直近のニュース記事をピックアップして、「家電的な意味で」もうちょい深掘りしながら楽しい情報や役に立つ情報を付け加えていこう……という趣向で進めている当連載。今回の題材は以下の2つのニュースだ。

5月13日に発表された、ソニーの4KブラビアとNTTドコモのARROWS ケータイ

前者は4Kテレビ、後者は二つ折りケータイだが、共通項が一つある。OSがどちらもAndroidである、ということだ。テレビも二つ折りのフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)も、ちょっと前まで、日本のデジタル家電の象徴のような存在だった。OSも、それぞれが独自のものを採用していた。しかし今回、期せずして同じ日にAndroidをOSに採用した製品が登場した。家電のOSとして、Androidがすっかり主流になった証でもある。テレビは「Android TV」になり、二つ折りケータイはガラケーから「ガラホ」になった。

「アプリ対応」だけが目的じゃない?!

Androidになることで、どちらの製品もUIや使い勝手が若干変化する。設定画面はAndroidでおなじみのものになり、Android用アプリも動くようになる。ブラビアではAndroid用のゲームが動くし、ARROWS ケータイではLINEがよりスムーズに使えるようになる。

そうしたことから「アプリを使うためにOSを変える」と思われそうだ。

実際、そうした側面はある。フィーチャーフォンではスマホほど自由にLINEが使えないことが難点となっていたし、過去のデジタルテレビでは、新しい映像配信サービスに対応するのが面倒だった。そこでAndroid用アプリが流用できるようになれば、今日的なサービスを組み込むことがより容易になる。

例えば、Android TVでは、いままでの「テレビ放送」や「録画機能」「番組表」はアプリとして搭載される。従来、テレビの上にそれらの機能がくっついていた構造であったものが、Androidタブレットにテレビチューナーがのっかているような構造に近くなるわけだ。だから、動画配信サービスを使う場合にも、「動画配信用アプリに切り換える」感じに近い。ネット上で生まれるサービスに柔軟に対応するには、スマホやタブレットに近いOS構造であるほうがいいし、使い勝手も上がる。

4Kブラビアは、スマホのように音声認識にも対応する

とはいうものの、ブラビアにしろARROWS ケータイにしろ、メインの機能である「テレビ」や「電話とメール」を使っている限りは、過去の製品との差はかなり小さいものに感じられる。特にブラビアの場合、高画質化機能などは過去のテレビより進化しており、「Android TVだから劣化した、という部分はない」とソニー関係者も話している。リモコンで電源を入れれば、通常はまず、いままで通り「テレビ画面」が表示される。Androidのホーム画面に移動しないと、Androidで動いていると強く意識することはないだろう。実際のところ、そういう風に作っているからだ。

多くの人にとって、テレビはテレビであって「タブレットっぽいもの」を使いたいわけではない。今の時期にフィーチャーフォンを選ぶ人も、スマホっぽい操作体系を求めているわけではない。だから、基本的な使い方をする場合には操作方法にあまり変化を加えず、「アプリを使う」という新しい世界に行く時に「Androidらしさが出る」ようになっている、と考えていい。

すなわちどちらの製品も、Androidを使うことが目的なのではなく、あくまで「Androidで従来型の家電を進化させた」という建て付けになっている。