前回、前々回では無線LANルーターの最新規格、IEEE802.11acについて解説したが、販売店では非常に多くのルーターが並んでおり、どれを選べばいいのか迷ってしまう。そこで、今回は筆者の独断と偏見に基づいた選択基準を紹介しよう。

エントリー機器は11n対応も考慮して

11ac対応のルーターは2年ほど前から出ており、現在販売中の製品の多くは11ac対応だ。しかし11acという通信規格にはオプションが多いため、製品のバリエーションは非常に広い。

価格だけで選べば433Mbpsの通信速度に対応したエントリーモデルが、5,000円を切る程度から購入できる。確かに433Mbpsでも11nに比べれば1.4倍程度の高速化が実現しているのだが、433Mbpsではアンテナは1組だけで、MU-MIMOやビームフォーミングといった11acの魅力的な機能は利用できない。

また、11nでの通信速度にも気をつけたい。エントリーモデルでは11nで150Mbpsしか出ない製品があるのだ。まだまだ数多く残っている11ac非対応機器、特に11nのことを考えると、300Mbps出る製品を選んでおきたい。

「WN-AC733GR3」(アイ・オー・データ機器)。11acで433Mbps、11n(2.4GHz帯)で300Mbpsの接続が可能。ゲーム機などはWPS、スマートフォンからもQRコネクト、NFCコネクトなどの簡単接続設定が利用できる

エントリーモデルを選ぶ意味があるのは、たとえばアパートなど使用する場所が狭く、所有する11ac対応機器がiPhone 6など433Mbps止まりで、その他の機器もそれほど多くないというような状況が考えられるだろう。それ以外であれば、ミドルレンジ以上の機器を選択したい。

なお、ホテルなどのLANを無線化するためのポータブルルーター(モバイルではない)も登場しており、こちらは11ac対応でもさらに安く、3,000円前後から購入できる。こうした製品はホテルの部屋の中で使えればいいため、電波の出力や処理能力も思い切って割り切っており、自宅などで恒常的に使うには向いていないことは覚えておこう。