東京オフィスを拠点に、アジア・パシフィック地区で自社チョコレートを使った技術指導をしている。流暢な英語を話し、フランス語も中国語もできるが、実は南米コロンビアの出身。世界的に有名な"あの"レストランでも働いたこともあるララさんのエキサイティングなキャリアについて聞いた。

アンドレス・ララさん/32歳/コロンビア出身、東京在住/パティシエ

■これまでのキャリアの経緯は?

コロンビアで生まれですが、育ちはベネズエラとアメリカ。18歳でシカゴにある有名なフランス菓子の製菓学校に入学しましたが、お菓子づくりに興味を持ったのはもっと前です。テレビでパティシエの活躍を見て、単純に「かっこいい!」と思い、母親に手伝ってもらいながら、家でケーキを焼いたり、レストランでアルバイトをしたりしていました。学校を卒業してからはヨーロッパで働くことが多かったです。スペインの「エル・ブジ」、デンマークの「ノーマ」でも修業しましたし、世界に名だたるパティシエに学びました。

2010年にシンガポールにある、「世界のベストレストラン50」のひとつにも選ばれた「イギーズ」のデザート部門を統括するパティシエになり、2012年には英国のスターシェフ、ジェイソン・アサートンが営むミシュラン1つ星レストランでグループ全体を見るパティシエとして香港で働くことになりました。そして今の会社に入ったのが去年です。ここは"チョコレート学校"なので、プロの方たちにチョコレートの扱い方からメニュー開発に役立つ技術まで、様々な講座を提供しています。また、日本や海外とのパティシエとコラボしてイベントも行います。特に日本はヨーロッパに並ぶ、トレンドを引っ張っていく国ですから、新しいメニューの提案にも力が入りますよ。

ヨーロッパの老舗メーカーのチョコレートを使いララさんが作ったお菓子

■現在のお給料は以前のお給料と比べてどうですか?

これはノーコメント。でも、今の報酬には満足しています。

■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?

菓子作りが好きですから、同じように情熱を持ってこの仕事をしている人にたくさん会えるのが刺激的です。特に僕の場合は月の半分は技術指導のためにアジア各国に飛びますから、いろいろな国の食文化から生まれたデザートに出会えたり、異なる味わいやクリエイティブな才能を発見できたり、実りが多いです。

■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?

いろいろ出張ができるのは楽しいのですが、自宅でくつろぐ時間が少ないのが寂しいです。最近、子犬を飼い始めたので、少しでも一緒に過ごしたいんです。

■ちなみに、今日のお昼ごはんは?

ラーメン。AFURIの柚子塩ラーメンが気に入っています。油っぽくなくて、スーパー・アロマティックです!

AFRIのラーメンが本日のランチ。「香りのいいこの柚子塩ラーメンが大好きです」だという

■日本人のイメージは? あるいは、理解し難いところなどありますか?

東京で一緒に働いている日本人の同僚は、みな英語を話しますから、理解できないということはありません。ただ、僕が南米人のせいなのか、自分ならダイレクトに伝える話も、日本人の場合はそうじゃない。控えめな印象が強いですね。でも、日本人の食に対する情熱には脱帽します。そして材料のクオリティが非常に高く、パティシエとしてインスパイアされることが多いです。

日本の同僚は互いにクリエイティビティを刺激し合えるいい関係を築いている

■最近、気になる日本のニュースはありましたか?

うーん、日本にいる時間が短いので、思いつきません。ごめんなさい。

■休日の過ごし方を教えてください。  

一緒に来日したフィアンセと、まだ生後5か月のフレンチブルドッグのMOCHI(モチ)と一緒に、代々木の公園に散歩に行って、コーヒーショップでゆっくりとした時間を過ごすことが多いです。

外出せず、家で料理を作り、くつろぐのも好きですね。

海外出張中も気になってしかたない、愛犬MOCHI。休日の散歩が忙しい合い間の楽しみ

■将来の仕事や生活の展望は?

フィアンセはずっとレストラン業界にいて、アルコール類にも詳しいし、マネージャーを務めたこともあります。いつかは2人でほかにはない店をやりたいと話しています。アルコールとカジュアルで遊び心のあるフードを出す小さな店。でも、メインはお菓子です。イメージはカクテルバーならぬ、「デザートバー」。デザートとお酒を一緒に楽しめて、テイクアウトカウンターではお菓子とコーヒーも販売する。2人が同じだけ活躍できて、同じだけ誇りに思える店にしたいと思っています。

10代の頃から、とにかく菓子づくりに夢中だった